早稲田大学理工学術院,Metaphorest,SyntheticAesthetics
対談(粂和彦さんと)
生命について,科学がどのように語り,科学以外の文脈でどのように語られるのか,その関係性は何か,に興味を持っています。もともと,科学史や科学技術社会論と芸術に興味があって,概日リズムには,生物学的な意義よりも,科学史のテーマとして最初に興味を持ちました。で,ミイラ取りがミイラになった結果として,シアノバクテリアの概日リズム研究を行っています(リズムに関する科学史・文化史研究も細々と続けています)。時計遺伝子kaiABCのクローニング(1998),Kai蛋白質の生化学的解析(リン酸化振動,相互作用の発見,KaiC結合蛋白質の同定)を経て,転写翻訳フィードバックモデルの反証(2005)などを手掛け,体内時計の試験管内再構成系の確立(2005)を見届けて独立,概日リズムに加えて空間パターン形成について,バクテリアを使って解析しています。あと,科学者らしきものになってしまう随分前から美術制作を行ってきました。アートは科学と少し違った,より多角的な視点から世界,自然を眺め,思索し,表現するプラットフォームです。現在の,拡張された芸術観では,サイエンスはアートの一部としてカウントされ得ます(その逆は成立しないことに注意)。ということで,独立を機に「実験生物学,アート,文化史」の研究や制作を同時並行できるようなラボを作ろうとしてきました。今ではラボに複数のアーティストが常駐して,生命に関する制作活動をしています(科学の理解増進活動=科学に隷属するアートとしてのサイエンスアートではありません。このプラットフォームをMetaphorestと名付けています)。たとえばラボには3人のポスドクがいますが,うち二人は美大・芸大での芸術学の学位取得者です。僕自身の活動も,科学とアートとほぼ半々です。あとは,「合成生物学」と呼ばれる分野の学際的な研究会の運営や,その文化的・社会的・芸術的含意に関する活動にも関与させて頂いています。
粂さんの対談では,どんな話をするのか事前に決めていません。即興的な掛け合いでよいんじゃないか,それが「時間を楽しむ」ことになるんじゃないか,と無責任に思っています。とりあえず「時間生物学」ってネーミング,狂ってるよね~,というあたりから話してみたらどうですかね>粂さん。
略歴:
・1999年 名古屋大学院理学研究科・博士後期課程修了,博士(理学)
・1997-2000学振特別研究員
・2000-2005名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻助手
・2005-2007早稲田大学理工学術院(電気・情報生命工学科)助教授
・2007~同・准教授
・2007-2011科技機構さきがけ研究員,
・2008~Metaphorest (BioAesthetics Platform)主宰
受賞:
・井上研究奨励賞(2000)
・第1回日本時間生物学会奨励賞(2003)
・第1回トヨタ・トリエンナーレ(とよた美術展)立体部門優秀賞(2004)
・文部科学大臣表彰若手科学者賞(2008)
・9th Spiral Independent Creators Festivalハワード・リクター賞(2008)
・SyntheticAesthetics Fellow(2010)
・Austria LightArt Biennial(2010)
・日本ゲノム微生物学会研究奨励賞(2011)
千葉大学大学院理学研究科物理学コース
化学反応と対流が生み出す自律振動
生命現象において、リズムを示す現象は多く知られている。しかし、生命現象以外の系でも自発的にリズムを生みだす系は広く知られている。これらの系の構成はさまざまであるが、その特徴としては、摂動に安定であることや、引き込み現象などがあげられる。そこで、本発表では、まず、化学反応や流体現象に見られる振動を紹介する。その後、ロウソクの炎の自発的な振動に着目して詳しく説明する。2本以上のロウソクを近づけて燃焼させると、炎の形は一定にならず大きくなったり小さくなったり振動する。また、振動しているロウソクの組を近づけると、その振動の位相が揃う現象も観察されている。この「ロウソク振動子」に関する実験結果および数理モデルについて述べる予定である。
略歴:
2003.3 京都大学大学院理学研究科 修士課程 修了
2004.3 京都大学大学院理学研究科 博士後期課程 中退
2004.4~2007.3 京都大学大学院理学研究科 助手
2006.3 博士(理学・京都大学)取得
2007.4~2008.2 京都大学大学院理学研究科 助教
2008.3~2010.12 千葉大学大学院理学研究科 講師
2009.10~ JSTさきがけ「数学」領域研究員(兼任)
2011.1~ 千葉大学大学院理学研究科 准教授
参考文献:
Oscillation and synchronization in the combustion of candles, H. Kitahata, J. Taguchi, M. Nagayama, T. Sakurai, Y. Ikura, A. Osa, Y. Sumino, M. Tanaka, E. Yokoyama and H. Miike, J. Phys. Chem. A, 113, 8164 - 8168 (2009).
