DIMMのスペック(RANK)

DIMMのスペックを表すものの一つにランクがある。DDR3 DIMMの場合は、ランクは必ず1か2となっている。

ランクの違いは、電気的には、DIMM上の一つのデータ線に接続されるDRAMのチップの数ととらえることができる。

DDR3 DIMMのデータ幅は64bitであるが、一チップ当たりのデータ幅が8ビットのDRAMでDIMMを構成する場合、このDRAMを8個使う。

DIMMとDRAMの信号の対応関係は以下のようになる。

DIMMのDQ[7:0] <=> DRAM1のDQ[7:0]

DIMMのDQ[15:8] <=> DRAM2のDQ[7:0]

DIMMのDQ[23:16] <=> DRAM3のDQ[7:0]

DIMMのDQ[31:24] <=> DRAM4のDQ[7:0]

DIMMのDQ[39:32] <=> DRAM5のDQ[7:0]

DIMMのDQ[47:40] <=> DRAM6のDQ[7:0]

DIMMのDQ[55:48] <=> DRAM7のDQ[7:0]

DIMMのDQ[63:56] <=> DRAM8のDQ[7:0]

要するに、DIMMのDQとDRAMのDQが一対一で接続される。これがランク1のDIMMになる。

1GBitのDRAMを使用しているのであれば、DIMMの容量は1[Gbit]*8[Chips]=8[Gbit]=1[GByte]となる。

ちなみに、アドレス等の制御線は、電気的には全チップに同じものが入力される。

上記のDRAMを使用して倍の容量のDIMMをつくるには、DRAMを倍の個数使ってランクを2にする。この場合は、以下のようにDIMMのDQに対して2つのDRAMのDQを接続する。

DIMMのDQ[7:0] <=> DRAM1のDQ[7:0]とDRAM9のDQ[7:0]

DIMMのDQ[15:8] <=> DRAM2のDQ[7:0]とDRAM10のDQ[7:0]

DIMMのDQ[23:16] <=> DRAM3のDQ[7:0]とDRAM11のDQ[7:0]

DIMMのDQ[31:24] <=> DRAM4のDQ[7:0]とDRAM12のDQ[7:0]

DIMMのDQ[39:32] <=> DRAM5のDQ[7:0]とDRAM13のDQ[7:0]

DIMMのDQ[47:40] <=> DRAM6のDQ[7:0]とDRAM14のDQ[7:0]

DIMMのDQ[55:48] <=> DRAM7のDQ[7:0]とDRAM15のDQ[7:0]

DIMMのDQ[63:56] <=> DRAM8のDQ[7:0]とDRAM16のDQ[7:0]

アドレス等の制御信号は電気的には全チップに同じものが入力される。ただしこのままではDRAMのDQ同士がぶつかってしまう。そこで、制御用の信号である/CS(Chip Select)信号だけは別々にする(実際はこの他にも多少別にする信号がある)。

DIMMの/CS0 => DRAM1-8の/CS

DIMMの/CS1 => DRAM9-16の/CS

これにより、どちらのグループのDRAMを制御するかを選択し、信号の衝突を防いでいる。

マルチランクにした場合の欠点としては、DQの波形品質の問題がある。信号の接続は、スタブ(分岐)がないことが望ましいのだが、マルチランクの場合はDQの配線にどうしてもスタブができてしまう。

この問題は信号が高速化するほど深刻になるため、メモリの高速化に伴いDIMMの規格上のランクの上限も少なくなっている。DDR3では最大2ランクであるし、DDR4ではシングルランクのみになるのではないかという話も出ている。

実は、ランクが2の場合のみ、スタブ長をかなり短くする方法がある。それは、同じDRAMでもGDDRのほうでは規格化されているのだが、クラムシェル構造を使用する方法である。

通常のピン配置のチップに加えて、チップ実装面に対してピン配置が鏡像になっているものを用意する。

通常 鏡像

+---------+ +----------+

DQ0-| |-A0 A0-| |-DQ0

DQ1-| |-A1 A1-| |-DQ1

DQ2-| |-A2 A2-| |-DQ2

DQ3-| |-A3 A3-| |-DQ3

+----------+ +----------+

このチップを、プリント版の裏表で同じ位置におき、ピン間をスルーホールで接続すると、ほぼスタブ無しで各信号を一括接続することができる。

最近はあまり見なくなったSRAMのチップなどもこのようなオプションが用意されているものがあり、これらはダイは共通で、ダイとパッケージ間の配線を代える、いわゆるボンディングオプションで実現していた。

ボンディングオプションの問題点は、同じダイでもチップとしては二種類となってしまい、流通や製品管理の手間が増えてしまうことである。とにかく買い叩かれることが多いPC用のDRAMでこの手法が使えるかどうかは未知数な部分がある。