2025.10.15
ammoniac は形容詞としては1330年頃に初出し、sal ammoniac で「アンモニア(性)の」を意味する。名詞としては1425年頃に初出し、「アンモニアクム、アンモニアゴム」を意味する。表題の通り、中英語期には armoniak の語形が用いられており、現代英語の綴字にはない <r> が含まれている。なぜ <r> が入ったのだろうか。
中英語の armoniak は <r> を含む古フランス語の armoniac または中世ラテン語の armōniacum から借用された。中世ラテン語の armōniacum は古典ラテン語の ammōniacum が変形したもので、『英語語源辞典』によると、アンモニアクム、アンモニアゴムが一種の結合剤として用いられたことから、ギリシャ語の harmoníā「結合、接合」(harmony の語源)と連想されたことによるという。中英語期には中世ラテン語やフランス語から <r> を含む綴字で借用されたが、改めて15世紀に古典ラテン語の ammōniacum から直接借用され、元の語源に沿った ammoniac の綴字が用いられるようになった。
また、古典ラテン語の ammōniacum はギリシャ語の ammōniakón「アモン(Ammon)に属する」から借用されたものである。アモンとは古代エジプト人の Amen 神のギリシャ語名で、ammoniac がアモン神を祭ったリビアの神殿の近くの地域から産出したことに因んでいる。アモン神に関連して、ammonite「アンモナイト」はラテン語の (cornū) Ammōnis「アモン神の角」を語源に持つが、これはアモン神が雄羊の姿で角を生やしていることに由来する。
参考文献
「Ammoniac, Adj. & N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Ammonite, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
キーワード:[folk etymology] [analogy] [French] [Latin] [Greek]