CFD基礎知識

世界のCFDソルバー

国内の圧縮性CFDソルバー

・LANS3D:ISAS/JAXA藤井研究室で開発された構造格子ソルバー

・TAS:東北大学中橋研究室で開発された非構造のソルバー

・JTAS:TASのJAXAバージョン

・UPACS:JAXAで開発されたマルチブロック構造格子のソルバー

http://www.ssken.gr.jp/MAINSITE/download/wg_report/smpt/2.2_takaki.pdf

・upacs-LES:JAXAで開発されたマルチブロック構造格子のソルバーUPCASのLES版

・LS-FLOW:JAXAで開発された直交格子ベースの非構造のソルバー

http://stage.tksc.jaxa.jp/jedi/topics/20100222.html

・FaSTAR:JAXAで開発された非構造のソルバー、計算速度の速さが売りらしい

http://www.mrit.kyushu-u.ac.jp/murakami_jaxa.pdf

国外の圧縮性CFDソルバー

・CFL3D

NASAのラングレー研究所で作っている構造格子ソルバー、以下のサイトにある理論マニュアルは結構勉強になる。

http://cfl3d.larc.nasa.gov/

・FUN3D

NASAのラングレー研究所で作っている非構造格子ソルバー

http://fun3d.larc.nasa.gov/example-46.html

・FDL3D:アメリカ空軍の研究所で作っている構造格子ソルバー、visbalとかが作っている?

・Overflow:NASAのオーバーセット構造格子ソルバー

http://en.wikipedia.org/wiki/Overflow_%28software%29

http://aaac.larc.nasa.gov/~buning/codes.html

http://www.hq.nasa.gov/hpcc/insights/vol5/overflow.htm

・Cart3D:NASAの直交格子の非粘性ソルバー

http://people.nas.nasa.gov/~aftosmis/cart3d/

http://www.nasa.gov/pdf/582999main_cart3d.pdf

・ARC2D,3D NASA/Ames初期の陰解法の構造格子ソルバー、Stegerが作った?

http://people.nas.nasa.gov/~pulliam/mypapers/vki_notes/ARC2D.pdf

・FLU3M:ONERAの圧縮性構造格子のソルバー、最近はLES計算もしているみたい。

商用CFDソルバー

オープンソースのCFDソルバー

有名なCFD研究者(主に航空宇宙分野)

国内の有名なCFD研究者

大御所

国外の有名なCFD研究者

CFDの手法(主に非圧縮性)

空間の離散化手法

空間の離散化に関しては解像度と精度の意味の違いが大切(どこにもあまり書かれていないけど・・・)

有限差分法(FDM)

基礎方程式に微分方程式を用い,微分を差分商に置き換えて計算する手法.一般曲線座標で必要となるメトリックを高次精度で評価できるため,最近高次精度スキームを用いた計算ではFDMがよく使用される.

有限体積法(FVM)

基礎方程式に積分型の方程式を用い,体積積分をセル平均で置き換えて計算する手法.セルの形状を任意に選べるた め,実用計算ではよく使用される.

また,異なるセル形状を同時に使用する際も,理論的に簡単に定式化できるため,ハイブリッドメッシュを使用する計算では FVMが必須である.

欠点としては,幾何学形状から計算されるセル体積やセル界面の面積は2次精度しか持ち合わせていないため,空間精度は2次精度が限度 とされる.

数値解法

MAC法系

スタガード配置と圧力のポアソン方程式を用いて2段階のアルゴリズムで解くが、1段回目を完全に陽的に解

スタガード配置と圧力のポアソン方程式を用いて2段階のアルゴリズムで解くが、1段回目を完全に陰的に解く。

商用ソルバーで使われることが多い。

CFDの手法(主に圧縮性)

格子ボルツマン法

1.  分子運動論的とも言えず、連続体的なアプローチでも無いメゾスコピックな手法であり、分布関数のモーメント和から圧力が計算できるので、ポアソン方程式を解く必要がないこと

2. アルゴリズムが簡易(アルゴリズムに限って言えば理解が簡単であり、組みやすい)

3. 並列計算に適している(有限体積法よりも並列化効率が出る模様。)

4. 更にLBMの中でもLKS(lattice kinetic scheme)と呼ばれる手法を用いると、メモリ消費量が少ない。

原則直交格子だが、有限差分法や有限体積法に適用した例もあるが、アルゴリズムが複雑になる問題もある。

そこで、埋め込み境界法と組み合わせた方法もある。

商用ソフトでは、ExaのPowerFlowやXFLOW、ANSYSのDiscovery Liveなど。

空間の離散化手法

空間の離散化に関しては解像度と精度の意味の違いが大切(どこにもあまり書かれていないけど・・・)

有限差分法(FDM)

基礎方程式に微分方程式を用い,微分を差分商に置き換えて計算する手法.一般曲線座標で必要となるメトリックを高次精度で評価できるため,最近高次精度スキームを用いた計算ではFDMがよく使用される.

有限体積法(FVM)

基礎方程式に積分型の方程式を用い,体積積分をセル平均で置き換えて計算する手法.セルの形状を任意に選べるた め,実用計算ではよく使用される.

また,異なるセル形状を同時に使用する際も,理論的に簡単に定式化できるため,ハイブリッドメッシュを使用する計算では FVMが必須である.

欠点としては,幾何学形状から計算されるセル体積やセル界面の面積は2次精度しか持ち合わせていないため,空間精度は2次精度が限度 とされる.

しかしFVM用のコンパクト補間法を組み合わせることによって高次精度化する試みもある.

Cell-center(セル中心)

Cell-vertex(セル節点)

有限要素法

方程式を微分型でなく、基底関数を乗じて積分した弱形式を用いる。セル内の物理量の分布は、セルの頂点上からの変数値から補間関数によって与えられる。構造格子、非構造格子の両方に適用できる。

渦法

流れ場の連続的な渦度分布を多数の微小渦要素によって離散的に表現。格子や乱流モデルが不要。

当初はポテンシャル流れの計算法として開発された。その後非圧縮性粘性流れ拡張。

特徴としては格子不要、移動境界の導入が容易、陽な乱流モデルが不要、等が挙げられる。

また近年3次元非定常粘性流れの解析法として急速に工学応用が進み、ラグランジュ座標系におけるLESや複雑な非定常はく離の解析にも渦法が利用されるようになった。

スペクトル法

スペクトル法は重み付き残差法を利用した離散化手法。乱流の直接シミュレーションに利用される。 スペクトル法ではフーリエ級数、チェビシェフ級数、ルジャンドル級数がよく用いられる。 チャンネル流れの直接シミュレーションでは一般に壁のない方向ではフーリエ級数を用いるため周期境界条件が用いられる。そのため十分に発達したチャンネル流れに限られる。

フーリエ級数などの級数展開をベースにしている。物理空間で計算するのではなく波数空間で計算される。最も精度が離散化手法であるが、境界条件や流れ場形 状が限られたものにしか適用できない。チャンネル流れのDNSぐらいしか解けない。構造格子(直交格子)のみ。実験よりも正確と言う人もいる。

