■コンバートEV簡単クッキング
これで、材料が揃いました!早速、料理(作成)に取りかかります。今回のコンバートEV化の手順として、簡単には下記の様になります。
1. 改造ベース車両からEVに不要なもの(エンジン等)を取り外す
2. モータと車両駆動部を接合する
3. その他部品を組み付ける
今回、皆様にとって、最も大きなハードルとなるのは、2番目のモータと車両駆動部の接合です。電気系の配線に慣れておられる皆さんにとって、3番目は意外に簡単です。2番目は、モータの軸と駆動部の軸を合わせることはもちろんのことですが、接合強度も車検時に指摘を受けます。その辺りにポイントを絞ってお話していきます。
●ベース車両から不要なものを取り外そう!
(エンジンルームを空けてみよう!)
改造ベース車両であるエブリィ(スズキ)は運転席下にエンジンやミッションが搭載されています。運転席の下を開けてみると、こんな景色が広がっています。ここでは吸気系とエンジンを全て外していきます。(今はエンジンしか見えませんが、この後ろにはミッションが接続されています。)
(見落としがちな、ラジエータ)
フロントバンパーを外すと、ラジエータが見えてきます。これは前から風を当てることで水冷方式によりエンジンを冷却する部品です。冷却するためのエンジンが無いので、このラジエータも取り外します。フロントバンパーは風を取り込むための大きな開口部がありますが、その機能も実は必要ありません。
(車両の下には、不要な部品がいっぱい!)
車両を持ち上げて下から見た風景です。この写真は車両の後ろから前を見ています。先ほどのエンジンの後部にはミッションがあり、ミッションの駆動力をプロペラシャフトが受けることになります。その駆動をディファレンシャルギアを介してタイヤへ伝達しています。ここでは、エンジンからの排気管、燃料タンク、そしてプロペラシャフトまで全て取り外していきます。
(取り外し完了!)
写真は全て取り外した状態です。何もありません。(笑)今回のコンバートEVはコラムで紹介したプロペラシャフト接合方式を採用するので、デファレンシャルギアは残します。
(プロペラシャフトを残さなかった理由は・・・?)
実を言うと、プロペラシャフトも残したかったのですが、今回の直流モータの最大トルクは、8.3kg・mに対して、スズキ・エブリィの従来のエンジンでの最大トルクは6.3 kg・mとなり、プロペラシャフトの強度が心配です。従って、今回は形状は同じですが、強度が増しているスズキ・ジムニーの純正プロペラシャフトを流用することにしました。(スズキ・ジムニーは最大トルク10.5kg・m!だから登坂性能も大きいのですね。)
●モータと車両駆動部を接合しよう!
今回のスズキ・エブリィのコンバートEV化ではプロペラシャフト接合方式を採用します。従って、モータとプロペラシャフトをどの様に接合させ、そしてどのように車検を通すレベルだと説明するのか、というところまで豊富な写真記録をベースに説明していきます。(一番難しい部分です。)作業を番号順に説明していきます。
(1)モータとプロペラシャフトの接合部を作ろう!
今回の作業を分かりやすく図解してみました。
自作するのは接合部の部品で、それ以外は、モータやプロペラシャフトを流用します。接合部の強度を確保するため、モータの軸と接合部、プロペラシャフトと接合部をそれぞれ固定しなければなりません。今回の作業のポイントとしては、モータと接合部では、両方の接触ポイントに切り込みを入れてピンで固定、プロペラシャフトと接合部については、接合部にポルト穴を作成することで、ボルトで固定、となります。
では、実際の作業の写真を見ていきましょう。
これは今回自作した接合部の写真です。モータ側の接触面には切れ込みが入っており、モータの軸にも同じ太さの切れ込みを入れています。あとでここにピンが刺さることになります。ひっくり返してプロペラシャフト側を見てみると、ボルト穴が空いています。これはプロペラシャフトの接触面にあるボルトの穴と同じ位置に空いており、ボルトを両方に貫通させて固定します。
(モータ軸と接合部を組み合わせる!)