京都大学生態学研究センター
季節を測るメカニズム -植物の野外生育地における遺伝子発現解析-
遺伝子は、元来、自然の生育地の条件下で機能しているため、遺伝子の機能を包括的に理解するためには、最終的に、自然条件下(イン・ナチュラ)での機能評価が必要である。本講演では、自然生育地特有の状況を考慮することによって、遺伝子機能がより包括的に理解されることを、気温に応答する開花遺伝子を例に紹介する。この研究で着目した生育地の状況は、「自然条件での気温の季節変化は、長期傾向にのみ現れる」という点である。自然の気温変動は複雑で、2-3週間以内の短期変動は季節を感知するという点ではむしろノイズである。そこで、シロイヌナズナ属の多年草ハクサンハタザオが持つ温度に依存して発現が調節される開花遺伝子(AhgFLC)に着目し、自然生育地での発現動態を解析した。その結果、この遺伝子が過去6週間の気温の変化傾向に応答し、短期の変動は無視することが明らかになった。このことは、植物が遺伝子の発現レベルで、長期間の温度変動を量的に記憶できることを示している。
略歴:
1994年、京都大学大学院理学研究科にて博士(理学)の学位を取得。日本学術振興会海外特別研究員として米国スミソニアン環境研究所(SERC、1994〜1996年)に留学。その後、東京都立大学大学院理学研究科(現首都大学東京)・助手(1996〜2002)、神戸大学大学院理学研究科・准教授(2002〜2008)を経て、2008年、京都大学生態学研究センター・教授に着任。野生植物を対象に分子生態学・エコゲノミクス研究を推進している。 DNA配列上の変異情報に加えて、野外サンプルを対象に遺伝子発現定量分析を行い、特に自然条件下で遺伝子の機能を評価する研究を展開中である。
参考文献:
Aikawa S, Kobayashi MJ, Satake A, Shimizu KK and Kudoh H (2010) Robust control of seasonal expression of Arabidopsis FLC gene in a fluctuating environment. Proceedings of the National Academy of Science, U.S.A. 107: 11632-11637.
熊本大学発生医学研究所
理系・文系談義? (岩崎秀雄さんとの対談)
対談ということで、何が話題になるかは、当日のお楽しみです。事前に確認したのは、岩崎さんと私が共通している点で、2人とも、いわゆる「理系」の研究だけでなく、「文系」の研究もしていることです。その内容は全く異なりますが、「研究」や「科学」についての私たちの考え方が、聴いてくださる皆さんに、何らかの参考になると、よいと思います。
略歴:
1962年 名古屋生まれ、東海中学高校
1987年 東大医学部卒、立川相互病院にて初期研修
1989年 大阪大学大学院(分子遺伝・岡山博人教授)
1992年 東京大学医学部助手(細胞情報・清水孝雄教授)
1999年 米国留学(ハーバード大学、タフツ大学客員研究員)
2002年 現職
2004年 講談社出版文化賞受賞
参考文献:
時間の分子生物学 ~時計と睡眠の遺伝子(講談社現代新書)
眠りの悩み相談室(ちくま新書)、脳神経倫理学(篠原出版新社)
Kume et al. Cell(1999), Shearman et al. Science(2000),
Morales et al. Neuron(2002), Kume et al. J. Neurosci(2005)
http://k-net.org/
お茶の水女子大学 お茶大アカデミック・プロダクション
JSTさきがけ研究員兼任/特任助教
リズム現象の数学:超入門
自然現象を理論的に取り扱う研究において、研究者はどのように数式を考え出し、それをどのように解析しているのだろうか? またその数式でいいという判断をどのような根拠から行っているのだろうか? この45分のチュートリアルでは、2つの振動子の同期現象を題材に、理論研究者の行っていることやその思想を疑似体験して頂く。ここで使う数学は漸化式のみで、予備知識としては高1レベルの数学の知識があれば十分である。このチュートリアルを通して、線形安定性・構造安定性・分岐・振動・カオスなどの重要概念をざっくりと学ぶことを目指す。
なお、心配な方は次の漸化式の解法を復習しておいてもらえると嬉しい。
