・ホーロー抵抗の謎!
本文中に、メインコンタクタにはホーロー抵抗が並列に接続されていました。この意味を説明します。
コントローラと大容量バッテリの間には、ブレーカー、ヒューズ、コンタクタが配線されていますが、コンタクタと並列に接続されているオマケみたいな(どうでも良さそうな?)ホーロー抵抗がなければ、車検ウンヌンというレベルでは無く、コンバートEVは全く動きません。きちんとコンバートEVを動かすためには、ホーロー抵抗の意味を理解してもらう必要があります。大容量バッテリからコントローラまでのより詳細な配線図を下に示します。
(ブレーカーが先か?キースイッチが先か?)
さて、コンバートEVを始動させるときは、ブレーカーとキースイッチの両方をオンしなければ、動きません。では、どちらのスイッチを先にオンすれば良いのでしょうか?実は、ブレーカーを必ず先にオンしなければなりません。そして、安全に動くためには、コンタクタに並列にホーロー抵抗が接続されていることが条件です。どうしてでしょうか?まず、配線図の詳細を理解していきましょう。
(コントローラの入力は、実はキャパシタ!)
この配線図を分かりやすくするために、電気回路の等価回路に書き換えます。ここで重要なポイントですが、コントローラの入力側はフィルタ用のキャパシタが入っています。(勿体なかったのですが、試しにカーチス社のコントローラを1つ分解してみると、アルミ電解コンデンサがズラッと並んでいました。)ですので、コントローラのプラス端子とマイナス端子間は、等価的に電解コンデンサと見なすことができます。
(バッテリ→コントローラの等価回路はこうなる!)
ブレーカーとコンダクタはスイッチと見なせます。ヒューズは面倒なので、ただの配線にしましょう。そうすると、下の様な等価回路に書き換えることができます。コントローラの入力側プラス端子とマイナス端子間を、キャパシタに置き換えているところに注意して下さい。そして、スイッチを入れない状態ではキャパシタの電荷は、ゼロです。
(ブレーカー→コンタクタの順番でスイッチを入れた場合)
マニュアル通りに、ブレーカーを先にオンして、その後にキースイッチを入れて、コンタクタをオンした場合を考えます。最初、ブレーカーがオンした状態では、コンタクタスイッチがオンしていませんので、並列に接続されたホーロー抵抗を介して電流が流れ、キャパシタに流入していきます。その電流は最大でも112[V]/750[W]=0.15[A]しか流れません。そして、抵抗とキャパシタの時定数を持ちながら一気に112Vまで充電されて安定します。この状態で、キースイッチをひねり、コンタクタがオンしても、バッテリ電圧とキャパシタ電圧は同じなので、始動時にいきなり電流が流れることはありません。
(もしも、スイッチを逆にオンしたら・・?)
通常はブレーカー→コンタクタの順番でスイッチをオンしなければなりませんが、あえて逆にすると何が起こるでしょうか?コンタクタがオンした状態で、ブレーカーがオンすると、下の様な等価回路になります。キャパシタの電荷がゼロの状態で、いきなりバッテリ電圧を印加されたことと同じ状態となりますので、短絡電流が一気に流れ込みます。理想的には、無限大の電流が一瞬で流れることになります。実際には、ブレーカーが落ちるか、ヒューズが燃えるか、コントローラの保護装置が働くか、のいずれかの理由で、コンバートEVは始動しません。
(コンバートEVをもっと理解してあげよう!)
せっかく、ほとんどの配線ができていても、あの小さなホーロー抵抗を介して充電を行う“儀式”を省くだけで、コンバートEVはウンともスンとも言ってくれなくなります。(まぁ、電気自動車は元々、音はしないのですが。)マニュアル通りの配線とスイッチの順番で何となく動かすよりも、こんな原理をしっかりと理解して使ってあげた方が、作ってあげたコンバートEVも喜ぶかも知れません。