A班
環境規制というリスクが産業に与える影響
「RIS2022 MNP & MIP 賞受賞」
B班
企業のリスクとBCPの策定要因
「RIS2022 MNP & MIP 賞受賞」
C班
リスクファイナンスとしての現金保有の価値
~大震災との関係に着目した実証分析~
A班
社外取締役は企業の収益性に好ましい影響を与えるのか?
~ 研究開発規模に着目した実証分析 ~
「RIS2021 MNP & MIP 賞受賞」
B班
水災リスクと企業のリスクファイナンス
「RIS2021 MIP 賞受賞」
C班
農業保険における適切な官民の役割分担
「RIS2021 MIP 賞受賞」
A班
なぜ機関投資家はESG投資を好むのか?
-企業の環境スコアに注目して-
「RIS2020 MNP賞受賞」
B班
企業のリスクテイクとコーポレートガバナンス
-新規セグメント情報を用いた実証分析-
「RIS2020 MNP賞受賞」
C班
地震の地域別リスクとリスクファイナンス
「RIS2020 MNP賞受賞」
2019年度 C班
MIP(学生の投票による最優秀賞)受賞
2019年度 B班
MNP(実務家の投票による最優秀賞)受賞
2019年度 A班
慶應義塾保険学会「学制研究報告会」にて報告
企業のリスクマネジメントと経営者の在任期間-「経営者リスク」とエントレンチメントコストの観点からの検証
【RIS2014 MIP 第4位入賞研究】
【RIS 第1回優秀論文 受賞作】
【『損害保険研究』 第77巻第2号,pp.203-224.(損害保険事業総合研究所)掲載論文】
メンバー: 岩崎 明日実 / 佐々木 拓己 / 荻野 美樹
Key word: 在任期間・エントレンチメントコスト
本研究の目的は、経営者の在任期間が企業業績に影響を及ぼすのか、また、それがどのような影響であるかを明らかにすることである。在任期間と業績の関係を経営者の経営能力、エントレンチメントコストという観点から明らかにし、考察を行う。すなわち、在任期間が長期化すると、経営者の経験値が蓄積され、企業業績は上がるのか、それとも、何らかの影響で経営者の能力が陳腐化し、企業業績は下がるのかという問題について、東証上場企業の財務データを用いて、実証的に検討する。
株主優待制度の実施動機-機関投資家から個人株主への安定株主の変化
【RIS2014 MIP 第4位入賞研究】
【RIS 第1回優秀論文 受賞作】
【『生命保険論集』 第191号,pp.179-197.(生命保険文化センター)掲載論文】
メンバー: 金山 由梨奈 / 市川 悠人 / 計良 彩香
Key word: 安定株主工作・外国法人株主・株主優待制度・買収防衛策
本研究の目的は、企業の経営者がなぜ、株主優待制度を積極的に実施しているのかを探ることである。株主優待制度とは、配当金とは別に自社製品・他社製品を還元するものであり、主に個人株主向けである。近年、株主優待を実施する企業は増加傾向であり、株主優待実施動機に関する既存研究は多々ある。しかし、本研究ではあらたに買収防衛策の1つである、それはつまり経営権を失わないための“保険”の役割をしているのではないかという仮説を立て、分析を行う。
自動車産業における大量生産とリコール~制裁金が与える影響~
【2014年度 東京学生保険ゼミナール報告論文】
メンバー: 川島 理穂 / 河東 宏昭 / 早津 敬喜 / 大泊 絢果 / 八代 一毅 / 中村 駿也
Key word: 大量生産・大規模リコール・部品の共通化・規模の経済・制裁金・リコール費用
本研究の目的は、自動車産業における大規模リコールが1 台当たりの総生産コストに与える影響を明らかにすることである。有価証券報告書からリコールにかかる費用を読み取り、さらに有価証券報告書に記載されないリコール費用についても考察を行う。生産台数の増加に伴い1 台あたりの総生産コストは、リコール費用にも規模の経済効果がみられ減少するのか、それとも、リコール費用が何らかの影響で、ある地点を境に増加するのか、リコール情報に関する開示情報から分析し、有価証券報告書に記載されないリコール費用については、シミュレーションを行って検討する。検証結果として、リコール費用にも規模の経済効果がみられ減少した。しかし、大規模リコールにより制裁金が発生するとリコール費用は著しく増加した。
