2011.03.15
Ⅰ.調査の概要
・調査名称:教員の任期制雇用に関するアンケート調査
・調査主体:武蔵野大学教職員組合
・調査対象:武蔵野大学全専任教員
・実査方法:無記名調査票による留置調査法
・調査期間:2010年10月18日~11月1日
・回収調査票数:52通(回収率約25%)
Ⅱ.調査結果(概要)
1.契約更新通知の有無と時期
・定年制への移行や契約更新などの「通知があった」という回答は、採用時に任期制ないし特任制教員の約2/3(67.4%)であった。残りの1/3は、「通知がなかった」という回答であった。
・任期切れ1年前までに定年制への移行や契約更新などの通知が行われたケースは、全回答の1/3に満たない(27.6%)。「半年前まで」が41.4%で最多、「1・2ヵ月前まで」が27.6%、「直前」という回答も3.4%あった。
2.契約更新通知
・学院長や学長など、法人理事者から直接通知されたものは58.6%。学部長などからは20.7%、その他が13.8%であった。
・通知の形態では、65.5%が「口頭での通知」で、「書面での通知」および「口頭と書面での通知」とを合わせ、27.5%であった。
3.任期制雇用についての意見(自由回答)
任期制雇用に関する意見を自由回答法で質問したところ、27名から回答が得られた(全回答者の52%)。
・自由回答の全てをアフターコーディングし、「任期制に賛成」、「任期制に反対」、「任期制の運用面」、「その他」の4つのカテゴリーに分類した。
・最も多いのが「任期制の運用面」に関する意見(たとえば、募集時に任期制が明記されていなかった、更新や定年制への移行に関する基準が不明瞭である、等)で、全回答の81.5%を占めている。
○任期制雇用に関する意見(自由回答)の一覧(N=27)
(1)任期制賛成意見(n=2)
(1)私は任期制に賛成です。この職場をやめたい時には任期の終了でやめることができる。雇い主も、任期終了時点で継続採用とするのが適切かどうかを考えることができる。
(2)任期制は必要と考える。任期制雇用をネガティブに考える傾向にあるが、発想を改善する必要がある。
(2)任期制反対意見(n=2)
(1)任期制のような不安定な雇用は、落ちついて研究、学校運営に携わることを妨げる。教員にとってはもちろん大学にとっても望ましくないあり方と考える。
(2)2年間の任期だと、学生との人間関係ができ、卒論指導まで十分にすることが難しくなる。
(3)任期制の運用面に関する意見(n=22)
(1)任期制に反対するつもりはないが、その運用(例えば、募集時に明記しない、任期が1年を切っても、更新その他がはっきりしない等)に、かなり問題があると思う。また、業績を求められる任期制教員に対して、定年制の教員以上の学内業務を負担させるのは、非常に問題だと思う。
(2)任期制の更新や定年制への移行について、その基準が明確でないため、任期制教員のほうも、本学での勤務を「腰かけ」のようにしか考えられず、「愛社精神」がわかない。これは、法人にとっても結局マイナスなのではないか。事務方にも、本学にアイソをつかしてやめていく人がいる。法人としては拡大方針なのに、人員はどんどん削減され、「この会社は本当に大丈夫なのか」と思う。太平洋戦争の日本軍を思い浮かべてしまう。
(3)任期制であることを明示しないで、JREC-INに公募を出すのは本当にやめたほうがよいと思う。任期制そのものに問題があるとは思っていないが、公募の情報公開の仕方が非常に問題だと思う。
(4)最初から定年制で採用されている教員がいるらしい。学院の姿勢は人によって様々で一貫性がないように思う。
(5)更新に際してのルールが徹底していない。人によって対応にちがいがある。情報がすみやかにながれず、本人にも伝わるのがおそい。だれからみても、わかりやすくなるといい。
(6)必ずしも任期制そのものに反対するわけではないが、その運用のありようには疑問がある。まず、公募段階では「任期制」雇用であること、更新や定年制移行へのチャンスがあるのかどうかなどを明示する必要があると思う。また、教員が任期制から定年制への移行を望む場合には、どのような基準があるのかをある程度明示すべきと考える。
(7)定年制は一部の教員の研究や教育における怠惰の原因になっていると思われるので、任期制それ自体には反対ではないが、更新の可否は遅くとも任期終了の半年以上前に伝えるべきである。
(8)やはり具体的に書面をいただいた上で面談→決定という方がよいと思う(双方に証拠力が残るため)。
(9)規定や基準(定年制への移行・任期更新など)を明らかに、わかりやすく提示していただきたい。
(10)任期制から定年制へ移行することの可否を判断する基準がまったく明らかでないことは、働く者にとってたいへん不安である。このことの基準を明らかにしてもらうよう、理事者に交渉してくださるとありがたい。
(11)任期制について不明な点が多いので明らかにしていただきたい。突然任期更新されないと言われた教員がいて退職していった。その理由も不明で、残った教員も不安になった。
(12)事実背景:公募段階では、任期制の文言はどこにもなく、翌年の研修時か採用時に、任期制であることをはじめて聞かされて驚いた。
(13)任期制は必要と思う。但し、採用時に、充分に説明してほしい。また、任期切れ1年前(半年前)に通知してほしい。契約更新の可否についても通知がほしい。
(14)任期制特任教員であることを採用されてから(つまり前任校に退職願を提出したあと)知らされガクゼンとした。学部長の力で任期制を外した例を見て、"時代に逆行している"と思った(同時に学部長、つまり管理職の教員と仲良くなることがこの大学では重要であると悟った)。
(15)一部の事務職員の見解などが反映されるのはいかがなものか(口頭での通知時に判明)。授業評価の結果も資料になっていたので、それも「申し合わせ」と異なるとは思う。
(16)Q6の質問内容からすると、理系学部は任期制ではないのですか? 任期制終了時には、定年制への移行・更に3年の任期の延長・更新不可の3つのパターンがあるということを、こちらに来てから同僚に聞きました。その3つに判断が分かれる基準が何なのか知りたい。
(17)任期制から定年制に移行する際の基準について明確にする必要がある。また任用形態が不明確なので、文書で任用形態の種類と基準を示すことを法人側に強く要求して欲しい。
(18)制度そのものの運用が不明確である。
(19)安心して働くためには、定年制が望ましいと考える。学内で定年制・任期制と雇用が違うのも不思議。任期制であれば、事前に十分な説明、任期更新(非更新)の基準の明確化、更新可否を伝える時期を1年前には行うなどしてほしい。
(20)更新しない場合の理由が不明瞭である。状況によって理由が色々と変わるので、在任中どのように仕事をすれば良いのか分からず不安である。
(21) 2年終了時点の何月というように、より具体的な申し合わせを口頭ではなく文書でしていただければありがたく存じます。
(22)任期制がどのようにその後契約が更新されるのか不透明である。人によっては5年契約がのびたという人もいれば、すぐに切られてしまう方もいて、よく理解できない。それでも、任期制だからといってやる気をなくしたり、学生へ(教育への)モチベーションの低下につながらないよう努力している。
(4)その他(n=1)
(1)広く人材を求める上で任期制は不利である。しかし、任期制の中で公募条件の適格性や人物評価に疑義が生じる場合などは、リスクを回避するための有効性も無視できず一面では評価できると思う。