これは等比数列になり、aの絶対値が1より大きいか小さいかで、定性的に異なる挙動をすることを思い出してもらいたい。
略歴:
東北大学理学部物理学科卒、京都大学大学院理学研究科博士課程修了。博士(理学)。
博士課程修了後、マックスプランク研究所物理化学部門研究員,北海道大学数学部門研究員を経て現職。
パターン形成と呼ばれる,自然の形作りの法則について数学的に研究。特に、時間の世界の形作りである、シンクロニゼーション(リズム集団の秩序形成)と、生物リズムとの関係を中心的に研究している。趣味はサッカー、クラシック音楽鑑賞など。日本物理学会若手奨励賞受賞。
参考文献:
http://www.cf.ocha.ac.jp/acpro/kori/
http://ap-www.cf.ocha.ac.jp/kori/Home.html
九州大学大学院 薬学研究院 薬剤学分野
薬の効果・副作用の日内変動を制御する分子メカニズム〜 概日時計を利用した薬物治療は実現可能か? 〜近年、概日時計機構を構成する時計遺伝子は薬物の体内動態や感受性の制御にも関与していることが明らかになりつつある。実際、トランスポーター、代謝酵素、受容体など、薬物の体内での挙動や効果・副作用を制御する分子の発現には日周リズムが認められる。消化管に発現するトランスポーターは主に栄養成分の効率的な吸収と有害物質の体内への侵入を阻止する役割を担っているが、これらの機能は概日時計の制御よって摂食を行う活動期に亢進する。また、肝臓における代謝酵素の活性にも日周リズムが認められ、その活性が上昇する時間帯において薬物の代謝能は亢進する。一方、病巣部位における薬物に対する感受性にも概日性リズムが認められるが、これらは主に標的分子の活性や発現変動によって引き起こされる。本講演では薬の効果・副作用の日内変動を制御する分子メカニズムについて概説し、体内時計の分子機構を基盤にした薬物治療の可能性について述べる。
略歴:
2000年3月 九州大学大学院薬学研究科博士課程修了
2000年4月 福岡大学薬学部生化学教室 助手
2005年12月 九州大学大学院薬学研究院製剤設計学分野 助教授
2007年4月 九州大学大学院薬学研究院薬剤学分野 准教授
参考文献:
2008年11月 第6回 日本時間生物学会学術奨励賞
1. Ohdo S., Koyanagi S., Suyama H. et al., Nature Med. Vol. 7, 354-360, 2000.
2. Koyanagi S., Kuramoto Y., et al., Cancer Res. Vol. 63, 7277-7283, 2003.
3. Nakagawa H., Koyanagi S., et al., Cancer Res. Vol. 64, 8328-8333, 2004.
4. Murakami et al., Gastroenterology Vol. 135, 1636-1644, 2008.
5. Matsunaga et al., Hepatology Vol. 48, 240-251, 2008.
6. Okazaki et al., Cancer Res. Vol. 70, 6238-6246, 2010.
琉球大学理学部
概潮汐リズム:マングローブスズを例に
潮汐サイクルとは潮の干満のことであり,満潮から次の満潮までの時間間隔は約12.4時間となっている.干潟や浅海域に生息する生物が,恒常条件下で野外の潮汐サイクルに対応した約12.4時間周期の自由継続リズムを示した場合,それを概潮汐リズムという.本発表では,概潮汐リズムの一般的な解説も含めながら,マングローブ林にのみ生息するコオロギの一種マングローブスズの概潮汐リズムについてお話する.マングローブスズの歩行活動は,約12.6時間周期の概潮汐リズムを示し,休息期は野外の満潮の頃に対応していた.また,この概潮汐リズムは,干満を模した干出・浸水サイクルに同調し,主観的な干潮(活動期)の前半に浸水刺激を与えると位相の後退が,後半に与えると位相の前進が見られた.一方で,主観的な満潮(休息期)に浸水刺激を与えても大きな位相変位は見られなかった.得られた位相反応曲線は概日時計でみられる1型に似ており,概日時計と性質の似た体内時計の存在が示唆された.最後に,マングローブスズにおける概潮汐リズムの分子機構についての研究も紹介したい.
