2025.11.28
aphelion は天文学用語で「遠日点」を意味し、17世紀後半に初出した。ネオ・ラテン語の aphēlium から変形したもので、「(…から)離れて」を意味するギリシャ語由来の接頭辞 apo- とギリシャ語で「太陽」を意味する hḗlios から成る。OED によるとラテン語に沿った aphelium の語形も初めは用いられていたが、その後現在の aphelion に変形しており、『英語語源辞典』には「ドイツの天文学者 J. Kepler (1571–1630) が L apogaeum (⇒ APOGEE) にならって、ギリシア語風に変えたもの」(「Aphelion, N.」)と説明されている。
apogee は1594年の初出で、同じく天文用語で「遠地点」を意味する他、「頂点、絶頂」(1600年初出)を意味する。フランス語の apogée またはその語源となるネオ・ラテン語の apogaeum から借用され、ギリシャ語の apo- と gaîa, gê「地球」から成る apógaion, -geion (diástēma)「地球から遠い(距離)」に遡る。『英語語源辞典』における aphelion「遠日点」の変形に関する説明は、関連する語である apogee「遠地点」の語源であるギリシャ語の apógaion, -geion にならって、 aphelium から aphelion に語形が変化したということだろう。16・17世紀の天文学の世界ではラテン語よりもギリシャ語の方が参照すべき言語だったのだろうかと、想像が膨らむ事例だ。また、aphelion の語形がそれ自体の語源であるギリシャ語の hḗlios を参照している訳ではないこと、aphelion が現在の語形になった参照元である apogee は現在はギリシャ語でもラテン語でもなくフランス語由来の語形で定着していることが興味深い。
参考文献
「Aphelion, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Apogee, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年
“Aphelion, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/aphelion_n?tab=etymology. Accessed 28 November 2025.