粒子法

粒子法はSPH法とMPS法があり、自由表面、混相流などにも適用できる。

ある位置における物理量を、その周囲に存在する複数の粒子からの寄与の和として表現する。粒子の周囲にガウス関数などの物理量分布を仮定し、それらの和として滑らかな物理量分布を得ている。

微分演算を粒子間の相互作用モデルで表現する。

時間積分法 

陽解法

時間精度はあるが、CFL条件よりdtが取れないので境界層(壁面)がある解析では実用的ではない。 噴流やせん断層の解析にぐらいしか使えない。 2次元解析ならば問題によっては可能。

等方性乱流などのDNSやる人は数値粘性が少ないので、好む印象あり。

オイラー陽解法

時間1次精度且つ不安定なので、まず使用することはあまりない。

ただアルゴリズムが非常に簡単なので一番はじめにとりあえず入れる時間積分法として使うことはある。

Runge-Kutta法

よく使われる実用的な陽解法、これは様々な派生型がある。Jameson-BakerやTVDなど。基本的な考え方は、不安定で次数の低いスキームの反復を利用して、安定で高次精度のスキームを得ることである。

2段階

  2段2次精度のRunge-Kutta

Jameson-Baker Runge-Kutta

  1段階目はオイラー陽解法に、2段目は2段階Runge-Kuttaに一致する。一般的には4段4次精度を使うことが多い。

  省メモリ型のRunge-Kuttaスキーム(Low Storage Runge-Kutta scheme)と呼ばれ,特に航空分野でしばしば用いられてきた.

非線形問題では4段4次精度にしても2次精度にしかならないので、注意!

  A. Jameson, J. Baker, “Solution of the Euler Equation for Complex Configurations”, AIAA Paper 83-1929, 1983.

TVD Runge-Kutta

3次精度3段、陽解法の割にはdtを大きく取れるが、あまり使われていない。何がTVDなんだろう?高次精度衝撃波捕獲スキームであるWENOやWCNSでたびたび使われている。

  Shu, C.-W. and Osher, S., “Efficient Implementation of Essentially Non-oscillatory  Shock Capturing Schemes,” Journal of Computational Physics, Vol. 77, 1988, pp. 439–471.

古典的4段4次精度 Runge-Kutta

一般的には4段4次精度のRKといえばこちらを差すが、一部のCFDの論文では4段4次精度のRunge-Kuttaと言えば、Jameson-Baker型の4段Runge-Kuttaのことを指しているので注意。

 

陰解法

時間項の離散化

オイラー陰解法:時間1次精度、定常問題ならば特に問題なし、ただし後述するように陰解法は近似因数分解や対角化のために時間精度が無い(1次精度未満)ので非定常問題では内部反復が必要。

クランク・ニコルソン陰解法:時間2次精度、3点後退差分のように1ステップ前の情報を必要としないのでコーディングも楽でメモリも食わないが、あまり安定性は良くないようである。

3点後退差分:時間2次精度、1ステップ前の情報を必要としコーディングも面倒でメモリも食うが、安定性は良い。

非定常問題の場合、近似因数分解や対角化のために時間精度が無いので内部反復が必要なので注意が必要。

LU-ADI 

ベクトル計算機向き、構造格子にしか使用できない。

各方向に近似因数分解した後に、対角化して更にLDU分解

Fujii, K. & Obayashi, S. (1987), 'Navier-Stokes Simulations of Transonic Flows over a Wing-Fuselage Combination', AIAA Journal 25, 1587-1596.

Fujii, K. & Obayashi, S. (1986), Practical Applications of New LU-ADI Scheme for the Three-Dimensional Navier-Stokes Computation of Transonic Viscous Flows, in 'AIAA-1986-513'.

Obayashi, S.; Fujii, K. & Gavali, S. (1988), 'Navier-Stokes Simulation of Wind-Tunnel Flow Using LU-ADI Factorization Algorithm'(100042), Technical report, NASA.

Obayashi, S.; Matsushima, K.; Fujii, K. & Kuwahara, K. (1986), Improvements in Efficiency and Reliability for Navier-Stokes Computations Using the LU-ADI Factorization Algorithm, in 'AIAA-1986-513'.

 

LU-SGS 

ベクトル化にはハイパープレーンが必要 並列化は困難 数値粘性大 方向を意識しないので非構造にも使える。

各方向に分解しないで、LDU分解

LU-SGS法の欠点としては,アスペクト比の非常に大きい格子上で,収束率が多少悪くなることが知られている。

スペクトル半径の使用は,非常に強い数値粘性の導入を意味している

Yoon, S. & Jameson, A. (1988), 'Lower-Upper Symmetric-Gauss-Seidel Method for the Euler and Navier-Stokes Equations', AIAA Journal 26(9), 1025-1026.

Yoon, S. & Jameson, A. (1987), An LU-SSOR Scheme for the Euler and Navier-Stokes Equations, in 'AIAA-1987-600'.

 

LU-ADI-SGS 

ベクトル計算機にもスカラー計算機にも向いている。

各方向に近似因数分解した後に、LDU分解。当然構造格子にしか使用できない。

Nishida, H. & Nonomura, T. (2009), 'ADI-SGS Scheme on Ideal Magnetohydrodynamics', Journal of Computational Physics 228, 3182-3188.

Iizuka, N. (2006), 'Study of Mach Number Effect on the Dynamic Stability of a Blunt Re-entry Capsule', PhD thesis, University of Tokyo.

Iizuka, N. & Fujii, K. (2006), Evaluation of Dynamic Base Pitching Moment of a Blunt ReEntry Capsule in Transonic Region, in 'Proceedings of 57th International Astronautical Congress IAC06-D2P.1.9'.

 

時間刻み

純粋には時間積分法ではないが、時間積分法との組み合わせで重要なのでここに記す

物理時間刻み

各格子点上で一様なΔtを用いて全格子点上の値を同時に進める方法、非定常問題の場合は必須。

局所時間刻み

時間精度を保つには,各格子点上で一様なΔtを用いて全格子点上の値を同時に進 めなければならない。しかし時間発展の部分は無視し,定常解では時間tが無限大 で解がΔtによらないとすると,全格子点上の値が一様に進行する必要はない。ま た,たとえ非粘性流であっても,物体近傍では形状を正しく評価するためにある程 度細かい格子を用いるのが常であるから,一様なΔtをとろうとするとかなり小さ い値にしなければならない。そこで,各格子点上でそれぞれ安定条件を満たすよう にできるだけ大きいΔtをとれば,物体から離れた格子の粗い外部流の領域で解が 速く収束するので,全体としても解は速く収束する。この方法は,陰解法に用いて も同様なメリットをもつので盛んに用いられている。

