【設立10周年】2018年度全国研修会のご報告

2018年度のキャンパスソーシャルワークネットワークの全国研修会が開かれました。当日の様子を、多摩美術大学上野毛キャンパスのCSWである前田さんがまとめてくださいましたので、ご厚意により掲載致します。

【講演】「モデル・アイドルになれると言われて~日本の人身取引被害の実態~」

NPO法人人身取引被害者サポートセンター ライトハウス 藤原志帆子 氏

(ライトハウスwebページ https://lhj.jp/

    • 「人身取引」とは「性的搾取、強制労働、臓器摘出」の3つ。日本では年齢、性別、国籍問わず「性的搾取」の被害に遭っている。1999年に児童ポルノ買春防止法が制定されるまでは、世界の中の8割の児童ポルノが日本からのもの、と言われていたこともある。
    • 2004年のライトハウス設立当初は外国人からの相談がほとんど。この10年日本の若者からの被害相談が95%。被害に遭っている場所は東京(渋谷、新宿)、大阪等都市部が多いが地方での被害もある。
    • 人身取引被害の相談で一番多いのが「AV出演強要」。相談希望者から相談窓口は電話、LINE、メールで連絡が取れるようになっている。(本人たちはLINEでの相談が一番しやすいとのこと)支援内容は、面談、最適な社会資源へつなげることなどを行う。遠隔地の場合は必要に応じて支援員が出向く。→相談してきたときに「今は大丈夫」と言っても、支援が必要になるまで長くかかわり続けることもある。
    • AV出演強要被害の例
      • 大都市:スカウトによる街頭の声かけ ただし渋谷区や新宿区は街頭のスカウト禁止の条例があるため、最近ではLINEの交換だけして、その後LINEに執拗に連絡が入ることも。
参考→新宿区webページ「客引き行為等の規制を強化する条例を施行」https://www.city.shinjuku.lg.jp/whatsnew/pub/2013/0830-01.html
      • 地方:東京のオーディションに来てみない?と声をかけて東京へ来させる。また、地方都市まで撮影に出向く個人運営のサイトも存在していたことがある。
      • Web上:twitterやインスタで「JKです」などと書いてあるアカウントをスカウト側がフォローし、進学や就職が決まったところで「東京に来ているならモデルやってみない?」などと連絡する。また、ネット上で「パーツモデル(手や足だけのモデル)」の募集ページから申し込みをして面接に出向くと、AVの事務所と同じところに事務所があり、「手のモデルの仕事は少ないからAVやってみない?」といって勧誘されることもあった。
    • 声のかけ方も巧妙になっている。「AV出ても絶対にばれない」とは言わない。「交通事故に遭うぐらいの可能性でばれるかもしれないけど、交通事故なんてそんなにあわないよね」「この作品は中国に輸出するから中国でしか見られない。友達や家族は中国に行かないでしょ?」(※日本のAV商品は中国・韓国でもかなり流通している)など言葉巧み。
    • 相談者の内「出演する気は全くなかった」人が8割。最初の目的(パーツモデル、アイドル撮影会)ではなくAVの撮影になってしまったので断りたくても、たくさんの大人に囲まれて断れなくなってしまう。中には「奨学金返済でお金が必要で、止むを得ず出演を決めたが、聞いていた話以上の過激な内容だったので断りたかったが大人に囲まれて怖くて拒否できなくなった」いう人もいた。
    • 一度連絡を取り始めてしまうと巧妙で執拗な説得をされて、拒否した場合は「違約金の請求」や「家族、学校に言う」といった脅しをしてくる。撮影、販売された映像の完全削除は非常に困難で、商品として販売停止にできても、「サンプル動画」としてネット上に流れてしまえば止めることはできない。また、商品の一部を切り貼りした映像をネット上に流すような「ファンサイト」もある。
    • 業界も「AV人権倫理機構」を立ち上げ適正な契約を進めているが、業界大手しか加盟していない。現在では個人や少人数のグループがゲリラ的に撮影してネットで拡散させることが増えている。また、監督省庁が明確でないため、対応が難しいこともある→近年、各県警察本部では「AV出演強要担当者」が置かれているので心配なことがあれば相談を。ライトハウスでも、yahooやアマゾン、メルカリなどインターネット業者とライトハウスで協定を結び、強要されて出演させられたAVのDVDなどがネットオークションに出品されている場合は販売停止にできる仕組みを作った。
    • 現時点では20歳前の契約に関しては「未成年取り消し」が可能。ただし今後は成人年齢が18歳になるとその方法は使えなくなるので注意が必要。まずは出てしまう前に相談を。AV強要以外にも、リベンジポルノなども問題が大きい。

午前 講演

ライトハウス 藤原さん

午後 話題提供①

女子美術大学 長さん

午後 話題提供②

明治学院大学 冨岡さん

【グループディスカッション】障がい学生支援における合理的配慮を考える

○話題提供者

「精神および/または発達障害を有する/疑う学生の同行と合理的配慮におけるCSWの役割」

女子美術大学 長チノリ氏

CSW、カウンセラーがそれぞれの専門性を生かして学内で連携するための「つなぎ」の役割をCSWが果たしていることについての考察が紹介された。

「障がい学生の合理的配慮に関する取り組み」

明治学院大学 冨岡美紀子氏

学生サポートセンターによる学生のサポートについて、入学決定後の大学への移行サポートから社会への移行サポートまでの流れについて、事例をもとに紹介があった。

○グループディスカッション

参加者同士で各大学の事例について紹介し、支援体制の様子について情報交換を行った。参加したグループでは「学内連携の難しさ(大学内でCSWについての理解が深まらないと学内で連携するのが難しい)」「大学独特の文化を理解するために時間がかかる」「前任者からの引継ぎがないままの支援の難しさ」等について話し合われた。

○調査協力の依頼

参加者より、2件のアンケートの依頼(「CSWの業務について(CSWむけ)」、「合理的配慮学生の支援ツール開発(学生向け)」)があり、今後CSWネットワークのメーリングリスト等でフォーマットが示され、参加者が任意で回答に協力することになった。

【交流会】

約20名が参加し、日ごろの業務の悩みや学内の連携状況などの個別事例について情報交換をおこなった。

グループディスカッション風景⓵

グループディスカッション風景②

最後に会食もありました