Cryopreservation Conference 2024(クラカン2024)でご講演いただく皆様を紹介いたします。
岩手大学
講演タイトル:「植物の凍結耐性:地球規模での気候変動時代における重要性(Freezing stress tolerance in plants: Importance in the era of global climate change)」
温帯以北に生息する植物は、その生息場所から動くこともできず、冬季に遭遇するかもしれない氷点下の気温により体内が凍結する可能性に備えて暮らしています。しかし、いつでも凍結に耐えられる体を維持しているわけにはいかず、季節的な光や温度などの環境要因の変化を受容し体を作り替えて対応していることが知られています。また、植物に生活環の一時期には極端な乾燥にも耐えられる機構も存在していることもわかっています。凍結と乾燥によるストレスが植物に与える影響には共通点も多く、それらに対する研究成果は超低温保存法の開発にも大きな貢献をしてきました。今回は、急速に進行する地球規模での気候変動時代における植物の凍結耐性機構研究の果たせる役割についてお話してみたいと思っています。
東京大学 大学院理学系研究科 附属地殻化学実験施設
講演タイトル:「氷の結晶多形とアモルファス氷の構造多様性 - 特に氷の積層不整について」
常圧下、0℃以下で凍結する通常の氷は六方晶系の対称性を持っており、氷Ihと呼ばれています。常圧下で出現する氷には、他に立方晶系の氷Icが知られています。さらに温度や圧力に応じて様々な結晶構造が出現し、現在では氷IIから氷XIXまで実に様々な多形が存在することが明らかになってきました。さらに、アモルファス氷にも複数の相の存在が示唆されており、水の異常性の起源と関連して活発に研究されています。本講演では、氷結晶やアモルファス氷の構造多様性について、特に氷Ihと氷Icに見られる積層不整を中心にお話する予定です。
名古屋大学 大学院 生命農学研究科 附属鳥類バイオサイエンス研究センター
講演タイトル:「ニワトリ始原生殖細胞の解析とゲノム育種への展開」
鳥類では性染色体がメスでヘテロ(♂:ZZ、♀ZW)であり、巨大な卵黄を持つ卵子の扱いが困難なため品種の凍結保存はほぼ不可能であった。しかし、近年ニワトリの胚性生殖系列細胞である始原生殖細胞(Primordial Germ Cells, PGCs)がin vitroで培養できるようになり、種の完全な凍結保存が可能となりつつある。また、培養PGCを用いることでニワトリの遺伝子改変・ゲノム編集を自由に行える時代が到来しつつある。全てのニワトリ品種を培養PGCにより凍結保存できる技術を目指した始原生殖細胞の基礎的解析とデザイン型ゲノム育種を指向したゲノム編集ニワトリの作製について話題を提供したい。