バイオマスは数十億年の進化の過程で完成した物質ですから優れた素材の宝庫です。生物機能材料分野では、生物が生み出すバイオマスの意義を化学構造や高次構造の点から理解して、有機化学、高分子科学、加工プロセスを駆使して上手に利用する研究を推進しています。例えば、木材由来のナノセルロースの優れた物性を活用した自動車用部材、カニ殻由来のナノキチンの生理機能を活用したヘルスケア製品、木材の組織構造を活用した成型加工材料の研究開発はその一例です。
環境省提供
木材から抽出されるナノセルロース。鋼鉄並みの強度を活かしてプラスチックを強化し、自動車用部品として搭載。軽量化による燃費の向上と大規模な木材の利用でCO2排出量を削減します。
(株)マリンナノファイバー
廃カニ殻から抽出されるナノキチン。肌に塗って良し、食べて良し、植物に与えて良しの多彩な機能を活かして、医薬品、化粧品、健康食品として製品化する研究を進めています。
木材は本来、水分を輸送し、樹体を支える重要な役割があります。そのため、木材は緻密な組織構造を持っています。その組織構造の秘密を解き明かし、巧みに制御して、新たな加工方法を開発しています。例えば、水撃含浸、押出加工、圧延加工などが挙げられます。
木材はセルロースをベースにリグニンやヘミセルロースが結合、充填した天然の複合材料です。また、それら天然高分子が自己組織的に集合し、階層構造を持つ高次構造体を形成しています。自然に学びながら、界面科学、超分子科学、そして有機化学を駆使して、森や海の恵を利用したものづくりを進めています。