音楽の科学研究会

第34回 研究会

日本音響学会関西支部 談話会※)


盛況のうちに無事終了しました。ありがとうございました。

ようやくコロナ禍も落ち着いてきた感じで何よりです。というわけで、引き続き半年に一度を継続しての第34は、久しぶりの対面開催を予定しております。今回の発表は「演奏」と「身体」に関連した研究が中心になりました。研究者だけでなく、音楽愛好家、音楽に関連した職業についておられる方などの参加者間の交流をはかりながら、学会の枠を超えて音楽の科学研究の知見を共有することを目的としています。当日お目にかかれることを楽しみにしております!(世話役:岡野 真裕・大澤 智恵

※ 今回(第34回)の研究会は、日本音響学会関西支部の「談話会」としての開催でもあり、助成を受けています。

【2023/05/29 追記】現地参加が15名、Zoom 登録者数が55名(うち9人が現地にも参加)、Zoom 同時接続数が最大36名と、盛況な会になりました。

日時・場所

参加費・申し込み

音響学会関西支部 談話会として助成を受けて開催しました

プログラム

発表順は変更になることがございます。

逆再生映像における音と映像の時間的調和 

正田 悠京都市立芸術大学


ピアノ演奏における手指のサイズ・柔軟性とペダリング方略の関係:小さな手でも音の持続感を保つために 

大澤 智恵・山口萌恵武庫川女子大学


残存機能からみた音楽的介入 

田部井 賢一(東京都立産業技術大学院大学)


合奏場面における共演者の呼吸音が演奏に及ぼす影響:音響分析と聴取実験

葵・正田悠・津崎実(京都市立芸術大学)

電子オルガン演奏における奏者の演奏体感と聴者の「共感」

森松 慶子神戸大学


総合討議

岡野 真裕神戸大学)・大澤 智恵武庫川女子大学


情報交換会

(参加自由:阪急六甲 or JR六甲道付近の会場に移動して実施します。参加方法は当日ご案内いたします)

第33回音楽の科学研究会

講演概要

正田悠 再生映像における音と映像の時間的調和 

「左から右」に動く映像や「低音から高音」に上昇する音列は、過去から未来に向かう時間感覚を引き起こす。その一方で「右から左」に向かう映像を逆再生すると、ストーリーとしては過去に向かっているにもかかわらず時間感覚としては未来に向かう映像刺激を作成することができる。本研究では、「映像の順再生・逆再生」「身体の方向感覚」「上昇音・下降音」という3つの要因が音と映像の時間的調和にいかなる影響を及ぼすのかを調べた。 

大澤智恵・山口萌恵 ピアノ演奏における手指のサイズ・柔軟性とペダリング方略の関係:小さな手でも音の持続感を保つために

 ピアノ演奏において、跳躍が続く中で音の持続感を保って演奏する必要がある場合、特に、手の小さなピアニストが指で持続できない箇所を補い、目一杯に指を広げて演奏し続けることによる手の負担を軽減しながらスムーズに弾くためには、たくみにペダリングを行うことが重要と考えられる。本研究では、演奏者の手のサイズによって、打鍵の持続時間をはじめとする、音の持続感の維持に関連した演奏の特徴やペダル踏み込みのタイミングや深さ等にどのような特徴が見られるかを探索した。なお、この発表内容は、第2発表者の山口による卒業論文に基づいている。 

田部井賢一 残存機能からみた音楽的介入 

 これまでに発表者らは、より効率的な非薬物療法の介入を実施するために、介入前の残存している認知機能と脳MRIから効果的な非薬物療法の種類を選択することができる可能性を示した。本発表では、健常高齢者から認知症高齢者を対象とした一連の研究結果から、合理的で効率的な一人一人に合わせた非薬物療法の介入方法の確立の可能性について考察していく。 

鷲塚葵・正田悠・津崎実 合奏場面における共演者の呼吸音が演奏に及ぼす影響:音響分析と聴取実験

 複数人で演奏する際、身体の動きや視線といった視覚情報が合奏の表現に関係することが知られている。一方、演奏者は、演奏音以外の聴覚情報も利用して演奏をしている可能性がある。本研究では、これを実験的に検証するためバイオリンとピアノ伴奏による合奏を対象に、遠隔での合奏時に各演奏者の口元に装着されたマイクロフォンの音を呼吸音という形で付加する効果を検証した。具体的には、その有無によって演奏にどのような違いが生じていたかを音響分析と聴取実験によって検証した。その結果に基づき、聴覚情報が演奏の調和にどのように影響するかを考察する。


森松慶子 電子オルガン演奏における奏者の演奏体感と聴者の「共感」 

 電子オルガンは、任意の音色や打楽器音を上下足鍵盤に配置できる楽器である。通常「高い音」が鳴る右寄りの鍵盤に「低い音」を配すこともあれば、はじく動作で弾くことが多い減衰音と、一定以上の時間鍵盤を押さえる持続音を同じ鍵盤に配すこともある。それらの配分には、奏者に最初から自然に感じられるものもあれば、慣れるまでは違和感を覚え、弾き間違い易いものもある。奏者の演奏動作・演奏体感の問題と、聴者の演奏に対する「共感」の問題を関係づける可能性について考察する。科学的な見地からのご意見・ご教示をお願い致します。 

世話役