第 15 回 研 究 発 表 会
▼開催概要
日時
2026年3月27日(金) 15:00~18:30(日本時間)
場所
早稲田大学戸山キャンパス32号館128教室
▼報告者・報告内容
研究発表1(15:00-16:00)
Ji Hye Han(Assistant Professor, Waseda University)
Cold War Korea Through the Lens of Kuwabara Shisei
In July 1964, photojournalist Kuwabara Shisei (1936–) made his first visit to Korea, nearly eight years after beginning preparations. At a time when Japan and Korea had not yet normalized relations (1965), Kuwabara became one of the first Japanese photographers active in Korea. From the 1960s to 1980s, he documented Korea extensively, culminating in his 1986 photobook Kankoku gen’ei (Korea 1964–86). The book presents what Kuwabara saw as foundational scenes of Korea, including a chapter devoted entirely to the USFK (United States Forces Korea). He captured the military presence’s significance during the Cold War, offering visual narratives distinct from contemporary Korean media, novels, and films. This talk, which is based on 2024 talk at the Sainsbury Institute and article on Kuwabara, explores the implication of photographer’s portrayal of the USFK and his staunch statement on the US military presence in Korea and beyond.
研究発表2(16:00-17:00)
福田真衣(京都大学修士課程)
「最高のエリオグラフィ」とはなにか──中世考古学とミッション・エリオグラフィック
ミッション・エリオグラフィック (Mission Héliographique) は、 1851〜1852 年にかけてフランスの 「歴史的記念物委員会(Commission des Monuments Historiques) 」 が実施した、歴史的建造物の調査・保存を目的とする行政記録事業である。当時新興の技術であった写真術を用い、国内各地の記念物を記録するというこの試みは、初期写真史における重要な事例として知られてきた。一方で、委員会が写真になにを求め、どのような基準でそれを評価していたのかについては、実際の図版に即し十分に検討されているとは言い難い。
先行研究では、委員会が「情報密度の高いイメージ」や「正確な図面」としての機能を重視していた点が指摘されている。しかし、こうした評価基準がどのような視覚的・学問的文脈のもとで形成されていたのかは、必ずしも明らかにされてこなかった。写真史の枠内でミッション写真を捉える限り、委員会の判断は写真固有の特性や技術の成熟度から説明される傾向が強く、写真以前に共有されていた視覚資料の規範との連続性は見落とされている。
本発表はこの点に着目し、ミッション・エリオグラフィックを、19 世紀前半に成立した中世考古学の視覚文化との関係から捉え直す。1830 年代以降、ノルマンディーを中心に発展した中世考古学は、観察・比較・分類を基盤とする実証的な学問として、中世建造物を体系化しようとした。その過程で用いられた図版は、建築の正面性や細部の類型化を重視し、個別の印象を排した均質な視覚形式を特徴としている。とりわけ、アドルフ=ナポレオン・ディドロン(Adolphe Napoléon Didron, 1806–1867) が編集した『考古学年報』 (1840-1857)に掲載された図版は、比較可能な視覚資料としての機能を強く意識したものであった。 本発表の中心は、これらの中世考古学の図版とミッション写真を、構図、視点、被写体の切り取り方、背景処理といった観点から比較検討することである。そこから、ミッション写真に見られる形式的統一性は、写真家個人の美的選択や技術的制約によるものというよりも、委員会内部で共有されていた考古学的視覚規範に写真を適合させようとする要請の結果であった可能性を指摘する。
以上の検討を通じて、本発表はミッション・エリオグラフィックを、写真史における先駆的な事業としてではなく、既存の視覚資料と新しいメディアとの接続点として位置づけ直すことを試みる。 これにより、写真が文化財保護や歴史認識の形成において果たした役割を、より広い視覚文化史の文脈から捉える視座を提示する。
書評会(17:15-18:30)
田尻歩『ドキュメンタリー写真を発明し直す』(よはく舎、2025年)をめぐって
登壇者:田尻歩(東京理科大学)、土屋誠一(沖縄県立芸術大学)
司会:橋本一径(早稲田大学)