多重格子法

多重 格子法は、格子間隔hの細かい格子網に間隔が2h、4 h,8h・・・の粗い格子網を、重ね合わせた多重格子を用 い、それぞれの格子網で緩和計算を行うものである。粗 い格子で得られた予想値で順次補正することにより多大 な収束加速が可能である。多重格子法の原理は基本格子 上での方程式を解き、そこで短波長の誤差を減衰させる と共に、制限補間することで残差の修正方程式を粗格子 上に構成し、長波長の誤差を速やかに減衰させるという 手法である。

計算スキーム 

TVDスキーム

FDS 

FDSはシステムの方程式に固有ベクトルを作用させることで、各固有値(ここでは3つの擾乱伝播速度、u、u±C)に対する独立した方程式に分離し、そこでスカラーの風上差分法を適用し、最後に左

固有ベクトルをかけて元の物理座標に戻すといった面倒な作業をする。作業は面倒であるが、スカラー方程式における風上差分のシステムの方程式に対する直接的な拡張となっている点で優れた方法であるといえる。

オイラー方程式の非線形性の処理によってRoeの平均化による方法、Gudnovの方法、Osherの方法な

どに分類されるが、一般的には演算量の少ないRoeの平均化を用いた方法がよく利用されているようである。

要は流束ベクトルの差を特性速度の符号で分離する、これも一種の風上差分

Godunov Scheme

リーマン解法をまじめにやる方法、計算コストが大きいので実際には使用することはあまりない。スキームの検証等に用いられれる。

 

Roe Scheme 

FDSの代表的手法。Euler/Navier-Stokes方程式の非粘性流束(Inviscid Flux)を計算するための近似リーマン解法のひとつ。リーマン問題を解くときに3つの波で近似する。

風上化を行うために,セル界面の基本量(Primitive Variables)をRoe平均によって計算する。Roe平均はリーマン問題の近似解である。

あまり大きなマッハ数だと計算が不安定になる。非常に小さ なマッハ数に対して使用するために前処理法が提案されている。

最近よく用いられるAUSM系スキームと比較すると演算量が多い。 RANS解析でよく用いられるが,LESに適用した例も多少ある。LESに適用する際は,風上化による数値粘性の影響が無視できなくなるため注意が必要である。

数値粘性が少ないので以前は良く亜音速の渦の計算に使われていたが、最近はコンパクトやWCNSあるのでほとんど使わない。

あと、カーバンクルを起こしやくて落ちやすい。計算コスト大(Roe平均の計算に平方根の計算が多いから)

膨張衝撃波を生じることがあるのでエントロピー補正が必要。

Roe, P. L. (1986), 'CHARACTERISTIC-BASED SCHEMES FOR THE EULER EQUATIONS', Annual Review of Fluid Mechanics 18, 337-365.

Roe, P. L. (1981), 'Approximate Riemann Solvers, Parameter Vectors, and Difference Scheme', Journal of Computational Physics 43(2), 357-372.

 

HLL系スキーム

Roeの近似リーマン解法をベースに改良されたスキーム。Roeスキームほどではないがそれなりにリーマン問題を解いている。

特にHLLEWは最近は知らないけど、以前は東北大学の大林先生や中橋先生の研究室では標準的に使われていた模様。

•利点

–非常にロバスト(Positivity)

–計算負荷が小さい

–拡張版のHLLでは接触面を捕らえることができる

•欠点

–それぞれの波の選び方に理論的背景がない.

–一般的な双曲方程式への適用は難しい

HLL(Harten-Lax-Van Leer)

リーマン問題を解くときに二つの波(u+a,u-a)で近似する。つまりRoeスキームと異なり、接触不連続が考慮されないので、接触不連続面が鈍りやすい。

一番数値粘性が大きい

HLLC

HLLで接触不連続を考慮したもの、HLLよりは改善されている。

HLLとHLLCの解説がある。

http://anamat.cie.uma.es/NSPDE/cursos/toro/2-HLL+HLLC.pdf

HLLM?

HLLE(Harten-Lax-Van Leer-Einfeld)

HLLで接触不連続を考慮したもの、HLLよりは改善されているが以前数値粘性が大きい

HLLEW(Harten-Lax-Van Leer-Einfeld-Wada)

エントロピーの大きさによってHLLEとRoeスキームを切り替える。TASでは標準のスキームらしい。

FVS

FVSは単純に流束(検査面を通過して移動する物理量、質量流束ρuなど)の成分を左から来るものと右か

ら来るものに分け、それぞれに後退差分、前進差分を適用するものである。

流束ベクトルのそのものを特性速度の符号で分離する、要はこれも風上差分。

丈夫だが、境界層の解像度がよくないので粘性計算に向かない。

しかも近年ではAUSM系スキームもFVSと同程度に丈夫で、さらに解像度が良いのであまり使われない。

Steger-Warming FVS 

元祖FVS

van Leer FVS

Steger-Warming FVSが音速付近で滑らかな解にならない問題を克服

Hanel FVS

van Leerのエネルギー式では、エンタルピーを保存できない.極超音速での空力過熱ではエンタルピーが重要!!

そこで、エネルギーの移流式および音速の定義を変化させた.

AUSMスキームの原型となる重要なスキーム

Hanлl, D.; Schwane, R. & Seider, G. (1987), On the accuracy of upwind schemes for the solution of the Navier-Stokes equations, in 'AIAA 1987-1105'

AUSM-family 

極超音速を解くために作られたスキーム、頑丈だが不連続面で変なピークが立つことがある。

圧力の項については音波の方向に応じた(マッハ数に応じた)風上差分。

超音速ではFVSになる。流束ジャコビアン行列の計算が必要ないので、簡単で計算コストも少ない。

Lieu, M. S. & Christopher Steffen, J. (1993), 'A New Flux Splitting Scheme', Journal of Computational Physics 107, 23-39.

AUSMV

質量流束の評価にFVSを用いている

AUSMD

質量流束の評価にFDSを用いている

AUSMDV

AUSM 接触面での数値粘性が少なく、Roeスキームの同等の性能

SHUS 

川崎重工(現JAXA)の嶋氏によって開発された。

AUSMの仲間だが、質量流束にRoeのFDSを持ちているのでさらにFDSより。計算コストが少ないのも特徴。

計算コストが少ないのを理由に使用する人もいるらしい。

嶋英志 & 城之内忠正 (1994), '設計における数値解析の活用について(その12)-一粒子的風上法とその検証-', 航空宇宙技術研究所特別資料 27, 255-260.

Shima, E. & Jounouchi, T. (1997), Role of CFD in Aeronautical Engineering (No.14) -AUSM type Upwind Schemes-, in 'Proceedings of the 14th NAL Symposium on Aircraft Computational Aerodynamics', NAL, , pp. 7-12.

 

SLAU

JAXAの嶋氏と北村氏によって開発された。

SHUSの改良版、高マッハ数でより安定で低マッハ数でより低散逸かつシンプル

最近ではSLAU2やSD-DLAUとかもある

Shima, E. & Kitamura, K. (2011), 'Parameter-Free Simple Low-Dissipation AUSM-Family Scheme for All Speeds', AIAA Journal 49(8), 1693-1709.