モータの回転軸には、やはり写真の様にピンの大きさに合わせた切り込みを入れておきます。
モータと接合部を組み合わせたところです。ピンをあらかじめ作成しておいた切れ込みに入れて固定しています。これで、モータの回転力を接合部まで伝達することができるようになりました。モータの軸が回転すれば、この接合部もクルクルと回転してくれます。
(プロペラシャフトと接合部をジョイント!)
プロペラシャフト側は、既に作られていたボルト穴に合わせてボルト止めすれば、OKです。こちらはシンプルな作業です。この写真はモータ、接合部、プロペラシャフトが全て接続された状態となっています。これで、モータの回転力がプロペラシャフト側へ上手く伝達される様になりました。
(車検対策!接合部編)
ここで車検対策のために、ノウハウをお教えします。車検に際して、最も問われるのは実は、この接合部の“材質”の強度です。今回はクロムモリブデンン鋼であるSCM420材で接合部を作成しています。車検時にはこのSCM420材についての炭素含有量、引張強さ、添加されているモリブデン量等について、説明資料を作成する必要がありました。また、加工精度についても問われました。加工精度についての資料として、実際に国内大手クラッチメーカーに依頼したので、その旨を申請すれば特に問われませんでした。以上、実際の皆様の作業の参考にされて下さい。
(2)モータを車体に固定しよう!
次にモータと車体を固定していきます。流れとしては、モータブラケットというモータを挟み込む鉄板を作成して、それでモータを挟み込んで一体化させます。今度はそれをモータマウントという鉄のやぐらを組んで、そこにボルト止めして固定します。最後にやぐらを車体に下から取り付けてボルト止めすれば、モータの車体への取付は完了します。この作業で自作するものは、モータブラケットとモータマウントです。
では、早速作業を実際の写真で見ていきましょう。
(モータブラケットの自作)
まずはモータブラケットを作成します。材質はクロムモリブデン鋼SCM435で、こちらの強度説明も、やはり車検申請時に別紙資料として添付する必要があります。ボルトの強度も問われますが、ボルト材質はステンレスSU304で、その旨、やはり追記します。
(モータマウントも自作します!)
次は鉄のやぐら(モータマウント)の作成です。ここで重要な注意事項!今からこういった新しいマウント用部品を色々と車体に取り付けていきますが、車体にボルト用の新しい穴を空けてはいけません!ボルト穴を空けることで、車体の強度が確保できない、と判断されて車検を通すことができなくなる恐れがあります。車体にある“既存のボルト穴”を使って、取り付けるしか方法がありません。このやぐらも、車体のボルト穴の感覚を計算して作成しています。車体の下側に取り付けるので、防錆処理も施した方がベターです。
(モータを車体へ組み付ける!)
そして、モータをモータブラケットで挟み込みます。ボルト止めして、軸は作っていた穴からきちんと出しておきましょう。
これらを先ほどの作業手順に従って全て取り付けた状態がこの写真です。全て、計算通りにボルト止めされています。モータから向こう側は、先ほどモータの軸と接続されたプロペラシャフトが駆動系に向かって伸びています。
これで、コンバートEV化において最も重要な作業である、駆動系の固定と強度確保の説明が終わりました。この部分は機械系において車検申請時に最もチェックされる部分です。実際に作成される方は、この節のポイントに注意しながら、頑張って車検通過を目指して下さい!
※コンバートEV簡単クッキング(2)に続きます!
■参考・引用*文献■
(1) 株式会社コスモウェーブ,:“http://www.cosmo-wave.com”
(2) Electric Conversions,:“http://www.elconchargers.com”
(3) 株式会社ニッセイエコ,:http://www.nisseieco.co.jp
(4) Winston Battery Limited,:“http://en.winston-battery.com”
(5) 株式会社PAT,:“http://power-assist-tech.com”
(6) 島根大学パワエレ研究室,:http://www.pe.shimane-u.ac.jp
(7) 株式会社CAPCO,:http://www.capco.jp
(8) 株式会社アクティブ,:“http://technicalgarage.on.omisenomikata.jp”