母、祖母、愛犬トトと共に比較的普通な生活を送っていたルートヴィッヒ。
祖母は、認知症を患っており、ルートヴィッヒのことを実の妹、「ドロシー」だと思い込んでいる。
その日も、いつも通り学校から帰って来ると、祖母が迎え出て、彼を見るなり、「ドロシー、お帰りなさい」と微笑んだ。
一度は訂正をして、部屋に戻り、描き途中だった絵の続きを描き始め、夕方になった頃に、トトの散歩に出た。
少し日の伸びた空を見上げると、ふいに風が強く噴いてきたのを感じる。
その途端、トトが大きな声で吠え出した。 それに気づいて視線を前に戻すと、突然、大きな竜巻が現れ、こちらに迫ってきていた。
吠え続けるトトを抱き上げ、咄嗟に逃げ出すが、あっと言う間に竜巻に巻き込まれ、何も分からぬまま意識も途絶えてしまった。
小川の流れる音に目を覚まして起き上がると、見たこともない程美しい森だった。
トトの姿も見当たらず、何処まで飛ばされてしまったのかも分からず、途方に暮れていると、目の前を蛍のようなぼんやりした光が現れた。
蛍にしては大きいその光の正体は、妖精―ティンカー・ベルだった。
彼女は、妖精の存在に我が目を疑っているルートヴィッヒに、この世界―ネバーランドのことや、彼の状況を話し始めた。
ルートヴィッヒの頭には、ほとんどの内容が入ってこなかったが、彼女に敵意がないことが分かり、とにかく家へ帰りたいことを伝える。
そこで、ティンカー・ベルは、魔法使いのいる国―オズへ向かい、願いを叶えてもらうことを提案する。
ティンカー・ベルの案内でオズに辿り着いたルートヴィッヒだが、到着するなり、魔法使いのいる宮殿前には物凄い行列が出来ていた。
列に並んでいる人に、いつ魔法使いに会えるか聞くと、女性、幼い子ども、病人の願いなら優先してもらえるが、通常は数ヶ月待つのが普通だと聞いた。
そこで、ティンカー・ベルはルートヴィッヒに女の子の格好をするよう提案して建物の影に連れていった。
拒否を続けていたルートヴィッヒだが、ティンカー・ベルは構わず彼の真上を飛びまわり、妖精の粉をまぶした。
その瞬間、ルートヴィッヒの服装は勿論、頭にもウィッグが被せられ、抵抗の暇もなく女の子の格好をさせられてしまった。
魔法使いに会うまで、服を返してもらえそうにないので、仕方なく女の子の格好のまま、魔法使いのいる宮殿へ向かった。
宮殿に辿り着いたドロシーだが、そこでも女性や幼い子ども、病人などが列を成し、結局すぐには会えそうにない。
もう一度計画を練り直そうと、ティンカー・ベルに相談しようとしたが、気づいたときには、彼女は姿を消していた。
ティンカー・ベルを捜して宮殿内をウロウロしていると、宮殿の中庭に出た。
エメラルドと花々で彩られたその庭で、少女―ウェンディと出会った。
天使のような可愛らしさにルートヴィッヒは彼女に一目惚れするが、
今は女の子の格好をしているため、恥ずかしさから正体は明かせず、名前を問われた際に、咄嗟に「ドロシー」と名乗った。
魔法使いに願いを叶えてもらいたい話をすると、ウェンディが案内してくれると言い、彼女の後についていき、ようやく魔法使い―オズワルドと会えた。
ドロシーは、トトの行方と家へ帰る方法を尋ねたが、オズワルドは、魔女に杖を奪われ、魔法の力が半減してしまい、
一日に使えるエネルギーが限られてしまい、そのせいで願いを叶えたい人たちが溢れてしまっていた。
ドロシーの願いを叶えるには、規模が大きいため、杖のないオズワルドの力では難しかった。
現在、兵士たちが魔女を退治しに行っているため、待っているよう言われたので、仕方なくそれに従い、ウェンディと共に宮殿で数日過ごした。
