設立趣意文

設立趣意書

本研究会は障害学の基本理念である「当事者性」を継承しつつも、「古典的な障害学」が批判対象としてきた医療従事者・障害者福祉従事者・特別支援教育従事者(高等教育での障害学生支援を含む)等、障害に関わる実務者や障害を考察対象とする研究者といった「健常者」をも交え、障害とは何か、当事者とは誰か、実務者や研究者といった「健常者」と「当事者」とがいかに関係すべきか等の問題を、主として教育論・社会文化論の視点から、しかし同時に関連する人文・社会科学の諸分野をも含んだ、学際的問題として、理論的・規範的・歴史的・実証的・文脈依存的に明らかにすることを目的としている。本研究会は、この設立趣旨に賛同する、いかなる者の参加をも広く歓迎し、そうした参加者たちの協働・討議の「フォーラム」でありたいと願っている。

本研究会が対象とする障害は、狭義には「身体性」・「社会性」を問題にしつつ、広く人間(特に教育論の面では学生の)「生きづらさ」をも包含する概念として措定される。つまり、本研究会においては、社会通念となっている障害を持つ者だけではなく、人間がその生活過程や発達段階で直面するあらゆる「障害」を研究対象に含める。したがって、本研究会は、医療・障害者福祉・特別支援教育・狭義の障害「当事者」に限らず、近接領域としての民族・ナショナリティ論・ジェンダー/セクシュアリティ論・子どもや高齢者、女性を対象とする社会福祉論・差別論・平和論等の実務や研究に参画する者、あるいはその狭義の当事者を将来的に包摂するものとなっていくことを見据えている。

地域の実情に根差した障害教育/文化研究を進めるためには、地域社会との積極的な協働が不可欠であることは言うまでもない。故に、本会は「名古屋障害文化教育研究会」と称するが、国際的な研究の進展をも視野に入れている。

本研究会は上記の目的・構想の下に、今後参加者の自由闊達な討議による民主的、主体的な運営によって、新しい「障害」研究の「フォーラム」の一つとなることを願うものである。