分子の指紋領域と呼ばれる中赤外領域(波長3-12um)には、分子固有の振動遷移が存在するため、振動吸収スペクトルを測定することで、分子の同定や分子構成の定量化が可能となる。しかし、中赤外領域で利用できる検出器には多くの技術的課題があり、技術進展の律速となっている。私たちは、中赤外光を可視光へと変換するアップコンバージョン技術と、高機能な可視用シリコン検出器を組み合わせた独自の中赤外光センシング技術を開発した。狭帯域光の代わりにチャープパルス光を用い、非線形光学結晶としてLiGaS2を利用することで、スペクトル分解能2.5cm-1の高感度検出システムを実現した。この検出システムを基盤として、フェムト秒時間分解中赤外分光システムを構築した。
(千歳科学技術大学理工学部、大阪工業大学工学部との共同研究)分子系の光反応制御は、レーザーが誕生した当初から切望されていた重要なテーマではあるが、いまだ実現には至っていない。波形整形された高強度中赤外パルス光を用いた「振動ラダークライミング」は、最も可能性あるアプローチである。つまり、非調和性を伴った振動モードを高量子数まで励起し、遷移状態を越えて化学反応や構造転移を誘起させる。しかし、中赤外領域での波形整形技術はあまり進展していないと言える。私たちは単一素子内で差周波混合と波形整形を同時に実現し、波形整形された中赤外パルス光を高い変換効率で発生可能な準周期疑似位相整合を提案した。
(千歳科学技術大学理工学部との共同研究)久武信太郎准教授(岐阜大学)と共同で、 理論限界まで位相検出感度を高めた広帯域・高感度テラヘルツ周波数領域分光法を駆使し、タンパク質固有の“機能”の本質であると考えられている低振動数モードの検出に関する研究を進めている。
(岐阜大学工学部との共同研究)