白亜紀以降の被子植物の爆発的多様化の背景には、植物による動物媒の採用と、植物と送粉者との共進化があったと考えられている。地域の植物相は、その地域の送粉者群集と密接な生態的・進化的相互作用の中に存在する。しかし、さまざまな環境変化は、送粉者群集に大きな変更をせまり、そのことが送粉共生系を大きく変貌させることもある。特に海洋島におけるミツバチの侵入は、島独自の送粉共生系を大きく変貌させてきた。生態学的時間の中の送粉共生系の変貌を、小笠原諸島の自然に見る。
送粉共生の中で、植物と送粉者がきわめて高い特異性と相互依存性で結ばれた関係が、絶対送粉共生である。絶対送粉共生系としてイチジク-イチジクコバチ共生系とユッカ-ユッカガ共生系がよく知られてきたが、第三番目の絶対送粉共生系としてコカンコノキ-ハナホソガ共生系が発見された。花蜜より高価な種子を報酬とするような送粉共生系がいかに起源し、植物と送粉者がいかに相互依存的になっていったのか、また両者の利他的な関係がいかに維持され、またその関係がいかに両者の多様化を導いて行ったのかを、さまざまな角度から分析する。