音楽の科学研究会
第35回 研究会
音楽の科学研究会第35回研究会を2023年12月10日(日)に京都市立芸術大学で実施いたします。対面も交えた久しぶりの開催であった前回に引き続き、今回も対面をベースにしたハイブリッド開催といたします。
今回は発表公募を行い、ドイツからのオンライン発表を含む、多様な5件の発表が集まりました。
今年10月に京都駅(JR、新幹線、近鉄)および七条駅(京阪電車)から徒歩10分の好立地に移転した京都市立芸術大学(新キャンパス)が現地開催の会場です。多くの皆様に現地参加いただきたく、ご案内申し上げます。
現地では、以前恒例であった、閉会直後に会場で行う「茶話会」(参加無料)も再開してみたいと思います。
ご遠方などでオンラインの方も、現地に来られる方も、ふるってご参加ください。
(世話役:正田 悠・大澤 智恵)
日時・場所
2023年12月10日(日)13:30 〜 16:40 頃
京都市立芸術大学 B棟3階講義室3 (各線京都駅より徒歩10分程度)
現地 + オンライン開催(zoom)
講義室3への道(京都市立芸術大学演奏科学・音楽心理学研究室 Webサイトより)
https://performancescience.art/map/
閉会後、会場において茶話会を計画しています。また、その後京都駅付近で懇親会(情報交換会)を実施予定です。こちらはいずれも参加自由です。茶話会は参加無料です。
申し込み・参加費
参加・発表ともに無料です。
現地・オンラインともに参加のためには事前申込が必要です。
現地参加登録はこちら → https://forms.gle/XXjsqA6Mvx9eM21w9
(円滑な運営のため、現地参加の方も事前の参加登録にご協力をお願い致します。)Zoom 登録はこちら → https://zoom.us/meeting/register/tJIscOCsqDIqHdML0SeDPcuTGvpL82sNkm4r
プログラム
発表順は変更になることがございます。
テーマと登壇者を掲載しています。詳細については「講演概要」をご覧ください。
高齢者の集団歌唱について
太田公子(追手門学院大学)
音楽による学びの触発と教師のあり方についての一考察:児童の言語形成と音楽の演奏に共通する認知スキル
柏木ドリス優真(大阪教育大学 教育学研究科)
Eye-Voice Spanを指標とする歌手の視唱に関する研究計画
梁 葉飛(広島大学)
音楽リズムと同期しての歩行において楽曲のグルーヴが歩容に及ぼす影響
岡野真裕(神戸大学大学院人間発達環境学研究科)
H.シュッツの歴史的身体的聴き方:歴史的音楽学研究に科学的アプローチを取り入れて見えてきたこととは!?
園田順子(独・ゲルダ・ヘンケル財団)
茶話会(45分程度)
(参加無料:会場にて実施)
情報交換会
(参加自由:京都駅付近の会場に移動して実施します。参加方法は当日ご案内いたします)
講演概要
高齢者の集団歌唱について
◯ 太田公子(追手門学院大学)、水野真梨子(ヴァイオリニスト)
高齢者による歌唱は、自然な呼吸や腹圧、嚥下障害の予防など、様々な健康維持に貢献していることは知られている。また、独唱より集団歌唱の方が、感情の共感や心身への共鳴、社会性が高められるとも言われている。集団歌唱が困難な状況でも楽しく歌える、集団歌唱風伴奏音源を作成したい。高齢者による童謡《紅葉》の10人歌唱、3人歌唱、独唱をそれぞれ録音し、集団歌唱の音響的特徴を検討しているところである。
音楽による学びの触発と教師のあり方についての一考察:児童の言語形成と音楽の演奏に共通する認知スキル
◯ 柏木ドリス優真(大阪教育大学 教育学研究科)
人の内的動機による創造活動が複雑で曖昧な状況の中での問題解決能力を育む。それを指導し、支援するものとしての教師の役割を明らかにし、今後学校現場や社会教育現場で何が具体的にできるのかを示唆する。特に二言語話者の言語間切り替え、文脈に合わせた話し方の調整などの認知スキルは、音楽を演奏する上での何が来るかを予測する能力、予期しない変化に反応する能力、そしてこれらの反応を一貫した音楽的な物語に織り込む能力などの認知スキルとの共通性が見られる。このようにどちらにも共通する認知スキルを明らかにし、それらを育てて行く活動のあり方について考察する。
Eye-Voice Spanを指標とする歌手の視唱に関する研究計画
◯ 梁 葉飛、王 鋭騏(広島大学)
楽譜を読んで視唱することは、時間的には短い遂行であるが、非常に複雑なスキルであり、そこに到達するのに、長期学習による非常に多くの準備を必要とする。そのため、視唱は音楽の研究および教育上には、重要な課題である。本研究計画は、歌手は初めて見た楽譜に対する視唱行動 (sight-singing) を行うときのパフォーマンスに焦点を当てる。Huovinen et al. (2021) の知見に基づき、視線計測を行い、歌手の異なる学習段階における視唱のパフォーマンスを検討する。その際、視線が向いている箇所と音声が読み上げている箇所とのズレであるEye-Voice Span (EVS) を算出する。
音楽リズムと同期しての歩行において楽曲のグルーヴが歩容に及ぼす影響
◯ 岡野真裕1,2 , 樫尾一郎3, 森角香奈子3, 松本茂雄3
1) 神戸大学大学院人間発達環境学研究科 2) 立命館大学総合科学技術研究機構スポーツ健康科学総合研究所 3) 株式会社USEN
音楽リズムと同期しながら歩くと、同じテンポの楽曲であっても、曲調によって歩行速度が変化するという報告がある。本研究では、その効果が楽曲のグルーヴ感(音楽が持つ、聴くと身体を動かしたくなる快い衝動)で説明可能かを検討した。その結果、「身体を動かしたくなる衝動」が強いと評価された楽曲ほど、ビートと歩調を同期させやすく、また歩行速度が速まることが明らかになった。
H.シュッツの歴史的身体的聴き方:歴史的音楽学研究に科学的アプローチを取り入れて見えてきたこととは!?
◯ 園田順子(独・ゲルダ・ヘンケル財団)
本研究は、音楽解釈学というドイツの歴史的音楽学の伝統的な作品研究の手法に、科学的アプローチを取り入れて、作品考察を試みたものである。題材としたのは、ドイツ・バロック音楽初期の作曲家ハインリヒ・シュッツの宗教曲 „Herr, wenn ich nur dich habe“である。当時の理論家らによる言説から導かれた聴覚と心の動きの有機的な関係の仮説に基づき、聴覚モデルによるPCシミュレーションを用いて、録音資料から作品分析を行った。本発表ではその結果の具体例に基づき、科学的アプローチから見えてきた点(ポジティブ、およびネガティブな点も含めて)をディスカッションしていきたい。
世話役
正田 悠(京都市立芸術大学)
大澤智恵(武庫川女子大学/音楽の科学研究会 事務局)
印刷をされる場合は以下のGoogle ドキュメントもご利用ください。