Current Research Projects

「過去の傷つき・挫折感を変容するプロセスの研究」の説明

クライエントとして参加希望の方へ

立命館大学総合心理学部

教授 岩壁茂

本研究を次のように実施いたします。研究の目的や実施内容等をご理解いただき、本研究にご参加いただける場合は、同意書にご署名をお願いいたします。研究に参加しない、あるいは一度参加を決めた後に途中で辞退されることになっても、不利益を被ることはありません。あなたの意思で、研究にご参加いただけましたら幸いです。なお、本研究は立命館大学総合心理学部教授の岩壁茂が実施いたします。

1. 研究の意義・目的

これまでの効果研究において感情の変容を促進することを主眼においたカウンセリングアプローチであるエモーション・フォーカスト・セラピーが、うつ、トラウマ、不安障害などに効果的であることが報告されています。本研究は感情的傷つきや挫折感を解決する上での、このアプローチの介入効果を検討いたします。過去に受けた傷つき体験、それはひどいことを言われて、その言葉が未だに頭から離れず、そのことを考えるたびに嫌な気持ちが起こってくるものであったり、一生懸命取り組んだのに、結果がついてこず、大きな失敗となった体験で現在でもあなたの黒歴史となっていること、などを指します。

本研究では、介入効果に加えて、効果的な面接プロセスについても検討することも目的としています。このように感情に焦点を当てたアプローチの効果とプロセスが明らかになれば、カウンセリングの選択肢が増えてより効果的な心理援助が提供できると期待されます。

2. 研究方法、ご参加いただく期間  

協力者の方には、初めに研究代表者とスクリーニング面談として電話またはズームでお話しいただきます。研究についてご説明し、本研究に合っているかどうか確かめるためです。15分〜20分かかります。

そのあと、心理的な体験についてのさまざまな側面を評価する質問紙にお答えいただきます。これは、20分程度かかります。そしてエモーション・フォーカスト・セラピーの研修を受けたセラピスト(またはカウンセラー)と15回のカウンセリング(1回50分、約1〜2週間おき)を受けていただきます。セラピストは、協力者のスケジュールの調整から決めさせていただきます。

毎回の面接の前後に、5分程度の時間をとっていただき、セラピーの印象と現在の状態について尋ねる質問紙にお答えいただきます。これは、ご自宅、または来談時にオンラインでお答えいただきます。加えて、面接前後に、簡単な日誌をつけていただきます。日誌は研究協力に必須ではありません。

面接・インタビューは、都内のカウンセリングルーム(東京メトロ丸ノ内線茗荷谷駅から徒歩5分)、またはズームを用いたオンラインカウンセリングで行います。カウンセリング面接は、基本的にビデオ録画いたしますが、状況により録音に変更いたします。録画は面接プロセスについての分析を行い、またカウンセリングが円滑に行われるようにセラピストと振り返りをするためです。セラピストは、感情に焦点を当てた心理療法の専門家である研究代表者と定期的にカウンセリングの進捗について確認しながら進めていきます。最後に、効果を測定するために、カウセリング終了時および6ヶ月後に質問紙にお答えいただきます。

試行カウンセリングは基本的に対面で実施いたします。しかし、状況によってはオンラインも可能です。コロナの状況によっては、オンラインから対面への移行、または対面からオンラインへの移行も可能です。コロナ禍において、緊急事態宣言が発令される場合、すべてオンラインとなります。オンライン接続については担当者がご説明いたします。スマートフォンによる接続も可能ですが、パソコン、タブレット端末をご用意ください。

ズームで面接を実施する場合、お約束の時間の直前にセラピストがズームURLをメールでお送りいたします。出来れば、スマートフォンよりも、画面が大きなパソコンなどをご準備ください。音声がよく聞こえるようにヘッドフォンやイヤホンをお使いになると良いでしょう。

試行カウンセリングでは、個人的なお話しとなるため、部屋に誰もいない状態でご出席ください。またご家族と同居されており、カウンセリングの内容を聞かれてしまう心配がある場合、ご家族が留守のときをお選びいただくか、ご家族に外出いただくなどプライバシーが守れる環境を確保することをおすすめいたします。