前処理法

極めて遅い流れもしくは非圧縮性流れはこれまでに、Mac法に基づく非圧縮性流れ特有の方法、もしくは圧縮性流れの計算コードに基づく擬似圧縮性法などにより解かれてきた。

そんな中で、TurkelやMerkleらのグループは、この‘Stiff’問題を解決するために、擬似音速を導入した前処理法(Preconditioning method)を提案している。これは、圧縮性流

れの数値解法が、特に極めて遅い流れ(一様流マッハ数0.01以下)の計算の際に、音速が流速の100 倍以上になってしまい、時間刻みを極端に小さくしなければ安定に計算でき

ない状態に陥ってしまういわゆる‘Stiff’な状態にならないように、音速を速度と同じオーダーに強制的に変換する方法である。これは、特性の理論から解釈すれば、音波の伝播を示

す特性速度をすべて対流速度に置き換えていることになる。このとき同時に、基礎方程式は非圧縮性流れ特有の方程式系に変換される。

疑似圧縮法

擬似圧縮性法は圧縮性流体方程式の特性を利用し,圧力と速度場を同時に求める方法。

擬似圧縮性法とよばれる方法は,連続方程式に擬似圧縮性項を加え,この式から新しい時間の圧力p を求めることができるようにしたものである

高次精度化

以上のTVDスキームは衝撃波を捕獲できるものの、高々1次精度であるのでMUSCL内挿を用いた高次精度化が必要。

内挿の物理量は保存量、基本量、特性量などを利用できるが、基本量で内挿するのが一番計算上安定なようである。

MUSCL

van Leer, B. (1979), 'Towards the Ultimate Conservation Difference Scheme. V. A Second-Order Sequel to Godunov's Method', Journal of Computational Physics 32, 101-136.

van Leer, B. (1977), 'Towards the Ultimate Conservation Difference Scheme. IV. A New Approach to Numerical Convection', Journal of Computational Physics 23(3), 276-299.

制限関数

制限関数 高次精度化すると不連続面(衝撃波やせん断)でTVD条件を満たさなくなるので、制限関数が必要。単調性を確実に保持するために、再構築された値が、その セルの値および隣接セルの値を越えないことが重要。当然のことながら、抑えてほしくない不連続面(せん断)も抑えてしまうので制限関数がなくても計算でき る条件(低亜音速など)であれば無い方が良いが、非構造では無いと落ちることが多い。

・ Barth-Jespersen:非構造で一番最初に開発された制限関数。線形再構築された変数値がその点自身を含む隣接点内での最大値と最小値の間にあ るように勾配を制限している。単調性は維持されるが滑らかな流れの領域でも制限関数が働くことにより空間精度が悪化し、収束性が良くない。

・ Venkatakrishnan:比較的標準的に使用されてきた制限関数、一般的にB-Jよりは収束性が良く実用的であるが、経験的なパラメータがありそ の値によって結果が変わる。隣り合った検査体積のサイズが大きく異なるような品質の悪い格子で、空間精度が低下する。

・ Minmod:一番効き方が強いので安定ではあるが、解が鈍る。 なお制限関数の効き方は上が一番弱く、下が一番強い。

空間1次精度風上差分は単調な解を与えるが、飛びが時間的に鈍ってくるという欠点 を持ち、空間2次精度のスキームは、飛びの鈍りは押えられるが、振動を生じるという 欠点を持っている。 そこで、なるべく空間2次精度を保ちながら、振動を生じる(短波長の振動の原因 となる)飛びの部分では空間1次精度に自動的に落ちるようなスキームはないかを考える。

TVDスキームで高次精度化すると、強い不連続面(衝撃波)で解が振動するので、制限関数を用いて1次精度に落とす必要がある。

van albada

Osher

Superbee

minmod

高次精度中心差分型スキーム

Compact Scheme

一般に,高精度なスキームを構築しようとすると,それに伴って必要なStencil(計算に用いる参照点)の数が増えます.例えばN次精度出すため にはN+1ステンシルが必要となります。

しかしコンパクトスキームでは,一階微分値を用いることでより少ないステンシルで高精度な解が得られます.

そのた めに対角な連立方程式を解く必要がでてきますが,従来のスキームで行うようなヤコビ行列の計算を省くことができるため,計算負荷はそれほど大きくありませ ん(むしろ小さい?).

コンパクトスキームは、「精度が高いのに計算負荷は低い」という特徴があります。衝撃波を伴わない流れの解析においては,まさに夢 のスキームです。その一方,境界の取り扱いが煩雑になるというデメリットもあります。

あと格子をきれいに作らないと落ちる。定式上は4から10次精度まで あるが、よく使うのは6次精度。

Lele, S. K. (1992), 'Compact Finite Difference Schemes with Spectral-like Resolution.', Journal of Computational Physics 103(1), 16-42.

一般座標系に対する適用

Gaitonde, D. V. & Visbal, M. R. (1999), Further development of a Navier-Stokes solution procedure based on higher-order formulas, in 'AIAA-1999-557'.

 

2階微分も使った結合コンパクトスキームなんてものもある

P. Chu and C. Fan. A three-point combined compact difference scheme. J.Comput.Phys.140:370–399, 1998.

有限体積法のコンパクトスキーム

Marcelo H. Kobayashi: On a class of Pade Finite Volume Methods, J. Comput. Phys.156, pp.137-180, 1999.

高次精度風上型不連続捕獲スキーム

Balsaraらは、8次精度スキームは2次精度スキームの4倍程度解像度が高いため、3次元問題の時に各次元方向と時間方向の計4方向に各4倍少ない離散化で済むために、

1stepあたりに計算コストが3倍かかったとしても、44/3倍(≒100倍)のコスト削減になると述べている.このような背景から大規模計算のための様々な高次精度(高解像度)スキームが開発されてきている.

またShuが指摘しているように高次精度スキームを構築する際には、各方向の高次精度化のみを考慮すればよい差分法が最も低コストで計算できる(3次元で体積法の1/10程度)ことから、差分法での高次精度化が低コスト化の観点から望まれる.

ENO

3つのステンシル(格子点の集まり)から3つの補間関数をつくる.この3つのステンシルで作られた補間関数のうち最も滑らかなものを選ぶ.

ENOは非常に良い性質を持ち、不連続が付近にあった場合でも、不連続がないステンシルを用いて計算するため不連続を捕らえることが出来る

Shu, C.-W. & Osher, S. (1989), 'Efficient Implementation of Essentially Non-oscillatory Shock Capturing Schemes II', Journal of Computational Physics 83, 32-78.

Shu, C.-W. & Osher, S. (1988), 'Efficient Implementation of Essentially Non-oscillatory Shock Capturing Schemes', Journal of Computational Physics 77, 439-471.

WENO

しかしながら、前述の3次精度ENOは5点のステンシルを用いながら、3次精度しか達成できていない.これを5次精度出せるようにしたのが重み付きENO、Weighted ENOである

Liu, X.; Osher, S. & Chan, T. (1994), 'Weighted essentially non-oscillatory schemes', Journal of Computational Physics 115, 200-212.

