医療技術が年々高度に、かつ複雑になる現代にあっても、医師が患者さんと直接お話しをして、診断と治療に欠かせない情報を取得させて頂く「医療面接」は、最も重要かつ基本的な診療技能の一つとされています。
かつて医学生は、基本的な講義を受けた後に学生同士で医師役と患者さん役をこなす練習を少ししただけで、大学病院の外来で実際の患者さんからお話しを伺っていました。しかし現在では、医学生の教育は医学教育の国際標準に沿って行われるようになりました。そのため、全国の医学生は本格的な臨床実習を行う前に、公益社団法人 医療系大学間共用試験実施評価機構が統括する実技を含む試験(共用試験OSCE)に合格し、知識、技能、態度が一定レベルに達していることを証明することが義務づけられています。このため、東北大学の学生も医療面接のトレーニングを十分に積む必要があり、この際、大変お世話になっているのが、仙台SP研究会の模擬患者の皆様です。このトレーニングは主として、医学科4年生および5年生の時に実施されますが、最近は入門編として1年生の秋にも授業に取り入れられており、この際にも仙台SP研究会の皆様にご尽力を頂いています。
仙台SP研究会の皆様は、日頃から大変熱心に模擬患者の標準化という重要な課題に取り組まれており、お陰様で本学の学生は大変恵まれた学習環境で医療面接のトレーニングに取り組むことが可能となっています。仙台SP研究会の存在無くして、東北大学の医学科の学生教育は成り立たないと言っても、決して過言ではありません。仙台SP研究会の皆様に心から感謝しておりますと共に、この会の益々の発展を願っております。
そもそも医学とは、辞書(広辞苑)で調べると、「生体(人体)の構造や機能、疾病について研究し、疾病を診断・治療・予防する方法を開発する学問」とあるように、ヒトを対象としています。
従ってヒトを対象としている以上、シミュレーターなどの医学教育機器の発達が著しい今日であっても、医学教育は、実際の患者さんの診療を通じて行う、いわゆる「臨床実習」が大変重要視されています。
東北大学医学部では5年生から大学病院を中心とした臨床実習が始まりますが、4年生の後半に臨床診療の必須スキルである「医療面接」の実習を課し、さらに「OSCE(Objective structured Clinical Examination:オスキー)」と呼ばれる実技試験にてその達成度を判定し、医学生は合格してはじめて次にステップの臨床実習に進むことができます。
臨床実習では実際の診療現場に医学生が出るので、本物の患者さんと接するいわば「真剣勝負」になるわけですから、その練習である「医療面接実習」や能力認定試験であるOSCEは、限りなくホンモノの診療現場に近い環境下で行う必要があります。SP研究会のご協力を得て模擬患者(SP)役を担ってもらい、臨場感あふれる医療面接実習やOSCEを行っているのは、このような理由によるものです。
当教室は、この「医療面接実習」を担当していますが、仙台SP研究会できちんとトレーニングを積んだSPさんがいてくださってはじめてこのようなリアルな実習が成立することを日々実感しておりまして、もしも仙台SP研究会の存在がなければ、本学の臨床医学教育はたちどころに行き詰ってしまうことでしょう。
会員の確保やスキルの維持など、この研究会を継続していくために、スタッフの皆さまは大変な努力をされているとも聞いております。
重ねて、深く感謝申し上げます。
引き続きどうぞよろしくお願い致します。
東北大学医学部で「医療面接実習」という科目を担当しています東北大学病院 総合地域医療教育支援部の田中淳一です。今回、仙台SP研究会のホームページを御覧いただき、ありがとうございます。
近年、患者・医師関係に関して、社会的なニーズが高まっています。
私が扱っている「医療面接実習」というのは、患者と医療者とのコミュニケーションを行うにあたり、必要な知識・技能・態度を臨床実習前の学生に身につけてもらう実習です。
実際の患者に接する臨床実習前のシミュレーション教育は非常に重要で、模擬患者さんに加わっていただくことで、学生がより実践に近い形でコミュニケーションをとることができます。そして、医学部関係者以外の目線がはいることで、学生には緊張感を持たせるとともに、医療者としての期待されていることを実感させることができます。また最初がやはり肝心で、今後の医師生活を送るにあたり、患者との対応の基礎をより患者側にたった形で習得することができます。
これらはしっかりと訓練された模擬患者さんが、安心で楽しく学べるように配慮していただきながら、患者さんらしくしっかり演じて、患者さんらしくしっかりと感じたことを学生に伝えていただくことが非常に重要になってきます。
仙台SP研究会の皆様には、上記のように医学部教育に協力していただいて、優秀でかつ患者に思いやりのある医療者を本学から輩出できる大きな要因になっていると思っています。
また今回、このホームページを御覧いただき、医療者の教育に対して、研究会の活動の一環としてご協力いただければ幸いです。
※2020年 編集