期間は、協力される方のスケジュール調整にもよりますが、4ヶ月間から6ヶ月間くらいとなります。

3. 研究対象にさせていただく方 

過去の悔やまれる体験(失敗、挫折など)を思い出すと現在でも嫌な気持ちになったり、すっきりしない感覚が起こる方です。また、現在、心療内科クリニックなどに通院中ではなく、20歳以上で基本的に首都圏にお住まいで、少なくとも16回来談(15回のカウンセリングプラス終了後の振り返り面接1回で計16回)が可能な方にお願いしております。また、1回の面接につき3000円の費用がかかります(インタビュー回の費用はかかりません)。エモーション・フォーカスト・セラピー研究所における通常の面接料金は、1時間について10000円〜12000円となります。あなたのお支払いになる3000円は、施設の使用料に充てられます。またコロナ禍であるため、オンラインによる面接も可能です。カウンセリング施設は、丸ノ内線・茗荷谷駅から徒歩5分くらいの場所にあります。オンラインの場合も、1時間について3000円の費用がかかります。セラピストは、エモーション・フォーカスト・セラピー研究所の施設を用いて面接を実施するためです。交通費の支給はありません。

4. 研究への参加と撤回について  

研究の趣旨をご理解いただきご参加いただければと思いますが、参加するかどうかはご自身で決めてください。説明を聞いてお断りいただくこともできます。お断りになったり、一度参加を決めてから途中で辞退されることになっても、何ら不利益な対応を受けることはありません。途中で参加を辞められるときは、それまでに収集したデータをどのようにすることを希望されるのか、分析対象としてよいのか廃棄を希望されるのかをお聞かせいただければ、それに従ってデータを取り扱います。また、研究参加を取りやめるかお悩みの場合、研究代表者がお話しをうかがうことも可能です。お申し出ください。

5. 研究に参加することにより期待される利益  

この研究への参加はいくつかのやり方で協力者の方に利益をもたらします。まず、過去の傷つき体験について取り組むことによって、それから起こる苦しみや嫌な感情が緩和されることです。それ以外にも心理的機能が高まります。しかし、その程度については個人差があります。次に、面接後に定期的に質問紙に回答することによって、カウンセリングのプロセスや進展について振り返る時間を持つことができます。それはカウセリング体験をより広い視野で眺めるのを手伝ってくれます。加えて、皆さんの貢献は、カウンセリングが治療的な効果を生み出すためにどんなふうに作用しているのかということについての私たち臨床家・研究者の理解を助けてくれます。そしてそれはよりよい支援方法を発展させるのに役立ちます。皆さんの貢献は私たち、研究者・臨床心理士・公認心理師にとってかけがえのないものです。

コロナ禍において、オンラインカウンセリングが一般的になりました。効果研究の知見によるとオンラインカウンセリングも対面と同様に効果的であるとされています。謝礼として20,000円を研究協力終了時にお支払いいたします。日誌にご協力いただいた場合は加えて10,000円をお支払いいたします。

6. 予測されるリスク、危険、心身に対する不快な状態や影響  

研究の倫理の一つは、協力者の方に害を与えないことです。本研究でもこの考え方を研究のすべての段階で重視し、協力者の方と確認しながら進めていきます。カウンセリングでは、過去の辛い記憶にふれ、それを追体験するために、悲しみや怒りなどの感情を追体験することもあります。もう一方で、そうすることによって、それまでの悩みやすっきりしない気持ちを解決することも可能になります。カウンセリングの体験について振り返り日誌をつけることは変化を根付かせることに役立つと言われていますが、ご負担に感じることもあるかもしれません。もし、毎日の生活に悪影響が出る場合、ただちに適切な対応をとらせていただきます。

カウンセリングのセッションはビデオで録画いたします。それは効果的にカウンセリングを進める方法に関する理解を深めるためです。しかし、撮影されることで自意識が強まったり、話しづらかったりということも起こりえます。カウンセリングでは自分の悩みについてふれるため、過去の傷つきが追体験されて、苦しさが一時的に高まったり、周囲の人たちに対して一時的にネガティブな感情が高まったりということも起こります。セラピストからも、これらのことが起こっていないか確認のためにお聞きすることもあります。もし、このようなことを体験されたら是非セラピストにお伝えください。

