Students
世界遺産の沼へようこそ!
[前編]
2023年11月のとある日…
世界遺産の“沼”にハマってしまった5人の生徒たちが、図書館で熱く語り合った!なぜ彼女たちは世界遺産が好きなのか?
今回は、世界遺産に注ぐ情熱、そして哲学に迫ります!
※記事内に登場する世界遺産名から、UNESCOの世界遺産紹介ページへ飛ぶことができます。
聞き手:社会科 北宮先生/司書教諭 新美先生
2人のプロフィールは一番下へ
💡清泉女学院の世界遺産学習とは?
また、年に2回、校内で文部科学省後援の「世界遺産検定」を受検することができ、これまでに多くの生徒が級を取得しています。さらに、NPO法人世界遺産アカデミーが主催する「世界遺産×SDGsチャレンジ!」コンテストにも挑戦しており、毎年複数の生徒が入賞しています。
※「世界遺産検定」の詳細は後編へ
💡世界遺産を学ぶということ
つまり、世界遺産を学ぶことは、生物・地学や物理・数学などの理系的要素から、地理・歴史や言語・文化などの文系的要素まで、非常に幅広い分野へ関心の幅を広げることに繋がります。そして何よりも、様々な世界遺産に触れることで、多文化を理解し受容する・尊重する精神が育まれると、清泉では考えています。
北宮先生:今日は座談会にお集まりいただき、ありがとうございます。楽しみにしていたんですよ~この企画!みなさん世界遺産への愛を、存分に語りましょう!
新美先生:ではさっそく、まずは世界遺産の沼にハマってしまったきっかけを教えてください。
高1 Kさん(左)
普段はバレーボールに情熱を注ぐ体育会系。世界遺産の探究や検定にも力を入れ、現在2級を取得。世界遺産アカデミー主催「世界遺産×SDGsコンテスト2022」のプレゼン部門でSさんとともに最優秀賞を受賞。推しの世界遺産は、オーストリアの『シェーンブルン宮殿と庭園』。
高1 Sさん(右)
清泉イチの世界遺産博士。現在、世界遺産検定最上級のマイスター・世界遺産アカデミー認定講師。「世界遺産×SDGsコンテスト2022」のプレゼン部門でKさんと最優秀賞を受賞(小論文部門も優秀賞)。推しの世界遺産は、『ル・コルビュジエの建築作品:近代建築運動への顕著な貢献』。
Kさん:きっかけは、中1のとき観ていた、北宮先生の「目からウロコの世界遺産」という配信動画ですね。
北宮先生:ホントかぁ(照)
Kさん:コロナの休校中に配信されてたその動画で、面白いなあと思ったのがきっかけです。あとは、Sさんに「世界遺産検定やらない?」と誘われました…なかば無理やり(笑)
Sさん:私もKさんと同じで、「目からウロコの世界遺産」がきっかけでした。その動画の中で北宮先生が、かつての先輩で中1の冬に世界遺産検定2級を取った方がいる、とおっしゃていたのを聞いて、じゃあもっと早く2級を取りたい!と火が付きました。
北宮先生:たしかに、Sさんは中1の夏休み明けにはもう3級まで受かっていましたね。
Sさん:でも本格的にハマりだしたのは、2級を取得した後に1級のための勉強をしていた頃です。並行して取り組んでいた英語のスピーチコンテストでも世界遺産をテーマに取り上げていたら、どんどんハマっていきました!
💡「目からウロコの世界遺産」とは?
中2 Rさん
委員会や有志団体などさまざまな活動に力を入れながら、世界遺産にも強い関心をもつ。中学1年次の世界遺産探究では、学年代表として発表した経歴がある。推しの世界遺産は、ヨルダンの『ワディ・ラム保護地域』。
Rさん:私は、小学校の頃は「世界遺産」と聞くととても難しいイメージがあって。自分とは遠い存在だったのですが、中1のときに、北宮先生のピラミッドのすごさを熱弁する授業を聞いて…
北宮先生:え、私そんなに熱く語ってた!?
一同:(笑)
Rさん:世界遺産にそこまでハマっている人が身近にいたことで、世界遺産を知ると何か面白いことがあるのかな~って思って、検定を受けてみました。
北宮先生:なるほど(笑)。小学生の頃は、世界遺産というものがあることは知っていたんですよね?
Rさん:まあ、一応…。日本の世界遺産は入試のために覚えたけど、そのときは全然興味なかったですね。
北宮先生:たしかに、政令指定都市みたいに覚えなきゃいけない対象として中学受験でやるかも。
Kさん:そうなんですか!?
Rさん:受験で…覚えましたね。
Kさん:私は2科目(国・算)入試だったから覚えてない!