略歴:
1999年3月 大阪市立大学理学部卒業
2004年3月 京都大学大学院理学研究科博士課程修了,博士(理学)
2004年4月 京都大学理学研究科 21世紀COE教務補佐員
2005年4月 京都大学理学研究科 リサーチ・フェロー研究員
2005年12月 琉球大学理学部助手
2007年4月 琉球大学理学部助教 現在に至る
大阪大学大学院生命機能研究科
個体機能学講座 発生遺伝学グループ
マウス胚左右軸の決定におけるノード繊毛運動の協調性
私達の体は外から見ると左右対称なかたちをしていますが、中の臓器の形や配置は左右で非対称になっています。ヒトに最も近いモデル動物であるマウスの胚では受精後8日目に、もともと左右対称だった形が非対称に変化することが知られています。この時期、体の真ん中に現れるノードという組織にある200本の小さな繊毛(長さ2-3 μmの微小管の束)が時計回りに回転することで左向きの流れを発生させ、これをきっかけに体の左右で遺伝子が非対称に発現すると考えられています。
私の研究ではこの繊毛の回転運動がどのようにして左向きの流れを効率よく発生させることができるのかを繊毛運動の協調性(Synchronization)という観点から実験と数理モデルにより明らかにしようとしています。細胞レベルのリズム現象とその生理的な意義に関してたくさんの議論ができればと思います。
略歴:
・平成15年3月東京大学工学部システム創成学科
・平成17年3月東京大学大学院工学系研究科システム量子工学専攻修士課程修了
・平成19年9月東京大学大学院工学系研究科システム量子工学専攻博士課程修了 博士(工学)
・平成17年4月-平成20年3月 日本学術振興会特別研究員(DC1)
・平成20年4月-平成23年3月 日本学術振興会特別研究員(PD)
・平成23年4月 大阪大学生命機能研究科 研究員
大阪大学大学院歯学研究科 口腔時間生物学研究室
サーカディアンペースメーカー・視交叉上核
いわゆる「時計遺伝子」の発現リズムをマーカーとして、身体中あらゆる細胞にサーカディアン時計機構が備わっており振動体として機能することが明らかになった現在でも、「視交叉上核」がヒトをはじめとする哺乳類の生理機能や行動を制御する「ペースメーカー」であることに疑いの余地はない。体内時計・視交叉上核の発見から同定に至るユニークな手法を駆使した一連の研究は、動物個体レベルを制御する神経回路メカニズムを解明する上で大変示唆に富むものである。古典的ともいわれるげっ歯類を用いた輪回し行動実験から得られるサーカディアンリズムと視交叉上核のリズム出力は、驚くほど正確で、美しさすら感じる。本講演では、多数のサーカディアン振動体神経細胞集団がいかにして視交叉上核を構成し、ペースメーカーとして機能するのかについて述べる。
略歴:
・1997 北海道大学歯学部卒業
・2002 北海道大学大学院歯学研究科博士課程修了,博士(歯学)
・2002-2003バージニア大学生物リズムセンター 博士研究員
・2003-2006北海道大学病院歯科診療センター 助手
・2006-2008大阪バイオサイエンス研究所 学振特別研究員(PD)
・2008~ 大阪大学大学院歯学研究科 テニュアトラック准教授
・2010~ JSTさきがけ研究員兼任
受賞:
・第7回日本時間生物学会奨励賞(2009)
北海道大学大学院医学研究科
生物時計と原発安全神話
生物時計の研究で面白いのは、リズム現象が数学や物理学の言葉で語れることである。複雑な生命現象を数理で理解することは生物学の夢である。古今卓越した生物時計研究者は、自らが数学物理の素養をもっているか、協同研究者に優れた物理学者や数学者がいる。これまで、生物時計に関する数理モデルが数多く作られてきた。あるものは忘れ去られ、あるものは未だ引用されている。数理モデルは自然観察や実験結果を合理的に説明する仮説であり、それ自身検証されるべき対象である。優れたモデルには必ず検証可能な予言(prediction)が含まれている。その検証作業が実験であり、実験結果によってモデルは否定されるか、事実と矛盾しないという形で生き残る。私が長年研究してきたヒトの睡眠覚醒リズムを説明するものとして、2プロセス(過程)モデルがある。このモデルは検証されることなく多くの研究者の支持を得てきた。仮説に疑問を差し挟む論文著者は、信じ込んだ査読者を説得するのに容易でない。原発の安全神話と似てなくもない。
略歴:
・昭和40年 3月25日 札幌市立旭ヶ丘高等学校卒業
・同 46年 3月25日 北海道大学医学部卒業
・同 48年 4月 1日 北海道大学大学院医学研究科博士課程入学
・同 52年 3月25日 同上修了
・同 52年 4月 1日 文部教官・助手(北海道大学・医学部)
・同 55年 2月 1日 文部教官・講師(北海道大学・医学部)
・同 57年 5月 1日 文部教官・助教授(北海道大学・医学部)
・平成 4年 1月 1日 文部教官・教授(北海道大学・医学部)
・同 17年 4月 1日 北海道大学医学研究科・研究科長、医学部
・同 21年 4月 1日 北海道大学脳科学研究教育センター・センター長(~現在)
・同 22年 4月 1日 北海道大学大学院医学研究科・特任教授 現在に至る
参考文献:
本間研一他著「生体リズムの研究」北海道大学図書刊行会,札幌、1989年
九州大学大学院農学研究院 資源生物科学部門
季節の波に上手くのるには?
地球上のほとんど全ての生命体にとって、季節の変化は宿命であろう。我々人間は、冷暖房機器や衣服などにより厳しい季節を凌いでいるが、野生生物が選択した道は、「体そのものの仕組みを適応させてしまう」という驚くべき方法により季節の波に上手くのることであった。近年の分子生物学の発展によって、脊椎動物の光周性反応を制御する緻密な分子機構や、Natural knockoutによる環境適応などが解明されてきた。これら生物の叡智から、我々は何を学ぶことができるだろうか? 人間は季節繁殖性を失ったとはいえ、情動やストレス、代謝など、現代社会における重要な性質は季節に左右される。避けられない季節の波に上手くのりつつ、かつ健康的に乗り越えるためのヒントが、光周性研究に隠されているのではなかろうか? 本講演では、これまで解明されてきた脊椎動物の光周性機構について概説するとともに、新たな視点からの取り組みを紹介する。
略歴:
1999年 3月 北海道大学理学部生物科学科 卒業
2003年12月 名古屋大学大学院生命農学研究科 博士(農学)
2004年 1月 名古屋大学大学院生命農学研究科 博士研究員
2005年11月 日本学術振興会海外特別研究員(ドイツ、ゲーテ大学)
2007年11月 ゲーテ大学医学部 博士研究員
2009年12月 九州大学大学院農学研究院 准教授
2009年 欧州時間生物学会若手研究者奨励賞
2010年 日本時間生物学会学術奨励賞
参考文献:
1. Yasuo S, Yoshimura T, Ebihara S, Korf HW. Melatonin transmits photoperiodic signals through the MT1 melatonin receptor. J Neurosci 29: 2885-2889 (2009)
2. Nakao N, Ono H, Yamamura T, Anraku T, Takagi T, Higashi K, Yasuo S, Katou Y, Kageyama S, Uno Y, Kasukawa T, Iigo M, Sharp PJ, Iwasawa A, Suzuki Y, Sugano S, Niimi T, Mizutani M, Namikawa T, Ebihara T, Ueda HR, Yoshimura T. Thyrotrophin in the pars tuberalis triggers photoperiodic response. Nature 452: 317-322 (2008)
3. Yoshimura T, Yasuo S, Watanabe M, Iigo M, Yamamura T, Hirunagi K, Ebihara S. Light-induced hormone conversion of T4 to T3 regulates photoperiodic response of gonads in birds. Nature 426: 178-181 (2003)
4. Yasuo S, Korf HW. The hypophysial pars tuberalis transduces photoperiodic signals via multiple pathways and messenger molecules. Gen Comp Endocrinol 172: 15-22 (2011) (review)