カウンセリングに効果が得られない場合、または自分に合っていない場合など研究代表者(臨床心理士)と相談の上で適切なセラピストや相談機関をご紹介いたします。

7. 研究成果の公表の可能性 

この研究の成果は、学術成果として発表いたしますが、論文や発表ではお名前などの個人情報は公開せず、個人が特定できないような表記にて発表いたします。事例の詳しい内容については固有名詞をふせ、時に情報を入れ替えるマスキングを行います。研究者が所属する学会および成果を発表する専門誌の倫理規定に準じて個人を同定するような情報を扱います。

承諾いただけるのであれば、映像を用いて発表させていただければと思っており、映像の利用の可否について以下にお聞かせいただきます。映像は、心理の専門家(臨床心理士または公認心理師資格取得者)および大学院生が参加する学術大会、または臨床訓練において用いられます。映像をもとに面接のプロセスについて説明することで、訓練の効果、または知見の伝達に非常に役立ちます。参加者は、映像から得たプライバシーとかかわる情報を口外しないことに合意した上で参加いたします。もし、協力者のことを知っている方が会場にいる場合、退出することを求めます。心理の専門家以外の一般の方に映像を見せることは決してございません。また、映像の使用を許可するかどうかという判断が、セラピストの対応に悪影響することはございませんのでご自由にお答えください。その判断を研究が進行中に変更することも可能です。また、クライエントとセラピストとして参加される双方が合意されるときのみ、映像を以上のような目的のために使わせていただきます。

映像の使用において画面の加工はいたしません。感情変容を観察するために表情の変化がとても重要であるためです。

また、ご協力くださった方々には、質問紙の分析結果や研究成果の概要についてご報告させていただきますので、ご希望をお聞かせください。

8. 個人情報、研究データの取り扱いについて 

個人情報の管理は個人情報管理責任者である研究代表者が行います。個人情報を保護するため、研究データのお名前は研究データから取り除き、符号(数字やアルファベットの組み合わせ)に置き換えて管理いたします。データ開示や廃棄のご希望にお応えするため符号とお名前の対応表を作成いたしますが、大学の鍵のかかる棚にて厳重に保管します。動画データおよび質問紙のデータは、無期限で保管予定です。カウンセリングおよび心理療法の研究ではデータを再分析することによって理解を深めていきます。本研究のデータも長期的に臨床心理学の発展に寄与することが期待されるため、本研究データもこのように保管する予定です。

動画のデータは、すべてドロップボックスのビジネスアカウントで管理されます。そうすることによって、研究者が一括して管理することができます。ビジネスアカウントは情報セキュリティが高く、データの喪失を防止できるためです。なお、研究代表者および研究代表者からデータ管理に関して指導を受けた大学院生および臨床心理士のみがデータの閲覧が可能です。

9. 研究に関する資金源

本研究は、科学研究費補助金(2022年度~2024年度、基盤研究(C) (課題番号22K03119) 研究課題名「ポジティブ感情を活用した心理療法介入の開発と効果検討」研究代表者岩壁茂)の一部として実施いたします。

10. 利益相反(あるいは責務相反)について

この研究はエモーション・フォーカスト・セラピー研究所において実施されますが、エモーション・フォーカスト・セラピー研究所の利権と関係はございません。間接的にエモーション・フォーカスト・セラピーの認知に寄与することもあります。

11. 研究者、および問い合わせ先について 

この研究は、以下のメンバーにて行います。

研究責任者:総合心理学部・教授・岩壁茂

研究補助員:研究代表者に研究データの扱い、分析について指導を受けた

お茶の水女子大学博士課程在籍の学生

立命館大学大学院臨床心理学専攻の学生


研究内容に関するご質問は、以下の連絡先までご連絡ください。また、研究者の研究倫理等に関する問題が発生した場合は、立命館大学 衣笠リサーチオフィス<email: k-rinri(アットマークを入れる)st.ritsumei.ac.jp>までご連絡ください。


研究実施者:岩壁茂(立命館大学総合心理学部・教授)

住所 〒567-8570 大阪府茨木市岩倉町2-150

連絡先 email:siwakabe(アットマークを入れる)fc.ritsumei.ac.jp 

電話番号:072-665-2020(内線6006)


本研究は、立命館大学における 人を対象とする研究倫理審査委員会より承認を受けて実施いたします(受付番号 衣笠―人―2022-65)。