企業特殊的な人的資本喪失のリスクは存在するか?~従業員重視経営がもたらす業績への影響~
【2014年度 リスクマネジメント協会年次大会報告論文】
メンバー: 鳥海 侑花 / 五十嵐 透 / 武田 ゆい / 小川 正敬 / 川口 真代
Key word: 企業特殊的人的資本・従業員重視経営・ワークライフバランス
本研究の目的は、株式会社制度における株主主権のもと、従業員重視経営が勤続年数の長期化を通じて、企業業績を持続的に向上させるメカニズムが存在するか否かについて、「企業特殊的人的資本」という概念を用いて考察する。本論文における従業員重視経営とは、従業員が企業で長く勤められるような施策を積極的に行うことと定義される。一般に、従業員重視の経営を行うことで、従業員の自社に対する長期的な勤務意欲が増加し、企業特殊的人的資本の蓄積が進むといわれる。企業特殊的人的資本の蓄積は企業の持続的競争優位の源泉であると言われるため、結果として、従業員重視の経営は企業業績の向上につながるという論理である。他方で、従業員が長期にわたって1つの企業に勤め続けたとしても、企業業績の向上には何ら影響を与えない可能性もある。そこで、本論文では、東洋経済新報社が毎年刊行する『CSR企業総覧』に掲載されている各種データを用いて、従業員重視の経営と企業業績との関係を探る。
株式市場から見た日本企業の1円の価値 ~リスクマネジメント手段としての現金保有~
メンバー: 梅沢直樹 小原淳 金山由梨奈 内田悟 池田亜美
Key word:
① 現金保有
② 企業価値
③ 成長機会
要旨
本研究の目的は、企業が保有する現金が、株式市場においてどのような評価をされているのかを明らかにすることである。すなわち、企業が保有する現金1円が、株式市場において1円を超える価値として評価されているのか、あるいは、1円未満の価値として評価されているのかを明らかにし、その理由について考察を行う。
金融経済専門情報誌『ブルームバーグ』の調査によれば、TOPIXを構成する日本の主要企業1,671社で約105兆円の現金を保有しており、この額は、これら企業の時価総額の41%に相当する。このように、近年の動向をみる限り、企業の現金保有は過去最高水準といわれている。
本来、企業は資金調達を行った資金を、設備投資や研究開発など、将来の企業の収益性を高めるような投資活動に回すのが基本である。ハーバード大学のマイケル・ジェンセン教授によれば、投資活動とは無縁な現金を、企業が過剰に保有することは、企業価値の向上に何ら貢献しないだけでなく、経営者の個人的な利益のための無駄な支出増(モラルハザード)を招きかねないため、むしろ企業価値は低下するという。
それでは、なぜ企業は現金を、取引上必要な金額以上に保有しようとするのだろうか。一般に、企業は調達した資金を現金としてではなく、設備投資などの投資に回すことで、企業価値を高める。他方で、不況期には、必要な資金調達が迅速にできないことが多いので、すぐに投資に回すことができる手元の現金が十分に保有されていなければ、収益性の高い投資機会をみすみす見逃してしまい、その結果、企業価値の低下を招くというリスクもある。そこで、いわば、チャンスが巡ってきたときに、それを見逃さないためのリスクマネジメントとして、企業は過剰な現金を保有しようとする動機があると考えられる。
それでは、近年になって、なぜ、これほどまでに企業は現金を保有するようになったのだろうか。実は、現金保有の要因に関する研究は過去に盛んに行われてきている。しかしながら、そうした企業の現金保有行動に対して、マーケット(株式市場)がどのような評価をしているのかという研究については、実は、日本ではさほど多くない。そこで、本研究では、日本の企業の現金保有に対する株式市場からの評価に焦点を置き、研究進めていこうと考えた。
興味深いことに、数少ない日本の企業が現金を保有した際の株式市場から見た1円の価値を研究した論文では、1円の価値は2倍であるという評価を示した(福田, 2010)と、1円の価値は0.55~0.73円であるという評価(山口・馬場, 2012)という2つの対立する既存研究が存在することが分かった。そこで、本研究では、これら既存研究における評価の違いについて疑問を抱き、2002年から2012年のデータをもとに市場からの1円の評価がどのようにされているのかの検証を行い、現金を多く保有している企業、現金をあまり保有していない企業はどのような評価をされるのか。景気による株価の変動によっての評価の変化は関係してくるのか等の検証を行いたい。特に、近年起きた経済を大きく変化させた出来事(リーマンショックなど)を基準に検証時期を分けることで、株式市場による企業の現金保有行動に対する評価の変化の原因を探りたい。
