ひとくくりに「論文」と言っても,様々な種類があり,その種類によって価値が異なります.ここでは,工学系(ロボット系)で一般的な種類分けについて紹介します.
独自の名付けを含みます.
Journal Article
論文誌(ジャーナル)に掲載された論文.いわゆる論文として一般的にみなされるもの.
Proceedings
学会の予稿集として配布された論文.研究の途中経過報告としての立ち位置であり,完全な論文とはみなされないことが多い.
学位論文の類
卒業論文・修士論文・博士論文など.世間一般に公開されていないことがあるので,正式な論文として認められることは少ない.
博士論文だけは大学が公表しているので,他の論文への引用が可能だが,そのようにすることは少ない(だいたいジャーナルの記事で事足りる).
アーカイブ論文
論文を公開するリポジトリ(ArXivやBioArXivなど)にアップロードされた論文.
雑誌に掲載されている論文がそのままコピーされていることもあるが,査読中やリジェクトになった論文,論文誌に投稿する予定のない論文なども含まれる.
査読による修正を経ていないものは信憑性が低いので注意.
従来,論文誌はひとつの出版物であり,雑誌や記事を読むためには購入する必要があった.
しかし近年では,WEB出版の雑誌が増えつつあり,その中でも記事を無料で公開する論文誌が登場している.このような論文誌をオープンアクセスジャーナルという.
従来の形式では出版社は雑誌・記事の販売料を収入としていたが,オープンアクセスジャーナルでは投稿料を収入源としている.
そのため,従来の論文と比較して投稿料が高額になってしまうことがよくある.
多額のお金を払って誰にでも見てもらえる論文誌に投稿するか,旧来の論文誌に投稿するか.研究費との相談である.
査読付き論文 (Peer-reviewed paper)
査読を経て,雑誌への掲載あるいは学会での発表が認められた論文.他の研究者によるチェックを行い修正した後のバージョンが公開される.
雑誌の「格」によって査読の厳しさは異なる.有名な雑誌に載っている論文は,厳しい査読をくぐり抜けているので大変信憑性が高い.
参考文献として挙げるものは査読付き論文を主としてリストアップしよう.
査読なし論文
何のチェックもなく雑誌への掲載あるいは学会での発表が認められる論文.
国内学会やシンポジウムに多い.査読なし雑誌はほとんど存在しない(コラム参照).
査読付き論文誌を標榜しながら,実際にはほとんど査読を行わずに掲載を認めているジャーナルのこと.
具体的にどの論文誌がハゲタカであるかという基準はないが,あやしい論文誌への投稿は避けたいものである.
インパクトファクター (IF) は,ジャーナルの質を表す指標の1つである.そのジャーナルの記事が平均何回参照されているかという値.
重要な論文は何度も引用されるし,そのような論文を掲載しているジャーナルは信頼性が高い.
ただし,インパクトファイターが全てではないので注意は必要だ.あくまで目安として参照するとよい.