DYWドメイン

DYWドメイン

DYW ドメインはPPR型RNA編集因子のC末端側に存在するドメインです。一番C末端側によく保存されたD(アスパラギン酸)Y(チロシン)W(トリプトファン)から名付けられました。シチジン(C)をウリジン(U)に変換するシチジンデアミナーゼによく保存された亜鉛イオン結合部位にみられる配列であるHxE(x)nCxxCをもつことからRNA編集酵素の一番の候補と考えられていました。

私たちはDYW ドメインの活性型と非活性型の構造解析に世界で初めて成功しました。DYWドメインの構造は典型的なシチジンデアミナーゼとよく似た構造をもっていました。しかし、他には無い2つの特徴をもっていました。

一つは亜鉛イオンを含むDYWモチーフです。このモチーフは亜鉛イオンを含みますが、酵素活性はなく構造の安定化に役立っています。もう一つはゲーティングドメインです。このドメインは非活性型DYWでは活性中心に覆いかぶさり、反応を自己疎外しています (図2)。

次に私たちは、ATPなどの核酸がDYWドメインの構造を変化させ、RNA編集活性を上げることを突き止めました。核酸類似体であるTHU(テトラヒドロウリジン)の存在下で得られたDYWドメインの結晶は、ゲーティングドメインの立体構造が非活性型と著しく異なっていました。この活性型DYWドメインでは、ゲーティングドメインが大きく転移し、活性中心付近に標的シチジンが収まる空間ができていました。さらに興味深いことに、活性中心のアミノ酸残基―亜鉛イオンー水分子の距離が接近することで、標的シチジンの脱アミノ化を触媒しやすい構造に変わっていました(図1,図2)。

この結果はDYWドメインが、オルガネラ内で生成されるATPなどの核酸の濃度によって制御をうけている可能性を示唆しています。このしくみは、核にコードされたRNA編集酵素を、葉緑体やミトコンドリアで活性化するために必要なのかもしれません。

今後、RNA編集を制御する詳しいしくみの解明や、医療や産業に応用できる制御可能な遺伝情報書き換えツールなどへの展開が期待されます。

Takenaka, M., Takenaka, S., Barthel, T., Frink, B., Haag, S., Verbitskiy, D., Oldenkott, B., Schallenberg-Rüdinger, M., Feiler, C.G., Weiss, M.S., Palm, G.J., Weber, G. (2021) DYW domain structures imply an unusual regulation principle in plant organellar RNA editing catalysis. Nature Catalysis 4, 510–522. https://doi.org/10.1038/s41929-021-00633-x

図1.DYWドメインの活性中心(M. Künsting/HZB)

図2.DYWドメインの構造ーゲーティングドメインと活性中心の酵素活性化に伴う構造変化(Nature Catalysis (2020) 4, 510–522.)