ある日、ウェンディと中庭で話をしていると、突如空が曇り、二人の間に雷が落ちる。
何かに吹き飛ばされたドロシーが顔を上げると、目の前に大きな獣の姿をした何かが、ウェンディを持ち上げていた。
咄嗟にウェンディを呼んで、駆け寄ろうとしたが、獣は手をかざし、電撃を飛ばして攻撃してきた。
思わず足を止めて固まってしまったとき、騎士―ジークフリートが現れ、助けられた。
しかし、その間に獣はウェンディを連れて姿を消してしまった。
ジークフリートは、ドロシーに怪我がないのを確認すると、オズワルドの元へ、状況を説明しに行くため、一緒に来て欲しいと言われ、ついていった。
話を聞いていると、ウェンディを浚った獣は、悪魔で、その悪魔はオズワルドの杖を奪った魔女の手下だと分かった。
魔女の討伐に行くというジークフリートに、ドロシーも強引についていくことにした。
魔女の屋敷に着き、奥の広間へ向かうと、祭壇のようなものが置かれ、その上にはウェンディの姿があった。
彼女の前では、大きな珠が怪しく輝いている。
ウェンディの元へ駆け寄ろうとすると、祭壇の前に、魔女が現れ攻撃を仕掛けてきた。
ジークフリートと魔女が戦闘を始めた中、その隙に、祭壇に横たわるウェンディを助けようと、ドロシーが近寄る。
するとそのとき、台座の奥にあった大きな珠が光だし、そこに写った自分を見た直後、ふとドロシーの目の前にある少年が現れた。
よく見ると、自分も彼も身体が浮いている。
ドロシーと同じ年頃の少年は、彼女の本当の名前と同じ、「ルートヴィッヒ」と名乗った。
しかし、ルートヴィッヒは、君はドロシーだと言って嘲笑う。
ドロシーが答える前に、彼に目覚める時間だと言われ制され、続けて棚にキャンバスがあるから好きに使うと良いと言われ、目が覚めた。
目が覚めると、古い小屋の中にいた。
魔女の屋敷とは違う、小汚い小屋で、ドロシーの周りには、絵が丁寧に描かれていたり、乱暴に描かれていたりしている紙が散らばっている。
起き上がってきょろきょろしていると、背後からかかし(?)のヴラドが話しかけてきた。
驚きのあまり口を開けているドロシーを余所に、ヴラドは今の彼女の状況を話し始めた。
ドロシーは目覚めたときには女の子の身体で、ルートヴィッヒという悪魔の少年に棲まれたらしい。
意味がよく分からなかったが、立ち上がってみると身長が少し縮み、気持ち程度に胸は膨らみ、
長いお下げ髪はすっかり地毛になっていて、女の子の身体になっていることは理解せざるを得なかった。
原因は、悪魔の少年に棲まれたせいなのか、別に原因があるのかは分からないが、魔女が鍵を握っていると推測される。
また、悪魔の力によって、ドロシーは時折ルートヴィッヒに意識を支配されることがあると、ヴラドは言う。
それは、ルートヴィッヒの意思ではなく、ドロシー自身の意思が働くときか、もしくは意図せず意識を失ったとき、
人では耐えられない魔の力を受けたときなどに彼がドロシーの身体を乗っ取るらしい。
一体何からショックを受けたら良いかも分からないまま、様々な災難が一気に降りかかっているが、ドロシーは、一度考えることをやめ、一旦オズへ戻ることにした。
ルートヴィッヒから聞いた通り、棚の中にあった厚いキャンバスを手に取り、ドロシーに興味を示しているらしいヴラドがついてくる中、小屋を出て歩き出した。
しばらく歩いていると、木の上から、ライオン(?)のレーヴェが現れる。
こちらを睨んで唸っているレーヴェに、ドロシーが慌てていると、ヴラドに目を隠され、悪魔に棲まわれるとはこういうことだ、と耳元で囁かれた。
そのとき、一瞬眩暈がしたかと思うと、次の瞬間、自分の意思とは違う行動を身体が取り始めた。