 

WCNS

WCNSはWENOとCompact差分を組み合わせたスキームとして発表された.しかしながら、最近はCompact差分でなくても十分解像度が高いと言われて、陽的差分を用いることが多い.

Deng, X. G. & Mao, M. (2004), 'Studying of Weighted Compact High-order Nonlinear Scheme WCNS-E-5 for Complex Flows', Computational Fluid Dynamics Journal 13, 173-180.

Nonomura, T. & Fujii, K. (2007), Development of Optimized WCNS and Evaluation of Resolution of the Optimized WCNS and High order WCNS, in 'Proceedings of International Conference on Computational Methods 2007'.

Nonomura, T.; Iizuka, N. & Fujii, K. (2010), 'Freestream and vortex preservation properties of high-order WENO and WCNS on curvilinear grids', Computers & Fluids 39(2), 197-214.

 

LAD

主に流れの高周波数成分に効く人工拡散(LAD scheme)を衝撃波付近に局所的に加えることで、コンパクト差分法で強い衝撃波を含む流れを解くことができる。

なお、人工拡散は格子と流れ場で決まる。

この手法は用いている離散化(構造格子か非構造格子か)やスキームに左右されないので、近年非構造格子への適用もされている。

Kawai, S. & Lele, S. (2008), 'Localized artificial diffusivity scheme for discontinuity capturingon curvilinear meshes', Journal of Computational Physics 227, 9498-9526.

Kawai, S. & Lele., S. K. (2007), 'Localized Articial Viscosity and Diffusivity Scheme for Capturing Discontinuities on Curvilinear and Anisotropic Meshes', Technical report, Center for Turbulence Research, NASA Ames and Stanford University, http://www.stanford.edu/group/ctr/ResBriefs/ARB07.html.

Kawai, S.; Shankar, S. K. & Lele, S. K. (2010), 'Assessment of localized artificial diffusivity scheme for large-eddysimulation of compressible turbulent flows', Journal of Computational Physics 229, 1739-176

Kawai, S.; Shankar, S. K. & Lele, S. K. (2009), LES of Compressible Turbulent Flows: Assessment of Compact Differencing with Localized Artificial Diffusivity Scheme, in 'AIAA-2009-1505'.

多成分気体に対する適用

Kawai, S. & Terashima, H. (2010), 'A high-resolution scheme for compressible multicomponent flowswith shock waves', International Journal for Numerical Methods in Fluids.

非構造格子に対する適用

Miyaji, K. (2011), On the Compressible Flow Simulations with Shocks bya Flux Reconstruction Approach, in 'AIAA 2011-3057'.

 

乱流のモデル化 

以下に細かく載ってます。

東京理科大学 山本誠先生の解説

http://accc.riken.jp/assets/files/presentations/080121_yamamoto.pdf

NASAラングレー研究所のサイト

http://turbmodels.larc.nasa.gov/

RANS(Reynolds Averaged Navier-Stokes)

最近,乱流の計算手法は,計算機性能の目覚しい発達から,LESやDNSといったより厳密な方法に移り変わりつつあります。

しかしながら,実用的な計算に対してはそのような計算手法ではまだまだ計算負荷が大きいため,結果が出るまでに非常に長い時間がかかってしまいます。

そこで,乱流の効果を乱流モデルによってモデル化したRANS解析がよく利用されます。

以下にRANSで使用される代表的な乱流モデルの解説を行います。

細かい話ですが、圧縮性CFDの場合はReynolds Averaged Navier-StokesではなくFavre averaged Navier-Stokes equationsです。

線形(等方性)渦粘性型モデル

乱流による拡散を擬似的な粘性係数(動渦粘性係数)で表現するモデル。

代数型モデル(0方程式モデル)

Baldwin-Lomaxモデル

代数的に渦粘性を決定する,0方程式モデル.平板上の乱流境界層をモデル化したもので,それに限れば遷移もうまくとらえられるらしい,計算負荷はとても軽い.

剥離は全然ダメ。乱流境界層は完璧。ロケットやデルタ翼向けにDegani-Schiffの修正版というのもある。

1方程式モデル

Spalart-Allmarasモデル

次元解析と経験則をもとに構築された半経験的なモデル。ナビエストークス方程式と平行して、修正渦動粘性係数(渦動粘性係数自体ではない)についての輸送方程式を

時間方向に解く1方程式モデル.航空分野で開発された、むしろこう航空以外では使われていない?.計算負荷が軽いため好んで使う人がいる.

簡単な境界層の精度がよい、衝撃失速を前方に予測する傾向がある。後自由せん断そうや3次元流れにも弱い。遷移に対する考慮もされている?(<-要調査)

Spalart, P. R. & Allmaras, S. R. (1992), A One-Equation Turbulence Model for Aerodynamic Flows, in 'AIAA-1992-439'.

渦中心での過大な乱流渦粘性を減らす修正を加えたモデルもある。大規模な剥離に対して有効

Spalart, P.R. and Shur, M.L.: On the Sensitization of Turbulence Models to Rotation and Curvature, Aerosp. Sci. Technol., 1 (1997),pp. 297–302.

1.5方程式モデル

Johnson-KIngモデル

k方程式と、レイノルズ応力の最大値に関する流線方向の常微分方程式を解く。

翼面の衝撃波と境界層の干渉が0方程式や2方程式モデルよりも合う。しかし、流線方向を考える必要性があるので、複雑な乱流場への適用は難しい。

2方程式モデル

2方程式モデルの特徴としては、後流領域の粘性応力を過大に予測し、逆圧力勾配や剥離のある境界層に弱い

k-εモデル

kとεの2つの輸送方程式を解いて,渦粘性を決定するモデル.壁面近傍を壁関数によって取り扱う高レイノルズ数型と,壁面近傍でも渦粘性をkとεに よって計算する低レイノルズ数型がある.

別に低レイノルズ数が解けるから低レイノルズ数型ではなく、壁面付近の低レイノルズ数領域が解けるから、低レイノルズ数型である点に注意。

2方程式モデルでは一番適用例が多く,経験も多い。現在でも愛用している人は多い.低レイノルズ数型はいくつかのバリエーショ ンがある.非圧縮で良く使われている。機械系の人が好んで使う?

圧力勾配のある剥離の精度が良くないが、自由せん断流れはk-ωよりも高精度に解ける。またεは一様流の影響を受けにくい。

余談ではあるが、機械屋さんはk-εというと高レイノルズ数型を思い浮かべるが、航空屋さんは低レイノルズ数型を思い浮かべる。

Abid, R. (1993), 'Evaluation of two-equation turbulence models for predicting transitional flows', International Journal of Engineering Science 31(6), 831-840.

