寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』(研究社、1997年)は、英語史を学び、研究する上で欠かせない、日本が世界に誇るといっても過言ではない英語の語源辞典である。私もこれまで幾度もこの辞典を開き、語源を確認してきた。
この『英語語源辞典』を通読しようなどと思い至ってしまったきっかけは、私の師である慶應義塾大学 文学部 教授 堀田隆一先生との会話である。博士課程に進学するにあたり、今後の研究について話をしていたときに、「一通りの英単語の綴字史と音韻史がぱっと説明できるようになると良いよね。それこそ『英語語源辞典』を通読したら良いかもしれない。中々大変だけどね。」と、バスの中でふいに言われたのである。
『英語語源辞典』にはごく個人的な縁を以前から勝手に感じていた。一つは、編集主幹をされた寺澤芳雄氏と私が同じ苗字を持つことである。英語史の世界に足を踏み入れて間もなく、珍しい訳ではないが頻繁に遭遇する程でもない同じ苗字を目にしたとき、(畏れ多くも)驚き、嬉しかったことをよく覚えている。さらに、『英語語源辞典』机上版の出版年と私の生まれた年が同じなのである。他者からすれば全く以て些細な共通点であるが、いつかきちんと向き合ってみたいと思っていたところに、師匠からの後押しの一声。これは今こそ通読するしかないと思った次第である。
『英語語源辞典』通読については、既に堀田先生のVoicy 「英語の語源が身につくラジオ (heldio)」プレミアムリスナー限定配信チャンネル「英語史の輪」(helwa)リスナーのlacolacoさんがnote にて「英語語源辞典通読ノート」を公開されている。したがって、ここでは私の研究分野である綴字史(と音韻史、時に文字史)の観点から気になった語について書き留めておきたい。『英語語源辞典』を通して広がる英語語源の大海原に、小船で挑む者の気まぐれな航海日誌とでも思っていただければ幸いである。
2025.5.1 寺澤志帆