2025.11.25
anvil は古英語から用いられている語で「鉄床(かなとこ)」を意味し、1594年からは解剖用語で「砧骨(ちんこつ)」を意味する。古英語の語形は anfilt, onfilti で、ゲルマン祖語の *ana-faltjan から発達した。*ana-faltjan は ‘on’ を意味する *ana と *falt- から成り、後者は felt「フェルト」に語源が関係するとされ、felt は印欧祖語で「押す、たたく、打ち込む」を意味する *pel- に遡る(印欧祖語の /p/ とゲルマン祖語の /f/ の音韻対応はグリムの法則(Grimm's Law)による)。ゲルマン祖語の *ana-faltjan は一説によるとラテン語の incūs「鉄床」のなぞりとされ、ラテン語の in- と cūdere「打つ、切る」から成る incūdere「ハンマーで鍛造する」に遡る。
古英語の anfilt, onfilti における <f> は有声音に挟まれて /v/ として発音されていたと考えられ、中英語では anvelt, an(d)velde など <v> と書き表されている。また、現代の anvil の語形では古英語・中英語に見られた語末の -t, -d が消失しており、『英語語源辞典』では歯音の消失は17世紀とされているが、OED によると最初に歯音の消失が確認されたのは中英語期である。
参考文献
「Anvil, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Felt (1), N. & V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Anvil, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/anvil_n?tab=etymology. Accessed 25 November 2025.
キーワード:[Grimm's Law] [Germanic] [Indo-European] [Latin]