・RNG k -εモデル

繰り込み群 (renormalization group, RNG)理論を用いたもので、εの方程式に乱流散逸と平均剪断の干渉の付加項がある。

平均ひずみ効果の補正が加えられており、平均ひずみの大きな流れで渦粘性の過大評価を抑えるので、有効である。低レイノルズ効果も有する。

Fluentでは渦粘性にスワール効果の補正もある。

乱流プラントル数が解析的な式で与えられている。また渦粘性係数の式のも異なる。

・Realizable k -εモデル

k などが負の値を取らないように物理的な実現性 (realizability) の制限を課したモデルである。曲率や旋回がある流れなどに有効とされる。

k-ωモデル

Wilcoxによって作られた。kとωの2つの輸送方程式を解いて,渦粘性を決定するモデル.Near wallの挙動をモデル化しやすく格子依存性も少ない。壁面付近の流れを安定に解くことが出来る。

逆圧力勾配のある流れに強い、つまり剥離流れの予測精度はk-εモデルより優れていると言われている.

しかしωが一様流の影響を受けやすいという問題がある。後自由せん断流れに弱い。

Wilcox, D. (1988), 'Reassessment of the Scale-Determining Equation for Advanced Turbulence Models', AIAA Journal 26, 1299-1300. 

SSTモデル

k-ωモデルをベースにk-εモデルを融合したモデル.F.R.Menterによって1994年に開発された.SSTはShear Stress Transportの略.

壁面付近はk-ωを用い,壁面から離れた領域ではk-εモデルに切り替える。これをBaseline モデルという。さらに乱流せん断力の輸送効果も考慮した(だからShear Stress Transportモデルという)ものをSSTモデルという。

k-ω,k-εモデルより予測精度が優れている。細かいことだがは、良くk-ωとk-εのハイブリッドをSSTモデルという人がいるが前述の通りそれだけではBaselineであり、正しくはSSTモデルではない。

せん断応力リミッタは、k- ωモデルでのよどみ点付近の過度な乱流運動エネルギーの堆積の回避に役立つ。

つまり、渦粘性係数に制限がつくので逆圧力勾配での剥離の精度があがる。

初期版と‘2003年版の2種類があるので注意、また論文によって定数や低レイノルズ数補正、圧縮性補正等々があったりするので要注意!!

私の上司によれは、あまり2003年バージョンはまだ一般的ではないようだ。ジャーナルになっていないからかな?一部の説に寄ればオリジナルの論文のリミッターは間違えているらしい。確かに値が微妙に違う・・・

最近,γ-θモデルという遷移モデルと組み合わせて使用されたりしている.γ-θモデルもMenterによるものである.渦粘性モデルでは一番高度。

初期版

Menter, F. R. (1994), 'Two-equation eddy-viscosity turbulence models for engineering applications', AIAA Journal 32(8), 1598-1605.

Menter, F. R. (1993), Zonal Two Equation k-w, Turbulence Models for Aerodynamic Flows., in 'AIAA-1993-2906'.

2003年版

Menter, F.; Kuntz, M. & Langtry, R. (2003), 'Ten Years of Industrial Experience with the SST Turbulence Model', Turbulence, Heat and Mass Transfer 4.

遷移モデル(Transition Model)

近年,各種流体機械などの小型化に伴い,流れ場の低レイノルズ数化が進んでいます。このような場合,層流から乱流へ遷移する現象を正確に捉えること が流体機械の高性能化を行うために重要になります。DNSやLESでは遷移現象を割と正確に捉えられますが,計算負荷の観点からスピーディな設計を行うためにはRANS解析を用いるのが近道です。そこで,遷移モデルを用いることによってRANSでも遷移現象を考慮した計算を行う必要があります。遷移モデル の開発はまだまだ発展途上ではありますが,最近では非常に優れた遷移モデルが提案されています。

非線形(非等方性)渦粘性型モデル

乱流による拡散を擬似的な粘性係数で表現するモデル。

Explicit algebraic Reynolds stress models (EARSM)

応力方程式モデル

渦粘性近似(ブジネスク近似)を用いずに、レイノルズ応力方程式モデルを比較的真面目に解いてレイノルズ応力6成分を求める方法。当然計算コストが大きいので、圧縮性や航空宇宙の分野ではあまり使われない。渦粘性近似が破綻する非等方性乱流、つまり旋回流(サイクロンなど回転機械)、曲率の強い流れ(第2種2次流れ)、回転場の流れ、浮力のある流れなどに向く。後渦粘性モデルに比べると計算が落ちやすいらしい。少なくとも航空では殆ど使う人はいないと思います。

Hybrid系の手法 

高レイノルズ数流れにおいて,LESでは乱流境界層を捕らえるために非常に高解像度な境界層格子を必要とするため,現在の計算機を以てしても,高レ イノルズ数流れに適用するには現実的な乱流解析手法とは言いがたい.そこで,高レイノルズ数流れの乱流境界層を計算するためにRANSを用い,壁面から離 れたスケールの大きな渦の存在する領域ではLESを用いるというのがDESの考え方である.実は,これ以外にもDESによって享受できるメリットというの があるが,簡単に説明すると上述のようになるだろう.

RANSのモデルとLESのモデルの組み合わせは様々な物が提案されている.代表例は,SpalartによるDES-SA,StreletらによるDES-SST,MenterによるDES-SST,SASなど

DES(Detached Eddy Simulation

Spalart-Almaras乱流モデルのSpalartによって最初に提案されたLESとRANSのハイブリッド計算手法.

格子が荒くなるにつれて、SAモデルならば生成項の効きをSSTならば乱流運動エネルギkの輸送方程式の散逸項を弱くすることによって遠方ではSGSモデルのような働きをさせることでLES的な計算を行う。

具体的にはSAの場合は生成項の長さスケールを従来の壁からの距離ではなく、壁からの距離または各方向の格子の最大幅のうち小さい方を採用することで、壁から遠方で乱流モデルの効きを弱くする。SSTの場合は散逸項の長さスケールを変える。

壁乱流を解くとloglawが合わない、剥離領域で純粋なLESにならない、格子依存性が強い等の問題もある。

非構造格子向き。自分のいた研究室では余り好かれてはいなかった。

Spalart, P. R. (2009), 'Detached-Eddy Simulation', Annual Review of Fluid Mechanics 41, 181-202.

