新型コロナウィルス感染症 (COVID-19)に関する情報

― 強迫症やその関連症がある方々のために ―

本ページは国際強迫症財団 (IOCDF)に掲載されている、新型コロナウィルス感染拡大状況下で大きな不安を抱えているOCDをお持ちの方やその支援者に向けて発信されている情報を翻訳し掲載しております。英語版はこちら

世界保健機構 (World Health Organization: WHO)は世界規模で感染が拡大する新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の流行をパンデミックに該当すると評価しました。これに応じて、世界中の公衆衛生の専門家が住民個々人や組織に、コロナウィルスへの感染を予防、制限する行動をとるように呼びかけました。これは、OCDやその関連症がある方々にとって、これまでに経験したことのない挑戦になるかもしれません。なぜなら、公衆衛生のために最も良いことと私たち個々人の精神的健康のために良いことのバランスを保つようにしなければならないからです。

あなたにとって役立つ可能性のある情報を以下に記載します。以下に記載のないことでご質問があれば、(617) 973-5801または、info@iocdf.org.にご連絡ください補足1


補足1: 残念ながら現在は、日本語で対応可能なIOCDFの公式な連絡先はありません

誰に聞くべきか (Who to listen to):

多くの人がCOVID-19に関する情報を共有しています。その中には、正確なものもあれば根拠が不明確な情報もあります。あなたが知りうる限りで最良の専門家の情報だけに耳を傾けるようにすることを強くお勧めします。世界保健機構(WHO)は世界中の人が信頼する情報源です。アメリカでは、疾病予防管理センター (Center of Disease Control and prevention: CDC)から発信される情報が、国の発信する信頼できる情報源です。そして、地域の情報に関しては、あなたが所属している州、市、国の保健や公衆衛生に関する公的機関の情報に耳を傾けることを推奨します補足2

補足2: 日本では、厚生労働省が「新型コロナウィルス感染症について」というサイトで情報を提供しています。地域の情報については、お住まいの都道府県からの最新の感染動向や感染症にかかる相談窓口について確認することができます。例えば、あなたがお住まいの地域の保健所の連絡先は厚労省のこちらのサイトから検索ができます。

専門家はなんと言っているか (What the experts are saying):

2020年3月までに、重要な信頼できる健康関連の組織(WHO補足3CDC補足3を含む)は、全ての人に公衆衛生の観点から、以下のガイドラインに従うよう推奨しています。


  • 石鹸を使って少なくとも20秒、手洗いをしましょう。特に外出後や公共の場所にいた後、口に何が物を入れる前、咳やくしゃみ、鼻水がでた後に手洗いをしましょう。もし、石鹸と水が手に入らない場合には、少なくともアルコール分60%のアルコール消毒液で手を拭きましょう。
  • 目、鼻、口など、顔を触るのを避けましょう。
  • 咳やくしゃみをするときには必ず、すぐに捨てるティッシュで覆うか、肘で口元を直接覆うようにしましょう。
  • 多くの人がよく触れる場所の消毒をしましょう。ドアノブやカウンターや机など。
  • 社会的な距離をたもつ習慣をつけましょう。社会的な距離とは、多くの人が集まるところを避けることを意味します(たとえば、大教室での講義、スポーツ観戦、コンサートなどです)


補足3. WHO神戸センター: 新型コロナウィルス感染症 (COVID-19) 一般向け特設ページ

補足4. 自分自身を感染から守る (CDCのHow to Protect Your-Self のアスカコーポレーションによる日本語訳)


もし体調がよくないなと感じたら、とくに、熱、咳、息苦しさといった症状があるなら、自宅に留まり、あなたの治療担当者にすぐに連絡をとりましょう。実際に医療機関に訪問する前に、医療機関に事前に問い合わせることを強く推奨します。あなたの症状に応じて、医療提供者がさらに検査をするためにあなたに来院を求めるか、自宅での療養のしたかについてのアドバイスをしてくれるはずです。

COVID-19はどれくらい深刻か? (How serious is COVID-19?):