労働時間と労働生産性との関係 ~残業時間のリスクマネジメント~
メンバー: 市川悠人 岩崎明日実 木村祐介 平原隆寛 水野亜希保
Key words:
➀ 長時間労働
② 労働時間の短縮
③ 労働生産性
要旨
本研究の目的は、残業が労働生産性を高める場合があるのか、あるならば、それはどのような場合であるのかを明らかにすることである。
近年、日本では長時間労働の影響により、労働生産性の低下の懸念や健康上の害もあることから、労働時間を短くしようとする動きが活発化している。この動きは、1970年の1人あたりの年間総実労働時間の平均2,243時間をピークにサービス残業の見直しや社内運動などにより、労働時間の減少傾向が続いている。しかし、欧米諸国と比べると日本は300時間ほど労働時間が長く、いまだ長時間労働である。また、OECDの『データブック国際労働比較2012』調査において、労働生産性に関しても、日本は諸外国と比べ劣っていることが指摘されている。
労働時間と業績に関して先行研究(姉崎, 2010)では、ワークライフバランスが企業業績にどのような影響を与えるのかを検証している。労働時間と休暇のバランスを取ること、つまり、労働時間を減らし、休暇の時間を増やすことが、就業意欲の向上、業務の効率化につながるというのだ。その結果、労働生産性は高まり、業績が良くなると主張している。
しかしながら、本当に所定外の労働時間、つまり、残業を減らすことが常に企業の業績に貢献するのだろうか。例えば、取り組んでいる残業に集中している時、それが長時間であっても、高い生産性を維持したまま作業ができるだろう。つまり、企業の置かれている状況次第では、逆に、残業がむしろ労働生産性を高め、その結果、企業の業績に貢献する可能性もあるのではないだろうか。要するに、同じ残業でも、残業の質が高くなる場合と残業の質が低下する場合があるのではないかという素朴な疑問である。実際、長時間労働にも関わらず、業績を上げている企業もある。ある企業では、2007年に1人あたりの年間総労働時間の平均は1946.4時間とその年の日本平均1,853時間を超えていたが、2007年度の営業収益は11,545億円と前年同期比で90億円(+0.8%)増を達成している。
そこで、本研究では、あえて逆説的な仮説を提示することで、いわば「残業の善し悪し」とも言うことのできる問題に取り組みたい。先ず、東証上場企業のデータを用いて、残業時間と労働生産性の関係を定量的に探る。次に、残業時間や業績、成長機会等の指標に基づくサンプルを分割し、どのような状況において、労働時間と労働生産性との間に正の関係が生じうるかについて分析する。
3Dプリンタの未来 ~消費者社会にもたらす期待とリスク~
メンバー:
荻野美樹 木村愛莉 計良彩香 永井亜衣子 福村和利 松浦治美 (以上、東京経済大学)
秋山秀樹(修士1年) 吉岡宗一郎(学部4年) (以上2名、工学院大学機械システム工学科)
Key words:
① 文理融合
② 3Dプリンタ
③ 技術革新とリスク
要旨
本研究の目的は、3Dプリンタを取り巻く最近の動向を分析し、そこから予想される近未来の社会と新たなリスクを考察することにある。
3Dプリンタとは、モノを立体的に印刷できる魔法の機械 である。現代のモノづくりが大量生産から個人のニーズに合った多品種少量生産へと変化する中で、その変化を強力に促進するツールとして近年、急速に注目を浴びつつある。
本研究の特徴は文理融合という点にある。すなわち、モノづくりを研究している工学院大学の研究室と、経済・経営を中心とする社会科学分野にある東京経済大学のゼミナールとの間で、それぞれの専門とする知識を活かし、年間を通じて研究プロジェクトを行っている。具体的には、理系学生が新しい技術の開発や情報提供を行う一方で、文系学生はそうした技術革新が創る近未来の社会のかたちやリスクについて考察を行う。
