画家の言葉①

「私風景」を描く中で

現代に於いて、絵画表現は多種多様で、特に「油絵」と言うと何だか古めかしく聞こえてしまう感じがします。

そんな感触を最近感じながらも、とにかく40年余り油絵なるものと関わってきましたが、私自身の制作方法は対して変わらず今日に至っています。

日々めまぐるしく変貌していく現代社会に生きる一人として、もっと違った手段で絵画を表現すべきではないか、今までとは異なった鋭い切り口で表現しなければ…。

と言う問いかけはいつも自分の中に持ち続けてはいますが、一方でキャンバスに油絵具をつけていくことを愚直にくり返し続けて描くと言う行為が自分には一番合っていて、

中々そこから出られずにいます。

ものを見、その形を借りて描く具体的表現もあいかわらず以前から続いています。

ただ「何を描くのか」という制作のテーマだけは、いろいろと変遷してきました。過去を振り返ってみても、今までこのことを見つける為に描いてきたような気がします。

初めてヨーロッパに旅してスペインで出会ったフラメンコのダンサー達、ヨーロッパの風景、女性群像と続き、

今は自分の周囲をとりまく日常生活空間にある雑多であり無機質なものたちを自分なりに構成して描いています。

この雑多な様々なモチーフたちが私の室内空間に溢れ出した情景は、あたかもこの混沌とした複雑な現代社会を見るように思います。

それらは私自身の心の世界の動揺と混乱をも表しているかのようです。私はそこに自分なりの秩序を作り出し、そしてそれを一つの「風景」として捉えたい。

その「風景」を描くことは、日常それらの空間に身を置く私にとって、現実と向き合い対話するという意味で必然です。

その結果、自分の油絵の表現と噛み合って新たな非現実的な空間が作られ、そこにリアリティーが表現できればと思っています。

今回、思いもかけず損保ジャパン賞という大きな賞を頂き、制作していく上で大きな励みとなりました。

今後の自分の作品がこの受賞に恥じない内容になるようこれからも油絵の制作に精進してまいりたいと思っています。