北宮先生:それはそれで良いじゃん(笑)。そしたら世界遺産が「覚えるもの」ではなく、「楽しく触れるもの」として入ってきますよね。
高1 Tさん
化学部に所属し、日々実験に勤しむ。理科だけでなく、地理や歴史など幅広い知識と関心をもつ。世界遺産検定は未取得だが、今回は座談会のテーマに誘われ、オブザーバーとして参戦。推しの世界遺産は、ノルウェーの『ベルゲンのブリッゲン地区』。
中3 Oさん
Tさんとは化学部の先輩・後輩の仲。日本語・英語のバイリンガルで、清泉模擬国連大会の議長を務める。世界各地の旅の経験も豊富。現在世界遺産検定3級を取得。推しの世界遺産は、シンガポールの『シンガポール植物園』。
Tさん:私は、父が地理好きなんですよね。それで、小学生のときに色々なところに連れていってもらいました。初めて行った世界遺産がたぶん『姫路城』なんです。それが本当に美しくて! …で、美しい建物やカワイイ建物にハマったんです。でもそこから先、世界遺産というものには触れてこなかったんですけど…
北宮先生:そんなわけで、今日、Tさんはオブザーバーとして来てくれています。参加してくれて嬉しいな~!
Tさん:今回、Sさんがこういう座談会があることを紹介してくれて、面白そうだなと思って参加しました。みんなの話を聞いていて、たぶんもうそろそろ沼に落ちる気がします。今はまだ世界遺産の知識がないので、いずれ検定を受けて知っていきたいと思います!
一同:お~(拍手)
Oさん:私は、小5のときにイギリスのエディンバラに行ったんですけど、まるで『ハリー・ポッター』の世界みたいで面白いなあ!と。本当に、中世そのままの街並みが広がっていて感動しました。
Tさん:いいな~イギリスに行ったことあるの、いいな~!
Oさん:でも、帰ってきてからエディンバラが世界遺産だったことを知ったんです(笑)。そして中学生になって、中1の地理の授業で世界遺産検定3級のテキストをもらったので、せっかくだから受検してみようと思って受けました。
新美先生:やっぱり、知らずに行ってみて感動するものって、たいてい世界遺産ですよね。
すごいから世界遺産なのか、世界遺産だからすごいのか?
新美先生:すごいから世界遺産なんですか?それとも、世界遺産だからすごいんですか?
一同:う~ん…
新美先生:すみません、わけ分からないことを聞いてしまって…
北宮先生:いや、大事なポイントですよね。私もよく分からないんですけど、そこにいる人たちが、なんとしてでも残して「後世の人たちにも見てもらいたい!知ってもらいたい!」と思う、それだけの価値はあるものなんでしょうね。その人たちのアイデンティティーや魂が存在しているというか…難しいですね!
Tさん:さっそく話が深い…
Kさん:でも、中には「これホントに世界遺産なの?」っていうものもありますよね。検定のテキスト1ページに、写真なしで3件ぐらい載っちゃっているヤツとか(笑)。
Sさん:あるある!
・・・みんなでテキストを開いて確認
Tさん:わ~!一番下のなに!? 名前長っ!
Kさん:『ポレチュ歴史地区にあるエウフラシウス聖堂の司教関連建造物群』だよ。
北宮先生:名前からしてすごそうなのってあるよね。
Sさん:『グアラニのイエズス会』…とか(笑)
※正式名称は、『グアラニのイエズス会布教施設群:サン・イグナシオ・ミニ、サンタ・アナ、ヌエストラ・セニョーラ・デ・ロレト、サンタ・マリア・マヨール(アルゼンチン側)、サン・ミゲル・ダス・ミソンイス(ブラジル側)』…なんと、約100文字!!
Tさん:いやいや…これは長すぎるでしょ…
十人十色! 人によって世界遺産の専門ジャンル(沼)が違う!
新美先生:世界遺産のどんなジャンルが推しですか?
Kさん:城と宮殿!豪華絢爛で庭が広くて…というのが好きです!
新美先生:日本のお城はその中に入るんですか?
Kさん:いや~海外のCastle系…ですね。まあでも、宮殿ではないけれど金閣は合格です。
北宮先生:あ、合格なんだ(笑)
Sさん:私はジャンルというと難しいのですが…「世界遺産は人類共通の遺産」って概念があるじゃないですか。みんな価値観が違うけれど、すべての人が「素晴らしい」と思えるような世界にしたい、そのために世界遺産をみんなで守っていこう、という考え方が素敵だな~!と。
北宮先生:これは言うなれば、理念オタクってところですかね。
Sさん:あとは、私自身、理系に進むか文系に進むかとても迷ったんですけれど、世界遺産というのは文理融合的な側面を持っているというのが良いな、と思っています。
Tさん:理系の側面もあるの?
