おみやげの起源

おみやげは、いったい何時から始まったのであろうか。

学会が提唱する定義にあてはめると、人類最古のおみやげは狩猟採集時代にその起源があると考えられる。

個人の移動に伴い、物品が移動し、第3者に供与されるという状況が発生したのは、狩猟採集物を持って帰る行為がその起源ではないであろうか。

初期の人類にとって第3者とは人間の最小集団である家族である。

たとえば父親が家族を残して、採集のために日帰りの旅に出る。

旅先で食物を探し、夕方に家族のもとへと帰ってくる。

そしてその手には獲物や採集物があり、家族に分け与える。

父親はどこで、どのように食物を得ることができたかを家族に自慢し、家族は食べ物を得られたことに感謝する。

またある時には、食物を得られずに帰ってくるが、その道中がいかに困難であったかを語り、とり逃した獲物の一部を手に「こんなに手ごわい相手だった」などと弁明をする。

おそらくこれが人類初のおみやげで、同時多発的に起こったと考えられる。

移動、入手、供与、伝達のプロセスがおみやげの本質であれば、人間以外の動物でもこのような行動は存在する。

たとえば、社会生活を営む昆虫、ミツバチでは、食物探索の旅に出ていた働きバチは発見した蜜のありかを、群れに戻って他個体に伝達する。

食物を分け与える行為は多くの動物にみることができるが、親交目的や証拠といったコミュニケーション手段としておみやげを利用しているのは人間だけではないであろうか。

近年の文化人類学的研究によると、原始、狩猟採集の集団においては、完全な平等社会であった可能性が高いと報告されている。

すなわち、獲得物は集団内で平等に分配するルールが存在し、それが集団の結束につながったとする考え方である。

社会集団としての平等原則が、獲得、分配という意味において、現在でも深層心理や行動原則に作用していることが、おみやげの根底にあると考えられる。