Engine Height(エンジンハイト):
ジャックプレートのボルトを調節して、エンジンの位置を容易に上下に移動させることができます。
一般論としてエンジンが低い位置にあると乗りやすくなります。 高くするとスピードが出ます。 高くしすぎるとスピードは落ち、船は大暴れし、冷却水の取り込みも悪くなります。
エンジンの高さはパッドとギアケースの中心線(=プロペラシャフトの中心線と同じ)の差を目安にします。 「パッド」とは船底のもっとも低い位置を指します。
例えば、「2 inches below pad」だとギアケースの中心線がパッドから2インチ(=約5cm)下に固定されていることを意味します。 例外はたくさんありますが、多くのトライトンはパッドから3インチ下、ブレットの場合2インチ上のあたりが最も乗りやすくスピードが出ます。
船体、馬力、ギアケース、プロペラなど変動要因はいろいろとあります。 管理人がテストをするときは低めの位置から1~2センチ単位で上に上げながら試します。 ①最高速度、②水圧、③乗りやすさから総合的にベストな位置を探していきます。
油圧ジャックがついているとスイッチひとつで上下させることができます。 荒れた水面では低めに、べたなぎのときは高めに移動させて臨機応変に対応することができます。
Set Back(セットバック):
ジャックプレートの長さを意味します。
バスボートの世界ではセットバックがある(=セットバックが長い)ほどスピードが出て、やる気マンマンといったイメージが浸透しています。 実際、セットバックが長いほうが最高スピードが伸びることがあります。 その反面、船が暴れやすくなってしまいます。
そういった意味もあり、セットバックを設けるといい意味で「乗り手を選ぶ船」が仕上がります。 セットバックを設けるほど、テコの原理で船外機がトランサムにかける負担が二乗分に増大します。 セットバックがありすぎると挙動も激しくなります。 つまり暴れやすくなります。
理想的な船はセットバックを設けなくてもスピードが出るように設計することでしょう。 アリソンSS2000は6インチ程度のセットバックで最もスピードが出ます。
ところでセットバックを長くする理由とはなんでしょう。
まずは重要なポイントです:
一般的なバスボではバウが上を向いた姿勢で走るともっともスピードがでます。 低すぎてもダメ、高すぎてもダメ、船の形状とエンジンの組み合わせに対して理想的なバウの高さ(姿勢)があります。
よってスピードを出すためにはなんらかの方法でバウを持ち上げる必要があります。 理想的な姿勢における船体と水面との角度をここでは「スイートスポット」と称することにします。
まずは上の図をご覧ください:
ここではセットバックがない場合を示しています。 「スイートスポット」までバウを上げるには、船外機のトリム(船外機の角度)を上げて、エンジンの推力を使ってバウを持ち上げることになります。 つまりエンジンの推力の一部が「バウを上げる力」に使われてしまい、「前に進む力」が犠牲になっていまうのです。
次に上の図をご覧ください:
セットバックを設けて、船外機を船体から遠ざけると、テコの作用でバウが自然と持ち上がります。 よってトリムをそれほど上げなくても「スイートスポット」までバウを持ち上げることができます。 これにより、エンジンの推力のうち「バウを上げる力」に割り当てられるエネルギーを大幅に軽減することができます。 結果として「前に進む力」が増大するので最高速度が伸びるのです。
「スイートスポット」における船体の角度と「エンジンの推力」が定数なので、いかに「セットバック」、「トリム角度」(そしてエンジンハイト、プロペラ、重量配分などなど)といった変数をバランスよくいじってエンジンの推力のすべてが「前に進む力」だけに仕向けられるようにするか、ということなのです。
ご理解いただけましたでしょうか。 とても単純で明快な理論でしょ? まぁ実際はなかなか理屈どおりにはいかないのですが・・・
最後になりますが、念のため3つほど補足します。
その1:
セットバックが長くなった分、「スイートスポット」ではプロペラは深く水没してしまいます。 なのでエンジンハイトを上げてプロペラを理想的な高さに調整しなおす必要があります。
その2:
船がすごく浮く、と評判のペラがあります。 このようなペラはカップが大きくとられていることが多いです。 カップはバウを持ち上げる効果があるので「スイートスポット」を実現することができるのです。 カップの深いペラでトップスピードが伸びた場合、それはそれまでに使用していたペラではバウを「スイートスポット」にまで持ち上げることができなかったことになります。
※「カップ」についてはプロペラコーナをご覧ください。
その3:
仮にトリムを少しでも上げると船が大暴れしてしまうとしたら、そのセッティングではセットバックが長すぎる可能性があります。 ペラのカップが深すぎるなど他の理由もいくつか考えられます。 それはセットバックを短くするとか、カップの小さいペラに交換するとか、トライ・アンド・エラーでいろいろと試せば必ず改善できるはずです。
まぁこんな感じです。 なるべくわかりやすく解説したつもりですが、セッティングするときの参考にしていただければ幸いです。