最新の研究によると、たいていの人にとってCOVID-19によって健康を害するリスクは低いことが示されています。それらのガイドラインは主として一般の地域の人々を守るために、(高齢者や基礎疾患をもつ人といった)特にアメリカにおいて脆弱性のある人々を守るのに役立ちます。専門家は個々人が衛生に気をつけて、社会的な触れ合いを減らすことを推奨していますが、その理由は、私たち全員が高いリスクをもつからではなく、そうすることが自分の所属する地域や集団を守り、COVID-19の感染拡大を遅らせることに役立つからです。新しいウィルスと対峙する中で、生活に変化が生じることについて考えると、誰もが恐ろしい気持ちになるかもしれません。OCDとその関連症をお持ちの方々にとっては特に、新型コロナウィルスに関する指針によって、これまでとは違った心配や不安、不確かな感覚を抱くかもしれません。指針の多くは具体的または決定的なものではないので、OCDをもつ方々の恐怖や(強迫)行動につけいる隙を与えます(訳者補訳: 決定的ではない、というその不確かさが、恐怖や強迫行為を増幅させます)。OCDを抱えて生活を送る方々の中には、その症状のサブタイプ(確認強迫、汚染強迫、整理順序強迫など)にかかわらず、現在の状況によって症状が悪化、増幅している方がいるかもしれません。治療中の方は、あなたがあなたの治療チームとOCDの治療のために取り組んできたことと、COVID-19に関する指針に矛盾を感じられるかもしれません(訳者補足: 医学的にOCDに有効性が示されIOCDFのメンバーが第一選択とする治療法は曝露反応妨害法(Exposure and Response Prevention:ERP)であり、その治療法では不安や恐怖を感じるものや場所を避けるのではなく、むしろ接近していくよう取り組むため、COVID-19の指針とは相対するように感じられるという意味です。)

新たな(そして一時的な)"正常"に適応する (Adapting to the new (temporary) normal):

このようなときに、専門家が一時的に推奨していることが、私たちの新たな"正常"となります。これは、あなたが取り組んでいる曝露課題(エクスポージャー)、それらを実施するタイミングや頻度など、自身の治療内容を変更する必要が生じることを意味します。新型コロナウィルスの指針が施行されているときには、OCDを抱える方々のそれまでの「ベースライン」を、推奨される指針とあわせる必要があります。次の面接、セッション、診療の際に、COVID-19に関する指針についあなたの治療チームと話し合い、もし近い将来治療方針に変更があるとしたら、どのように変更するのかを検討することをお勧めします。OCDとその関連症を抱える方々とともにわれわれ全員にとって大切なことは、これ(COVID-19による指針)が一時的なことであることを忘れないことです。あなたがご自分のこれまでのベースラインを変更することは、あなたの回復を妨げることにはなりません。これらの困難な時期が終わるそのときまで、最善を尽くしましょう。

何をすべきか (What to do):

    • このリストを読み続ける前に、深呼吸をしましょう。あなたがいま感じている全ての感覚を受け入れ、それらが将来どのようにかわりうるのか感じるためのこころの余白を作りましょう。このような状況は異常な時期であり、あなたが感じられるようなこと全てはこうしたときには自然で理解可能なことです。
    • (上記の「誰に聞くか」で述べたような)検証され、信頼できる情報源から最新の情報を入手し更新しましょう。それらの信頼できる情報源をみることに費やす時間の長さを、一日にどのくらいの時間をそれに割くかを含めて制限しましょう。
    • あなたやあなたの家族に情報を伝えて守るために、情報収集にかける時間は一日につき最大5分で十分です。これは難しいことかもしれませんが、この制限時間を超えると、OCDに囚われ、ニュースや情報のチェックに適切な制限を設定するのが難しくなってしまいます。
    • それらの情報によってあなたやあなたの周りの人に湧き起こる感情に注目するのではなく、それらの情報が伝える事実に注目しましょう。
    • 信頼できる保健関係の組織 (補訳: 例えば日本では、厚生労働省や各都道府県)からの情報に基づいてご自身の基本的な安全計画を立てましょう。必要以上に安全計画を追加しないようにしましょう。
    • 1日に一度、表面消毒をしましょう。家の中でよく触れる場所の表面を集中的に。またそれが本当に必要であるかどうかを考えましょう。例えば、一日中自宅にいて、誰も訪問者がいない日に、ドアノブを本当に消毒する必要があるでしょうか? 消毒は1日数分だけで、それ以上の時間を費やすべきではありません
    • 外出したあと、食事の前、トイレに入ったあと、咳くしゃみ鼻水のあと、石鹸と水で20秒手を洗いましょう。もし石鹸と水が手に入らなければ、少なくともアルコール分60%含有の消毒液で手を消毒しましょう。
    • これ以上手洗いをしたいと思ったら、何が合理的で安全な対策かを理解している人に助けをもとめましょう。
    • 健康な生活習慣を維持し(または新たに作り)ましょう。運動、健康な食品、質のよい睡眠はすべて、こころの健康にとっても体の健康にとっても役立ちます。
    • 休息をとり、自分が楽しめることをしましょう
    • 可能なかぎり日々のルーティンを維持し、快適な生活をこころがけましょう。
    • 新型コロナウィルス感染症が強迫観念や強迫行動など、あなたの強迫症の症状をどのように変化させうるのか注視しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
    • もし現在治療をうけている最中であるなら、あなたの治療チームにCOVID-19やそれによってあなたがどのように影響をうけるかについて相談しましょう。そうすることで、あなたのOCD症状とCOVID-19が特別に関連したところを乗り越えていけるでしょう。あなたの精神的健康に影響をきたすようであれば、あなたのOCD症状を変化させたり悪化させたりする必要はありません!いまこの状況下で多様な感情を感じることは自然なことです。そしてあなたの治療チームはそれらのことについて相談するのにうってつけです。
    • し現在あなたが治療中ではない場合には、他の誰かに連絡をとることを考慮しましょうIOCDFの情報源の検索ができるサイトは、その出発点として非常に役立つものです。もし何かお困りの場合には(617) 973-5801にお電話をおかけいただくか、info@iocdf.orgまでメールをお送りください。(訳注3: 残念ながら現在は、日本語で対応可能なIOCDFの公式な連絡先、情報源がまとめられたサイトはありません。
    • 最も重要なことは、この非常事態で自分に優しくすることです

