第1回認識論研究会

第1回 認識論研究会

2019年11月23日 15:00~18:00pm

名古屋大学全学教育棟本館, 1階C12


プログラム:

15:00~16:20pm

「阻却理由は何を阻却するのか」

笠木雅史(名古屋大学)

要旨:現代認識論で「阻却要因(defeater)」という語は、知識を阻却する外的条件という意味と、正当化や合理性を阻却する阻却理由という二つの異なる意味で用いられる。本発表が対象とするのは、後者である。阻却理由は、従来の分類では、(a)反駁型阻却理由、(b)撤回型阻却理由、(c)高階阻却理由の3種類が主に知られている。しかし、(a)、(b)は、阻却理由がどのように正当化を阻却するのかという機能的観点からの分類であるのに対し、(c)は阻却理由の内容が1階の信念を主題とするという主題的観点からの分類であり、うまく整合していない。さらに、阻却理由が阻却するのは、正当化や合理性だけではないため、よりきめ細かい分類が可能である。本発表では、阻却理由が阻却するのは何かという観点から、新しい包括的な阻却理由の分類を提示する。本発表の分類は、何を阻却するのかを区別することで阻却理由の機能を説明するという点で、機能的分類の洗練とみなすことができる。


16:30~18:00pm

「議論( argumentation)の形式的な表現と、それによる常識推論の分析」

西村友海(慶應義塾大学)

要旨:常識推論は一般に、一度導出された帰結が後に撤回されうるという性質(阻却可能性)を持つとされ、その表現および分析にはしばしば非単調論理といわれる特殊な論理が用いられてきた。 しかし、非単調推論の表現には、「議論(argumentation)」を用いるという立場も存在しており、近時ではこれが非単調論理に対して基礎を提供するという立場が有力であるとの指摘もある。この背景には、議論を論証(argument) の集合とそれらの間での阻却(攻撃)関係によって抽象的に理解し、形式化するというDungの仕事がある。本報告では、このDungの仕事に至る経緯とその内容について紹介し、これを用いて非単調論理の説明を与えると共に、常識推論に関するいくつかの論点をこの形式的な枠組みの上に位置づける。