本研究を通じて、理系学生の指導のもと、実際に文系学生は3Dプリンタでの印刷を行うための様々な体験をしてきた。3Dデータの作成方法を学ぶだけでなく、誰でもモノづくりが出来る場に実際に行き、モノづくりをしたり、講演会や大規模なイベントに何度も足を運ぶことで、当初の予想をはるかに超えて、近未来の可能性を実感することができた。大会当日はその感動を皆さんに伝え、共有してもらいたいと思う。
本研究の構成は以下のとおりである。先ず、一般には十分に理解されているとは言い難い3Dプリンタの持つ可能性を共有してもらうべく、その仕組みや現在行われつつあるさまざまな分野への応用例を紹介する。続いて、独自に収集し整理を行った3Dプリンタ関連のデータを紹介する。具体的には、近年急速に高まりつつある3Dプリンタに関して、その認知度や注目度を様々な観点から定量化したものであり、①学生にアンケート調査、②3Dプリンタに関する新聞記事数の変化、③3Dプリンタ関連企業の株価の動向などを分析する。これにより、モノづくりの未来、さらには消費者社会の在り方が、近い未来、劇的に変化する可能性を予測する。
最後に、3Dプリンタが消費者社会に広まった近未来の社会では、誰もが自由なモノづくりが可能となるだろう。モノづくりが企業の生産活動に支配されていた時代とは異なり、それは生活の一部となり現在より身近になると考えられる。そうなったとき、これまで消費者でしかなかった私たちの生活はどのように変化し、どのような新たなリスクに直面することになるのだろうか。本研究の締めくくりとして、この点を議論したい。
民間介護保険は発展するのか - 民間介護保険の現在と未来 -
メンバー: 渡辺彬人 瀬戸川章人 桜井千穂 長谷侑奈 山賀叶介
要旨
本研究は、介護に対するリスクに対処するために、民間の介護保険が発展することが必要不可欠であると考えている。その根拠を、介護リスクへの対処策の1つである「預貯金」と比較して検証し、民間介護保険はどうしたら発展していくのか、そもそも民間介護保険は発展するのか、研究を行う。
第1章 現在と将来の介護リスクへの不安
第2章 現在の介護保険
2-1 公的介護保険とは
2-2 民間介護保険とは
2-3 公的介護保険と民間介護保険の比較
第3章 将来の介護保険
3-1 公的介護保険の縮小
3-2 民間介護保険が発展するためには
(シナリオ分析)
第4章 現在の介護保険と将来の介護保険の比較
第5章 本研究のまとめ及び課題
大地震と中小企業のリスクマネジメント
(小原 淳・能美 亮宏・水野 亜季保)
東日本大震災などの大きな自然災害は、工場損壊などの直接的な損害のみならず、事業中断のような間接的な損害にまで拡大します。私たちのグループでは、このような事業中断リスクが、中小企業経営にどのような影響を及ぼすのか、また、どのような対策をしているのか、実態に多摩地区の企業にインタビューを行うことにより研究しています。
企業の「信用」と「保険」~ もし貸したお金が返ってこなかったら ~
(荒井 薫・内山 隼人・寺下 智子・八森 航・山賀 叶介)
世界的な金融危機のなか、信用リスクへの関心が急速に高まっています。信用リスクとは、貸したお金が返ってこないために損失を被るリスクです。実は、お金を貸した側はこのリスクを第三者に移転することができます。その代表的な主要の一つがクレジットデフォルトスワップ(CDS)です。CDSとは信用リスクに対する保険のようなものであり、あらかじめ契約を結んでおけば、万が一、融資先の企業が倒産した場合でも元本相当額を受け取ることができる仕組みです。
日本銀行などが公表しているデータを分析したところ、2008年のリーマンショックやAIG危機以降、CDS取引量は世界的に大きく減少傾向にある一方で、わが国のCDS取引量はほとんど減少していないことが分かりました。これはきわめて興味深い現象です。
本研究では、この現象を解明すべく、わが国上場企業に関するCDSの取引データを検証しました。分析の結果、CDS取引の対象となる企業の数は減少しているものの、その1社あたりの取引規模(CDS残高)はむしろ増加している可能性があることを突き止めました。それでは、どのような特徴を持つ企業に対して、CDS残高が増加しているのでしょうか。私たちはCDS残高を増やしている可能性がある企業を特定し、その財務的特徴を探ることにより、近年の日本企業が直面する信用リスクについて深く議論を展開しています。
