Keynote: 西本優樹さん(南山大学)
参加登録:https://forms.gle/9r3Lup7YurA5gohr7
ワークショップ終了後に懇親会を予定しています。
懇親会への参加を希望される方は、2月28日(土)までに登録をお願いします。
プログラム(予定)
13:00–13:15 趣旨・グラウンドルール説明
13:15–14:15(Keynote)
西本優樹「集団の行為者性から集団の応答可能性へ : 社会存在論とビジネス倫理の交差点」
社会存在論とビジネス倫理に共通の伝統的問題として、企業組織を中心とする集団の道徳的行為者性の問題がある。近年この問題をめぐる議論では、社会存在論の集団行為者性論とビジネス倫理の企業責任論が相互に影響を与え合う仕方で、企業の道徳的行為者性を一定の条件下で肯定する議論が蓄積されてきた。それを踏まえて本報告は、以下の二つの作業を行う。
一つ目に、M.ブラットマンの議論に焦点を当てながら、企業の道徳的行為者性をめぐる争点を整理する。ブラットマンの意図の計画理論は当初、共有意図にもとづく共同行為の分析として発展し、ビジネス倫理でも参照されてきた。その一方でブラットマン自身は、ビジネス倫理の議論も参照する仕方で、制度と制度的行為者性を正面から論じ、特定の条件を充たす場合に制度がそれ自体で意図を持つことを機能主義的に擁護する方向で理論を発展させている。
本報告は、ブラットマンの理論的変遷と主張の要点を概観すると共に、企業の道徳的行為者性の批判者からの反論も踏まえて、現行の議論の争点を整理する。争点は、従来言われるような方法論的個人主義と集団主義の対立というより、批判者が採用する存在論的個人主義と、擁護者が発展させてきた方法論的集団主義とがすれ違う点にある。さらに、このすれ違いを調停するためには、規範的個人主義と規範的集団主義という規範的議論における対立軸も踏まえる必要がある。以上を踏まえ、複数の軸の間を調停する議論の必要性を述べたうえで、報告者の見解を提示する。
二つ目に、企業と我々の道徳的な応答実践の具体的な形を素描する。仮に企業の道徳的行為者性が妥当であり、企業それ自体への非難や刑事罰といった責任帰属が可能であっても、組織事故や公害をめぐる被害は一時の責任実践で終わるものではなく、継続的に被害者や社会から応答を求められるものである。本報告では、このような継続的な応答要求に対して、企業がどのように応答し得るのかを、企業と我々の応答責任(accountability)の点から検討する。具体的には、組織事故や公害をめぐって行われる加害企業と被害者の応答実践を取りあげながら、企業の道徳的行為者性を認める場合に考えられる、我々と企業相互の応答可能性の輪郭を素描する。
14:15–14:45 休憩
14:45–15:45
竹下昌志「トップダウン・アプローチによる反種差別LLMの開発と展開の擁護」
本発表では、反種差別LLMを開発し、それによって人々を反種差別に説得することで、反種差別的価値観を広めることを擁護する。まず、機械倫理で類型化された倫理的AIの開発方法として、トップダウンアプローチを擁護する。トップダウンアプローチは、特定の理論や原理に従って振る舞う倫理的AIを開発することを目指すものである。本発表では、反種差別的LLMの開発には、トップダウンアプローチが最も適していることを擁護する。次に、反種差別的LLMによる説得を擁護する。直観的に、LLMによって人々の価値観を変更することは道徳的に問題があるように見える。そこで本発表では、説得の倫理学を参照し、そこで提示されている懸念に答える形で、反種差別LLMによる説得を擁護する。
15:45–16:15 休憩
16:15–17:15
竹下昌志「認識的種差別:種差別の根底的メカニズムの探求に向かって」
本発表では、道徳的種差別(非ヒト動物に対する不当な道徳的配慮)と異なる仕方で、認識的種差別を提示する。認識的種差別とは、特定の種の構成員であることに基づいて主体の認識的行為者性を損ねることを指す。本発表では、Dotsonが提示した認識的排除の類型を参考に、認識的種差別の様々な形態を示し、認識的種差別が道徳的種差別をも駆動する根底的な要因の一つであることを示す。次に、こうした認識的種差別に抵抗する仕方を素描し、種差別なき社会を目指すべきであると論じる。