What is Alzheimer's disease?
アルツハイマー病について解説します。 ☆ここは一般向けに分かりやすく解説しています。
もう少し専門的に知りたい方は、和光純薬時報に論文を
掲載しておりますのでご覧になってください。
⇒和光純薬時報 ２０１１年のＶｏｌ．７９、Ｎｏ１です。
★アルツハイマー病はいつからあるの？
学会で最初に発表されたのは1906年で、ドイツの精神科医で神経病理学者でもあるAlois Alzheimer (1864-1915)が診た女性患者の症例を発表したのが最初です。おそらくそれ以前にもあったと思いますが、平均寿命が短い中世以前では目立たなかったと思います。よく「アルツハイマー」と省略して言う人がいますが、アルツハイマーは発見した人の名前なので「アルツハイマー病」と病を付けないといけません。アルツハイマー博士に失礼です。
★アルツハイマー病の原因は？
以前はアルミニウム説などいろんな説がありましたけれど、最近の研究ではリン酸化タウ蛋白質やアミロイドβペプチドの分子が凝集し繊維状となり脳に沈着、これらの神経毒性物質の蓄積が病状を進行させると考えられています。それでは原因物質は何かというと、アミロイドβペプチド説が現在では主流です。リン酸化タウ蛋白質やアミロイドβペプチドについては別に解説します。
★アルツハイマー病の薬はあるの？
根本的治療薬はありません。現在広く使われているアリセプト（ドネペジル）は脳の神経伝達物質であるアセチルコリンという物質を増やす作用があり、一時的に症状が回復したかに見えるだけで神経細胞のダメージの進行そのものを止めるわけではありません。しかし、希望があります。濵田が開発しているＢＡＣＥ１阻害剤やアミロイドドβペプチドの凝集阻害剤はアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβペプチドが作られたり、神経毒性を示す凝集体になるのを止める働きがあります。
★アルツハイマー病の薬はいつごろできるの？
アミロイドβペプチドに作用する薬剤であるＢＡＣＥ１阻害剤、γーセクレターゼ阻害剤、アミロイドβペプチドの凝集阻害剤などいくつかの薬剤が臨床試験中ですが、同時に多くの薬剤の臨床試験が中止になっているのも事実です。まだまだ基礎研究の段階だと思われます。濵田が開発しているＢＡＣＥ１阻害剤やアミロイドドβペプチドの凝集阻害剤もなんとか数年で結果を出したいとがんばっているところです。期待していて下さい。
★ＢＡＣＥ１阻害剤ってなに？
ＢＡＣＥ１は酵素の一種で、「β-site APP cleaving enzyme」の略です。APP蛋白質はアミロイドβペプチドの前駆体のことですから、ＡＰＰ蛋白質を切断してアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβペプチドを作る酵素ということになります。
酵素とは細胞という工場で働く従業員のようなものです。実際に物を作ったり、要らないものを壊して廃棄したりしています。口から入った食品を分解して、栄養物質に変えるのも酵素です。ＢＡＣＥ１はアミロイドβペプチドを作る酵素なのでその阻害剤はアルツハイマー病の根本的治療薬になります。
★ＢＡＣＥ１とBACE2は何が違うの？
BACE1とBACE2は非常によく似た酵素です。実は同じ蛋白質を認識して切断しますが、蛋白質に対する微妙な認識の違いで、BACE1はアルツハイマー病を引き起こし、BACE2はアルツハイマー病になるのを防止します。よく似た兄弟のような酵素ですが、まるで正反対の生理作用を示します。面白いですね。最近、BACE2がTmem27という蛋白質も切断することがわかりました。Tmem27は膵臓β細胞に作用して血糖値を下げることから、Tmem27蛋白質を増やす物質が糖尿病治療薬となる可能性があります。Tmem27を切断するBACE2の阻害剤は糖尿病治療薬として考えられます。浜田はBACE1阻害剤の設計技術を応用してBACE2阻害剤、つまり糖尿病治療薬を開発しています。
★阻害剤はどうやって作るの？
いい質問ですね。酵素の構造が分かっていれば、その酵素の機能を止める阻害剤はコンピューターで設計できます。ただ、コンピューターで設計すると言っても、コンピューターが自動的に設計してくれるわけではありません。もしそうでしたら、我々創薬研究者は必要ありません。実際に設計思想を考え、薬の設計を進めていくのが我々創薬研究者の腕の見せ所です。濵田が考えた設計思想（architecture）は誰にも真似が出来ないという自信があります。設計した阻害剤は有機合成化学の技術で作ります。このように創薬研究では、計算化学、有機合成化学のほか生物化学、薬理学など多くの分野の技術に精通しておく必要があります。
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