長生き企業の特徴を探る ~ 株主 vs. 従業員 ~
(磯﨑翔太・桜井千穂・徳山大介・長谷侑奈・山﨑湧輝)
本研究の目的は、倒産という最悪の事態を回避し、長期間にわたって経営をしている企業(以下、長生き企業)の特徴を探ることにあります。近年、倒産の件数は2007年度を境として1万件を超える状況が続いています。2012年度の上半期においても5,439件と本年度も1万件を超える可能性は否定できまぜん。また、公表データ(直近5年間)をもとに、私たちが独自に計算したところ、倒産した企業の平均営業年数(設立年度から2011年度までの年数)は約34年でした。
企業が倒産に至る主なリスクを調査・分析したところ、株主や従業員、顧客、取引先、債権者といった企業を取り巻くステークホルダーたちとの関係が大きく崩れた場合に、企業はその終焉を迎えることが明らかになりました。もちろん、すべてのステークホルダーに対して十分な還元ができれば何の問題も生じないでしょう。しかしながら、現実的には、各ステークホルダー間、例えば株主と従業員との間で利害対立が生じるという事態も十分に考えられます。それでは、結果的に長生きを享受している企業は、どのステークホルダーを重視していると考えられるのでしょうか。もちろん企業を取り巻くステークホルダーは様々ですが、さしあたり、ここでは株主と従業員に焦点を絞って実証的に議論を進めています。
本研究が分析対象とするのはわが国の上場企業です。全サンプルを、長生き企業とそうでない企業(まだ長生きの年齢には達していないと考えられる企業)に分割したうえで、それぞれのグループにおける各種財務数値(例:売上高増加率、ROA、配当性向、従業員一人あたりの人件費など)を計算します。最後に、財務数値の平均値に関して、両グループ間で有意な差が存在するか否かを検証します。
企業のデリバティブ購入と銀行取引
(内山隼人・長谷侑奈・馬場覚・山﨑湧輝・小林麻衣・寺下智子・並木陽平・八森航)
2010年、2万社の日本の中小企業が為替デリバティブ取引によって損失を抱えていることが金融庁の調査で発覚しました。デリバティブとは企業のリスクヘッジとして用いられる金融商品です。そのデリバティブによって損失を抱えていることを受け、販売するインセンティブのある銀行が多く販売している可能性を疑いました。
企業のデリバティブ残高と銀行からの借入比率や役員派遣の有無などのデータから検証行った結果、海外売上高の指標をコントロールした上で、銀行からの役員派遣の有無が企業のデリバティブ残高に影響を与えている可能性を発見しました。
企業と従業員:年金制度の選択
(能美亮宏・山城慎哉・徳山大介・山賀叶介・桜井千穂・荒井薫・磯﨑翔太・香月智光・德元真帆)
近年、高齢化が急速に進展するわが国では、退職後の所得保障に関する議論が盛んに行われています。特に企業が運営する企業年金の問題は、社会的な話題をよんでいます。ここで興味深いのは、従業員に対する将来の年金給付の義務は事業主である企業が負担する必要があり、このコスト負担が企業本体の経営を大きく圧迫するほどに膨れ上がってしまった現象が頻発しているということです。いわゆる「レガシーコスト」と呼ばれる現象ですが、これは、企業にとって莫大な負担となり、企業の将来の成長機会にとって不可欠な「前向き」の投資のための資金を食いつぶす危険性すら指摘されているのです。
このように企業年金のコスト負担は一般に巨額かつ長期にわたるものですが、そうした財務的負担を軽減する新しい仕組みとして、21 世紀に入り、DC(確定拠出)型 の企業年金というものが導入されました。ところが、不思議なことにDC制度はこの10年、期待されたほどには普及していないようです。
そこで、私たちのグループでは、制度選択の決定権をもつ事業主(企業)の視点から、DC 年金制度の普及を阻害する要因について実証的に検討しました。具体的には、東京証券取引所に上場する事業会社を対象に、有価証券報告書をもとに各社の企業年金制度の採用状況を調査するとともに、各種財務変数との関係を詳細に分析しました。加えて、議論をより頑強にするために、企業(年金基金)へのインタビュー調査も実施しました。