2方程式乱流モデルベースでは、Streletsの定式化とMenterの定式化の2種類がある。

・Streletsの定式化

乱流運動エネルギkの輸送方程式の散逸項を操作することで切り替える。またモデル係数もSST乱流モデルの切り替え関数F1を用いて、切り替える。

・Menterの定式化

Streletsによるオリジナルの定式化では、格子によってRANSとLESの切り替え位置が不正確になる、Modeled Stress Depletion(MSD)やGrid Induced Separation(GIS)といった問題がある。

それを解決するために、乱流運動エネルギkの輸送方程式の散逸項に、SST乱流モデルの切り替え関数F2を用いた補正を加える。

・Zonal-DES

RANSとLESの切り替えを、格子幅ではなく陽的に指定して切り替える方法。単純な流れ場であれば問題はないが複雑な流れ場だと、難しいと予想される。

・DDES DES良くも悪くも格子幅の影響を受ける。例えば境界層格子が中途半端に細かいと、境界層全体がLESになったり、境界層の途中でRANSになってしまうと言う問題がある。

特に境界層内で格子が急激に細かい領域があると、その場所で急にRANSからDESに切り替わってしまい、Grid Induced Separationという非物理的な剥離が起きてしまう。

そこで、境界層を正しく判定するために格子幅はだけでなく流れ場(乱流渦粘性)にも応じてRANSとLES切り替える。つまり、渦粘性係数が強い境界層内では、RANSになるように切り替え関数に重みをつける。

Spalart, P. R.; Deck, S.; Shur, M. L.; Squires, K. D.; Strelets, M. K. & Travin, A. (2006), 'A new version of detached-eddy simulation, resistant to ambiguous grid densities', Theoretical and Computational Fluid Dynamics 20(3), 181-195.

和人, 葛生.; 圭一, 北村.; 圭一郎, 藤本. & 英志, 嶋. (2009), 直交・物体適合ハイブリッド非構造格子ソルバーにおけるDES,DDESの適用とその評価について, in '第23 回数値流体力学シンポジウム'.

 

 ・IDDES DESやDDESでは、壁乱流を解くと切り替え位置で非物理的な縦渦が出ることが知られている。そのためにLogLaw?が合わないという問題がある。

そこでIDDESでは境界層で格子が十分細かく(壁乱流がLESで解像出来る程度)て乱れがあれば、LESに切り替える。さらにRANSとLESの切り替え面で専断応力の補正を加えることでloglowがずれるのを防ぐ。

ただ河合氏によればIDDESは経験的すぎるので良くないらしい。あと論文読んでも全然理解できない・・・orz

個人的にはLESの壁モデルとしてのDESの改良と考えている。またDESやDDESを壁モデルとして使用し場合に発生する縦渦を、無理矢理乱れを入れて消す方法等も別の方々によって考えられているらしい。

Travin, A. K.; Shur, M. L.; Spalart, P. R. & Strelets, M. K. (2006), Improvement of Delayed Detauched-Eddy Simulation for LES with Wall Modeling, in 'Proceedings of European Conference on Computational Fluid Dynamics 2006'.

Shur, M. L.; Spalart, P. R.; Strelets, M. K. & Travin, A. K. (2008), 'A hybrid RANS-LES approach with delayed-DES and wall-modelled LES capabilities', International Journal of Heat and Fluid Flow 29, 1638-1649.

・Simplified IDDES

SST乱流モデル用のIDDESのチューニング、係数等が多少異なる。

Gritskevich, M. S.; Garbaruk, A. V. & Menter, F. R. (2011), Fine-tuning of DDES and IDDES formulations to the k-w Shear Stress Transport model, in '4th European Conference for Aerospace Sciences'.

・SAS

DESのRANSとLESの切り替えの問題を解決するため、Menterが考えたモデル。LESとRANSを領域で分けずに速度場の情報から自動的に切り替える。

平均速度の変化の長さスケールを定義して、これが格子間隔よりもずっと大きい場合はRANSに、格子間隔と同じ程度の場合はLESのモードに切り替える。

Menterが考えたので、当然Fluentには実装されている。

RANS-LES hybrid Methodology

KawaiらによるBaldwin-Lomax/Smagorinskyハイブリッド手法。ある領域でRANSとLESをブレンディング関数を用いて、切り替える。切り替え位置が非常に重要。切り替え位置は通常境界層外延にする。

DESは切り替え位置が格子幅で自動で切り替わるのに、この方法は陽的に指定する点が異なる。

Kawai, S. (2005), 'Computational Analysis of the Caracteristcs of High Speed Base Flows', PhD thesis, University of Tokyo.

Kawai, S. & Fujii, K. (2007), 'Time-series and Time-Averaged Characteristics of Subsonic and Supersonic Base Flows', AIAA Journal 45(1), 289-301.

Kawai, S. & Fujii, K. (2006), Time-Series and Time-Averaged Characteristics of Subsonic to Supersonic Base Flows, in 'AIAA-2006-114'.

Kawai, S. & Fujii, K. (2005), 'Analysis and Prediction of Thin-Airfoil Stall Phenomena Using Hybrid Turbulent Methodology', AIAA Journal 43(5), 953-961.

Kawai, S. & Fujii, K. (2005), Computational Analysis of the Characteristics of Subsonic, Transonic and Supersonic Base Flows, in 'AIAA-2005-5156'.

Kawai, S. & Fujii, K. (2005), 'Computational Study of Supersonic Base Flow Using Hybrid Turbulent Methodology', AIAA Journal 43(6), 1265-1275.

Kawai, S. & Fujii, K. (2004), Prediction of a Thin-Airfoil Stall Phenomenon Using LES/RANSHybrid Methodology with Compact Difference Scheme, in 'AIAA-2004-2714'.

 

LES(Large Eddy Simulation)

LESとは、これまでのRANSと異なり、乱流の一部をN-S方程式を直接解くことによって解析します。そのため、RANSと比較して乱流の解析を高精度に行うことが可能です。

MILES(Monotonically Integrated Large Eddy Simulation) 

LES解析では、フィルタリング操作によってGS(グリットスケール)とSGS(サブグリットスケール)にわけられ,GSについては直接計算 し,SGSにはモデルが用いられます。SGSモデルとして,Smagorinskyモデルやダイナミックモデルなどがあり,このSGS項はGSに対して拡 散的な役割を果たします.また,スキームの中に含まれる数値粘性も同じ効果を持っており,これがSGSモデルとして働くことが期待されます.つま り,SGSモデルは陽に用いず,スキーム中に陰に含まれる数値粘性を積極的に利用して,LES解析を行おうとする手法がMILESと呼ばれる手法で す.LES解析は高精度に乱流を解析できる手法ですが、このモデル化が複雑な流れ場におけるLES解析の精度を悪くしている、と考えられる事例が増えてき ました。MILESではこのモデルを必要としないので、複雑な流れ場における解析が容易になります。

Gristein, F. F. & Fureby, C. (2002), 'Recent Progress on MILES for High Reynolds Number Flows', Journal of Fluids Engineering, Transactions of the ASME 124, 848-861.