しないほうがよいこと (What NOT to do):

    • COVID-19の全てを知ろうとする誘惑を避けましょう。最新のニュースや情報の取得の時間と頻度を制限することにベストをつくしましょう。
    • あなたがOCDの治療で取り組んでいることとは相反していてもいなくとも、信頼できる健康に関する情報源から発信される指針を無視しないようにしましょう。あなたの治療チームと一緒に、あなたの目標を、私たち全てが実施している新たな“正常”に一時的に合わせるよう取り組みましょう。
    • 過剰な手洗いをしないようにしましょう。過剰な手洗いはあなたの皮膚を傷つけ、かえって感染症にかかりやすくなってしまいます。手洗いは20秒までで止めましょう。
    • “社会的な距離をとること”で、支援のネットワークから外れないようにしましょう。そのために直接人に会えない場合でも人と繋がれるような方法を使いましょう。
      • 電話、ビデオ会議(テレビ電話)、メールや手紙やチャットなど文章のやりとりを友人や家族としましょう。
      • オンラインのインターネットを介した支援ネットワークに参加しましょう(例えば, HealthUnlocked補足5)。
      • ソーシャルメディアを活用しましょう。
    • OCDはあなたに旅行を控えさせようとします。そのOCDの声に従う代わりに、旅行先への渡航が公式に制限せれている、または警告がなされているかどうかに耳を傾けましょう。WHOが世界中の渡航に関する訓告をだしており、また、アメリカの国務省が市民向けに渡航勧告を発令しています補足6

補足5: 日本では全国にOCD の会という当事者の方々が代表であるNPOがあります(例えば、北海道OCDの会

補足6: 日本では、外務省が渡航に関する訓告を出していますので参照しましょう。

その他の有益な情報源 (More information and resource):

SAMHSAの災害ストレスヘルプラインが困難な状況下で役立つ情報を発信しています(補足9)。それらの情報の入手の仕方や追加で関連する情報を下記に記載されています。


補足9. 日本ではSHAMHSAのように災害ストレス全般に特化したヘルプラインは存在しませんが、メンタルヘルスに関するお住まいの地域での相談窓口が厚労省のサイトから検索できます。)

関連文献情報補足10

• OCDを持つ私のコロナウィルスとの向き合い方

(I have OCD. Here's how I'm dealing with coronavirus fears (Vox))

• コロナウィルスの恐怖が不安症がある人々にもたらす影響

(What coronavirus fears are doing to people with anxiety disorders (The Washington Post))

• コロナに対するOCDに振り回されないために

(Managing OCD about coronavirus (Shala Nicely))

• コロナウィルスについての不安との向き合い方

(How to manage your anxiety about coronavirus (Time))

• コロナウィルスがあってもなくてもメンタルヘルスのケアをしよう

(Caring for your mental health despite the coronavirus (McLean Hospital))

• コロナウィルスと私たちのコミュニティ

(Coronavirus and our communities (NAACP))

• 国民連合によるコロナウィルスに関連したメンタルヘルスに関する最新

(National Alliance on Mental Illness updates on the coronavirus (NAMI))

• コロナウィルス感染症が流行する中のOCDや不安症を抱える人々の困難

(Some with OCD, anxiety disorders are struggling amid the coronavirus epidemic (Chicago Tribune))

補足10: 上記記事の日本語訳はありません。

信頼できる健康関連組織による新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に関する情報

COVID-19 Frequently Asked Questions (CDC)

日本語の関連類似情報 厚生労働省: 新型コロナウィルスに関するQ & A (一般の方向け)

COVID-19 advice for the public (WHO)

日本語の関連類似情報WHO神戸センター: 新型コロナウィルス感染症 (COVID-19) 一般向け特設ページ

COVID-19: Managing anxiety and stress (CDC)

日本語の関連類似情報 アメリカ心理学会 (日本心理学会訳): もしも距離をとることが求められたなら: あなた自身の安全のため

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