【講座後記】

2021年6月18日

「コロナ禍のなか、寺檀関係をいかに深めるか」

が終了しました

2021年6月18日に、大正大学地域構想研究所主催の「コロナ禍のなか、寺檀関係をいかに深めるか」の講師を主宰池邊が務めました。


30名定員の中40名近くのご寺院にオンラインでご参加いただきました。ご参加くださった皆様ありがとうございました。


当日は1時間ほどお時間をいただき、これまでの様々な経験も含め寺檀関係についての話をしてきました。

その際、時間の関係でお伝えしきれなかったことについて少々話をしようと思います。

寺族が檀信徒のことを記録する際によくあるトラブル

檀信徒カルテのお話を中心にさせていただきました。

アンケートでも「満足している」方々が9割近くとなり、ありがたい限りでした。

アンケートのコメントの中に「必要性は感じており、各家庭の相関図含め、次世代に引き継げるように準備しておく情報をまとめたいと考えておりました。その中で、どのような項目をまとめ、さらにどのように活かしていくかについて、とても参考になりました」など必要性は感じていてもどのように記録していけばいいのかわからず挫折した、今の記録方法ではまだまだだと感じた。など課題感や不安の声もあがっていました。

ご寺院のみなさまそれぞれ「この場合は記録すべきか?」「これくらいなら記録しなくていいだろう」「これはどう記録したら?」と迷いながら檀信徒についての記録をつけておられることが伺われました。

記録をつけていないご寺院もいる中で、記録されているお寺の努力に頭が下がる思いです。

ただ、心配なのは住職、寺庭婦人、副住職など寺院に関わる人間がそれぞれ思い思いに記録をつけると、よくおこりがちなトラブルがあります。

それは「記録場所が煩雑になること」です。

自分さえわかればいい→檀信徒のために寺院」として記録する体制が大事

とあるお寺でこんな事例がありました。

住職は自分の手帳に檀家さんのことを記録。

「山田さん」の「お父さんのこと」は2019年の手帳に書いてあって「お母さんの病気にこと」は2021年の手帳に書いてある。ちゃんと記録してるだろう?と住職は得意です。

寺庭婦人はご自身用のノートに檀家さんのことを記録。

お寺で過ごす時間が一番長いのは自分だからとお参りや会費をお持ちくださった檀信徒さんとのやりとりで「家族のこと」「相談されたこと」をノートに付けている。

日誌のように書いてあって、「鈴木さん」の「改葬のこと」はたしか、1月に相談をうけたから・・・「ほら1月16日に書いてある」と奥様も自分が記録していて、見つけ出せることに誇らし気でした。

一方、次の住職になる副住職は「山田さん」のことも「鈴木さん」のことも、どこになにが書いてあるのかさっぱりわからず、「山田さん」や「鈴木さん」がお越しになっても住職や奥様がいないと過去の記録がわからず内心冷や汗をかきながら応対していました

副住職は日頃別のお寺の応援に出ていたり、僧侶の活動にも参加をしているのでずっとお寺にいるわけではないので、生家である自坊に戻るたびに、カレンダーを確認して法要の予定を把握したり両親の話からなんとなくお寺のできごとを把握することで精一杯。

代替わりをした場合に、その手帳とノートをまとめたほうがいいのか?どこにどのように?という先々の不安もよぎりつつどうしようもできていない・・・。寺院の引き継ぎ問題に副住職は頭を痛めていました。

この事例は決して特殊な事例ではなく、似たようなお話を何件も私は見聞きしてきました。

中にはそもそも現代の住職による記録らしい記録もなく、何が不安なのかもわからないほど不安だという声も。

寺族も一処にいることが少なくなり、檀信徒の家族関係も複雑になる中、「自分さえわかればいい」という時代は終焉しつつあります。

自分以外の人間、つまり未来の住職やその寺庭婦人、場合によっては役僧やパートさんなど寺族以外もお寺を支える日が来るかもしれません。

昔は世話人や地域が補完してくださっていたコミィニケーションも寺院と檀信徒が直接取る機会が増える中、1人1人の檀信徒に寄り添った内容を「決まった場所」に記録し、「こういう時は記録する」という決め事をして、未来のお寺の人間となによりも檀信徒さんのために体制を整える必要性が出てきていると感じています。

先祖や家族の記録が「見つかる」お寺へ

  1. 寺族が共有できる場所に記録する(外出先でもスマホで記録できるデジタルが便利)

  2. 「山田さん」がお寺に連絡、来山された際にすぐに前回までのやり取りが「見つかる」仕組みが大事(ひらがなで「やまだ」と検索すればすぐに閲覧できるぐらいの体制が理想)

  3. 記録はとにかく手軽にできる仕組みが大事(項目を増やしすぎたり、パソコンの前に座って集中しないとできない記録方法は続かない)

檀信徒の記録をカルテ化していく必要性を感じつつも、上記のことができていおらず、課題を抱えている寺院は少なくありません。

1人1人の檀信徒に寄り添った内容を「決まった場所」に記録し、「こういう時は記録する」という決め事をして、誰でもすぐに檀信徒の情報を「見つけ出せる」仕組みづくりが非常に重要です。

記録していても、自分以外の人間が分からない・見つけられない。では、その記録はないのと同じだからです。

とはいえ、多忙な方が多い寺院ではなかなか手をつけられない。といった方も少なくないと思います。

そこで、檀信徒カルテ研究所では具体例を隔週で「メルマガで配信していたり、記録内容を高めていく「実践講座も開催しています。

また、日々の寺院の実務を支援する「クラウド管理 寺務台帳」も提供しています。寺務台帳はせいざんとお寺で開発したお寺の実務に特化したクラウドシステムで、バックアップや機能アップデートも月額用に含まれているので安心してご利用いただけます。

各お寺の状況に合わせて情報や仕組みをご活用いただき、これからの時代に必要とされる寺院が増えていく一助になれば幸いです。