ILES

0方程式モデル

SGSモデル

・Smagorinskyモデル

昔はLESといえばこのモデルとって過言ではなかった。渦粘性近似に基づいており、モデル係数が常に正になるので安定なモデル。逆に逆カスケーディングは扱えない。また流れ場に応じてモデル係数(Smagorinsky定数)を変える必要があり、層流では係数が0にならないので遷移を扱うことができない。またチャンネル乱流では、壁面垂直距離を用いた減衰関数が用いられるが,複雑境界や境界の角部などでの取り扱いが困難になる。

・Dynamic Smagorinskyモデル

モデル係数(Smagorinsky定数)を、時々刻々と各格子点で一意に決定していく動的な方法。チャンネル乱流では負の係数になる場合があり、負の拡散となって計算が不安定になるので計算を安定に進めるためにクリッピングをしたり、一様な方向に平均して最小二乗法から決める必要があり。そのため複雑流れや並列計算には向かない。

・Local Dynamic Smagorinskyモデル

局所的に変分方程式をといて、係数を局所的に決める方法。計算負荷が大きく安定に問題があり、係数が負になる場合はクリッピングが必要。

・ WALE(Wall-Adapting Local Eddy-viscosity)モデル

壁面効果を反映したモデルで、壁面垂直距離を用いることなく,壁面漸近挙動を正しく満たす。遷移も扱える。ある商用ソフトではLESで標準となっているモデル。

・Coherent structureモデル

Coherent structure関数を用いて、モデル係数を計算するモデル。層流で自動的に係数が0になるので遷移を扱うことができる。モデル係数が常に正になる。定数は一つのみ必要。壁面漸近挙動も正しく満たす。回転流れでも扱うことができる。Smagorinskyモデルからの書き換えが簡単で、計算コストも低い。珍しい国産のモデル、

DNS 

定義としては「中心差分でフィルターなしで計算できる」のがDNSだと言う人もいるが

「スペクトル法で計算できる」のがDNSだと言う人もいる。

乱流発生手法

リスケーリングと人工乱流の2種類に分かれる。

Adamian, D. & Travin, A. (2010), An Efficient Generator of Synthetic Turbulence at RANS-LES Interface in Embedded LES of Wall-Bounded and Free Shear Flows, in 'The Sixth International Conference on Computational Fluid DynamicsJuly 12-16, 2010 _$B!=_(B St. Petersburg, Russia'.

 

乱流計算手法の基準 

境界条件

滑り壁

オイラー計算用の壁条件

非滑り壁

NS計算用の壁条件

対称境界

半裁形状を計算する時に使用する。 必要な点数を対称面の向こう側にオーバーラップさせる。

例えばk=2,kmax-1が対称面でk=1,kmaxがそれぞれ対称面の向こう側にある場合は、k=1にはk=2の値をk=kmaxにはk=3の値を入れる。

周期境界

流入境界条件

超音速では速度や圧力といった情報のすべてが上流から下流へ向けてすべて一方向に伝わる。このため流入条件として使用するすべての変数の値を固定して与える必要がある。

亜音速の場合は5種類の情報のうち4種類が上流から下流へ、1種類が下流から上流へ伝わるため、流入条件としては4種類の変数を固定し、一つ勾配で与え、

流出境界条件

超音速では流出条件としては値を固定できないの勾配を0とする自由流出境界条件で与える。

亜音速の場合は流出としては1種類の変数(通常は静圧)を固定し、他の4種類の変数を自由流出とする。

LESの常識 

http://www.nikko-pb.co.jp/photos/logmok/m_0405.pdf

用語集 

lhs 

Left Hand Sideのこと、左辺。要は非定常項のことで時間積分を示す。

rhs 

Right Hand Sideのこと、右辺。要は移流項(非粘性流束)と粘性項(粘性流束)のこと。 場合によっては移流項のみを示すこともある。

Grid convergence

格子収束性のこと

validation and verification

得られた計算結果が数値解として正しいか、つまり与えられた基礎方程式が正しく解けているかを確認する verification と、実際の物理現象として正しいか、言いかえると物理現象を正しくモデル化しているかを確認する validation

2.1 verification

CFD における verification としては、様々なものがありますが、最も一般的で重要なのは格子収束性です。本来連続な偏微分方程式の時空間分布を有限幅の計算格子、時間刻で離散化することによって計算を行なっています。

素姓の良い(言いかえれば consistent な) 離散化手法を使っていれば、この有限幅を無限に小さくすることで元の連続な偏微分方程式に近づけることができます。

つまり粗い格子 (離散化の有限幅が大きい) の解よりも細かい格子の解の方がより元の偏微分方程式の解に近づくことになります。現実問題としては、計算機のメモリと処理速度、さらには結果を得るまでの時間といった制約から無限に細かな格子を使うことは不可能です。

そのため、適当な粗さの格子で解析を行うことになるため、得られた結果がどの程度の近似になっているかは常に注意する必要があります。そのため、ある粗さ の計算格子で得られた計算結果と、倍に細かくした (三次元だと x,y,z 方向にそれぞれ2倍で合計8倍) 格子で得られた計算結果を比較して、求めたい物理量に差がない、もしくは要求精度以下の差であることを確認するといった方法が良く行なわれます。 現実問題として流体の数値解析では、計算結果は計算格子に大きく影響を受けます。格子点数が違う場合はもとより、同じ格子点数でも格子の質の違いによっ て解が大きく異ることもあります。ここでいう格子の質とは直交性、隣接する格子点間隔の比、格子の曲率などで、定量的に評価することが難しく、経験的に判 断されています。一般に良い計算格子というのは見た目が奇麗な格子と言われています。

2.2 validation

計算結果と実験/観測データとを比較することで計算結果が正しいかどうかを検証します。一昔前は計算結果と実験データ (例えば風洞の計測データ) と比較して、両者が合っていれば良として、差があれば計算の方に問題があると言われていました。しかしながら、最近の CFD 技術の進歩とともに CFD の信頼性も向上し、両者の比較に於いて一方的に計算に問題があるという状況から相互に問題点を検討する様になり、時には実験に問題があるという指摘を行な えるまでになってきました。勿論、CFD にもまだまだ課題 (例えば、乱流、大剥離、層流から乱流への遷移など) が残されていますが、ある状況下では風洞と同じか、状況によっては風洞以上の信頼性を持つようになりました。と言うのも風洞もある意味知りたい現象を模擬 しているため、何らかの誤差要因が存在することを免れないためです。風洞実験では模型であったり、実際なら存在しない風洞壁があったりと、実物の航空宇宙 機の飛翔環境とは異った環境であり、本来計測したい現象とは異った条件でのデータを計測している事になります。ですから、風洞も CFD と同じように本来知りたい現象に対して少なからず誤差要因を抱えています。とは言うものの、風洞が実際に取扱っているのはあくまで現実の物理現象であるた め、CFD と比べれば遥かに信頼できるものであることには変りありません。そういった意味で風洞データが正しいとして計算結果の検証に使われて来ましたが、今や CFD も風洞も同程度の精度* を持つようになりました。そのため、従来の計算と実験といった相対する立場からの一方的な比較から、相互検証、更にはお互いのメリットを活かして相互補間 することでお互いの信頼性向上と、風洞/CFD 連携による新しい取組が試みられています。

カウント

実際問題どの程度の精度かと言うと、航空機の巡航状態での抵抗係数の推算では CFD も風洞も大体10カウント (1カウント=0.0001)程度の誤差があります。 1カウントは例えば大型の旅客機では抵抗係数の約 0.4 %に相当し、ペイロードに換算すると 450Kg 程度になります。

MUSCL

Monotone Upwind Schemes for Conservation Lawsの略