ドロシーは、自分でも判断が追いつかないまま、飛び掛ってきたレーヴェをあっさり弾き返した。
急に力が抜けて、その場に膝から崩れたドロシーが次に顔を上げると、傷つき、倒れているレーヴェがいた。
気を失っているレーヴェを快方すると、彼は意識を取り戻したので、ドロシーたちがその場を去って先へ行こうとすると、後からレーヴェもついてくる。
ドロシーに懐いたらしい彼も一緒に連れてオズに向かう道中、三人の前にガリヴァーが現れ、悪魔を2体連れているドロシーを手練れと勘違いし、勝負を挑んでくる。
ドロシーは、事情を説明して何とかお引取り願おうと思ったが、ルートヴィッヒを呼び起こすのに面白味を感じたヴラドが、調子に乗り、
再びドロシーは意に反した勝負の末、ガリヴァーを打ち倒す。
ドロシーの強さに感服したガリヴァーは、彼女に勝手に忠誠を誓い、ついてくることになった。
ぞろぞろと4人でオズまで戻ってきたドロシーは、そこで、ようやくジークフリートとウェンディと再会できた。
再びオズワルドに会うも、結局杖は取り返せておらず、魔女の行方も分からなくなってしまった。
そこで、ネバーネバーツリーのピーター・パンの存在を聞かされる。
彼もまた、ネバーランドの隅々を知る存在で、魔法が使えるらしいのだが、現在、ピーター・パンは部屋に篭ったまま出てこず、
彼の力で叶っていた子どもたちの夢は失われ、悪魔がはびこっているという。
魔女も、子どもたちを狙って襲っていると聞いた。
ジークフリートは引き続き魔女退治に、ドロシーはピーター・パンに会いに、ネバーネバーツリーに向かう。
元々ツリーにいたというウェンディの案内もあり、ツリーに辿り着くこと自体は容易かった。
しかし、ツリーは話に聞いていた通り、悪魔がやりたい放題暴れまわっていた。
ピーター・パンがいないロストチルドレンたちが失った夢を取り戻す手伝いをするため、ドロシーたちは、魔女や悪魔と戦うことになった。
ピーター・パンの部屋の前で彼に声をかけるが反応がない。
扉を開けることも出来ず、一度諦めてツリーを下っていくと、一軒の可愛らしいカフェを見つけた。
声を張って喉も渇いたことだし、ドロシー一行は店に入ったが、店内は照明が切れているのか、とても暗かった。
そんな中、扉が開く音が聞こえて、ウェイトレスの少女、グレーテルが姿を現した。
彼女に訳を聞くと、スイーツカフェを営んでいる兄のヘンゼルと妹のグレーテルは、
ピーター・パンが姿を隠してしまった影響で、お菓子作りができなくなってしまったという。
大好きな、スイーツをイメージした制服も毎日替えていたのに、それもできなくなり、
いつも子どもたちの笑顔で溢れていた店内には、兄妹の姿以外消えてしまった。
ヘンゼルは、キッチンで毎日ぼんやりしている様子で、グレーテルが声をかけても返答はないに等しい。
ドロシーはまず、二人が夢を取り戻す手助けをすることにした。
ヘンゼルとグレーテルに洋服をあげた話は、すぐにツリーの子どもたちに広まった。
噂を聞きつけた子どもたちは、ドロシーに服やおもちゃなど、欲しいものをせがむようになった。
「順番にみんなの家を回るから」と約束して、ドロシーたちは子どもたちの家を順番に見ていくことになった。
その最中、チルチルとミチル兄妹と出会う。
常に、兄チルチルは不在で、ミチルだけがドロシーたちを出迎えてくれた。
チルチルについて聞くと、彼は青い鳥を探しに森へ行ってしまっていると言う。
青い鳥が見つからないと、常に不幸が続くのだと思い込んでいるらしい。
ドロシーは、チルチルが早くミチルの待っている家へ帰るよう促しながら、チルチルの青い鳥探しに協力することにした。