Sさん:例えば、自然遺産だったら生物や地学とか、文化遺産だったら建築技法とか。
Tさん:そっか! 私は…なんだろうなあ。色々と考えたんですが、もしかしたら「昔の人の生活が感じられるもの」が好きなのかな、と思います。昔の人の生活って、かつてそこに存在していたはずなのに、なぜか未知の世界を見ている気分になりませんか?
一同:なるほど~
Oさん:私は、建築物とか自然とか特定のものはないんですけれど、旅行することが多くて。そのときに「あ、これ綺麗だな~」と思って、帰ってから調べてみると世界遺産であることが多いんです。
新美先生:あら、お目が高いわね(笑)
北宮先生:鉄オタでいう、「撮り鉄」ならぬ「見る鉄」の部類ですね。行って本物を見る…でも、それって一番大事なことだよね。
Oさん:もしかしたら、うちの父も地理や歴史が好きなので、実は狙って連れていかれていて、それに私が気づいていないだけかも…
Rさん:私は、人の手が入ったものではなく、自然がつくり出したものが好きです!例えば『イエローストーン国立公園』を見ていると、こんな色を自然が生み出せるなんて!!って感動します。
Kさん:わかる~!私の部屋のカレンダーが世界遺産なんだけど、10月が『イエローストーン国立公園』で。あまりに綺麗だから10月から先がめくれないんですよ!
※この談話会は11月に実施
新美先生:めくられてない11月に何が写っているか気になりますね(笑)
北宮先生:新美先生はたしか巨石オタクでしたよね?
新美先生:うん。
Tさん:きょせき?
新美先生:でっかい石ね。例えば、イギリスのストーンヘンジとかあんなに重いのに、昔の人がどこからか運んできて立てちゃうわけじゃない。あの、人類が石を好きすぎるナゾ…しかも夏至の日にはピッタリ太陽がのぼるとか、この人たち天文技術ももっていたのか~!みたいな衝撃よ(笑)
一同:あ~
新美先生:しかも、中にはそんな技術があったのに滅んでしまった文明もあるじゃない。こんな高度な文明を築いておきながら滅ぶなよ~!と思いません?
北宮先生:巨石の秘めたる歴史にロマンを感じるんですね(笑)。巨石といえば、Rさんがチラっと言っていたけど、エジプトのピラミッドは激アツなんですよ。ピラミッドの建造に関わったのは奴隷ではないっていう調査結果があってね。
Rさん:あ~!
北宮先生:ではどういう人たちだったかというと、農業ができない期間に収入が無くならないよう集められた農民たちだったらしいんですよ。
Tさん:公共事業!?
北宮先生:そう、まさに公共事業。だから、出勤簿が必要でしょ。それが今でも残ってるの。
Tさん:え、すごい!
北宮先生:しかもね、その出勤簿を解読すると「病欠」とか書いてあって、ちゃんと休暇が取れていたことがわかるんですよ。でも、他にもこんな理由で仕事を休んだ人がいたっていうのが面白くて、そのうちの一つがね…
Rさん:「二日酔い」
一同:え~~!!
北宮先生:ピラミッド建設していた人たちって5000年も前の人たちだけど、「農業できないな~」、「王様のお墓をつくったらお金貰えるらしいぜ」、「え、やるやる!力仕事は任せろ!」、「つかれた~、今日も飲むか~」って、きっと私達みたいにさ(笑)。そして、飲み過ぎて次の日ダメ~って。「ちょっと、俺今日休むって言っておいてくれ」「お前、仕事行くって言ってたじゃん!」みたいな(笑)
新美先生:5000年も前の人と今の私達と、何にも変わんないんですね~。
Rさん:そんな話を授業で聞きまして…。ここまで世界遺産について熱く語る人がいるんだったら、私も世界遺産について知ったら何か良いことあるかもな~って。
一同:(笑)
<後編に続きます>
後編では、いよいよ生徒5人と先生たちの“推し世界遺産”について熱く語ります!
聞き手 社会科 北宮先生(左)
社会科の先生で、専門は地理。推し世界遺産は、ノルウェーの『リューカン・ノトッデンの産業遺産』。世界遺産検定マイスターで、NPO法人世界遺産アカデミーの認定講師という一面ももつ。
聞き手 司書教諭 新美先生(右)
清泉女学院の誇る2層建て図書館の館長にして、教員免許をもつ司書教諭。今回は世界遺産の素朴な疑問を投げかけるために参戦。特定の推し世界遺産はないが、なぜか昔から巨石文化に魅かれる習性をもつ。