2025.10.16
「アメーバ」を表す英語の綴字には、amoeba と ameba の2つがある。1841年に造られたネオ・ラテン語の amoeba から1855年に借用されたもので、このラテン語はギリシャ語で「変化する」を意味する ameíbein から派生した amoibḗ「報い、返礼」に遡る。また、ギリシャ語の ameíbein は印欧祖語の *mei-「変化する、行く」に遡るが、*mei- は migrate「移動する、渡る」の語源にも含まれる。
したがって、amoeba の <oe> の綴字は借用元のラテン語に沿った綴字ということになる。OED によるとイギリス英語では amoeba または <oe> が合字になった amœba が用いられ、ameba は主にアメリカ英語で用いられている。Upward and Davidson によると、ラテン語由来の <oe> の綴字は20世紀になると多くの語で <e> と綴られるようになり、例として ecology や economy(ギリシャ語の oikos「家」に由来する)などが挙げられている(p. 221)。科学用語に属する amoeba はイギリス英語ではこの流れに反して <oe> の綴字が保持され、アメリカ英語では他の語と同様に <e> に置き換えられたと考えられる。
また、イギリス英語とアメリカ英語では発音も異なっており、<oe> と綴るイギリス英語では /iː/ と発音され、<e> と綴るアメリカ英語では /i/ と発音されていることを付け加えておく。
参考文献
「Amoeba, Ameba, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Amoeba, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/amoeba_n?tab=forms#5090152. Accessed 16 October 2025.
Upward, Christopher, and George Davidson. The History of English Spelling. Wiley-Blackwell, 2011.
キーワード:[British and American English differences] [Latin] [Greek] [Indo-European]