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超流動ヘリウム中の光ピンセット技術

ナノメートルサイズやマイクロメートルサイズの微粒子を、光の力を使って「つまむ」「固定する」「動かす」ことのできる光ピンセット技術は、2018年にノーベル物理学賞を受賞するなど、物理学や化学、生物学や医学など様々な分野で使われてきました。この光ピンセット技術は、これまで室温の水溶液中で行われることがほとんどでした。

我々のグループは世界で初めて、1.4 Kという極低温環境である超流動ヘリウム中で光ピンセット技術が適用可能であることを実証しました(これは、従来ナノ微粒子の光ピンセット実験が行われていた温度よりも2桁低い温度での実験です)。この光ピンセット技術を超流動ヘリウムの物性研究などへ展開することを狙っています。

量子渦の可視化とダイナミクスの研究

超流動ヘリウム中の流れは、その循環が量子化されます。そのため、超流動ヘリウム中の渦は、量子化された渦、量子渦として振る舞います。量子渦は、古典渦と比べて非常に安定であり、渦や乱流の科学のための有力な研究対象として期待されています。

超流動ヘリウムの屈折率は1に非常に近く、また量子渦の渦芯のサイズは0.1 nmほどであるため、直接その存在を観察することはできません。我々のグループは、半導体微粒子を用いて量子渦を可視化できることを実証しました。従来使われていた手法とは異なる、様々な材料を利用可能な手法を開発したことで、光と物質の相互作用を利用した実験など、新たな研究の展開の可能性を拓きました。現在は、光を積極的に用いた量子渦の研究を狙っています。

関連論文

Y. Minowa, S. Aoyagi, S. Inui, T. Nakagawa, G. Asaka, M. Tsubota, M. Ashida
"Visualization of quantized vortex reconnection enabled by laser ablation,"
Science Advances, 8, eabn1143 (2022). (open access)
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abn1143

関連報道・プレスリリース

浮揚ナノ・マイクロ粒子の運動冷却・制御

光や電場・磁場を用いて微粒子を3次元空間中に浮揚させることができます。このような浮揚した微粒子の運動を精密に観測し、自由自在に制御したり、その運動エネルギーを量子基底状態に向けて減少させる( = 運動を冷却する)ことで、微粒子に働く力や加速度の高感度センシングや、微粒子物性の研究が可能になると考えられています。

我々のグループでは、局在化法と呼ばれる超解像技術を用いることで、微粒子の座標をカメラ素子を用いてリアルタイムに検出し、真空中で電場の力で浮揚した荷電微粒子の運動をフィードバック冷却することに成功しました。現在は、この技術の対象を広げるために微粒子のサイズや材料、周囲の環境などが異なる様々な系を対象に研究を進めています。

関連論文

Y. Minowa, K. Kato, S. Ueno, T. W. Penny, A. Pontin, M. Ashida, P. F. Barker
“Imaging based feedback cooling of a levitated nanoparticle,”
Review of Scientific Instruments 93, 075109 (2022).
https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0095614

使用したコードの説明

https://github.com/minowayosuke/high_fps_camera_feedback