2025.10.10
amethyst は「紫水晶」の語義で1300年以前に現れ、1572年から「紫色」の意味でも用いられている。中英語期の綴字は主に amatist(e) で、古フランス語の ametiste または中世ラテン語の amatistus から借用した。中世ラテン語の amatistus は古典ラテン語の amethystus(「青紫色の宝石」の意)に相当し、さらにギリシャ語の améthustos に遡る。améthustos は「酔いに対する治療法」を意味し、否定を表す接頭辞 a- と「…を酔わせる」を意味する methúskein(methúskein は「葡萄酒」を意味する méthu に遡る。méthu は英語の mead 「ミード(蜂蜜酒)」と同根語で、印欧祖語の *medhu-「蜂蜜、蜂蜜酒」に遡る)が組み合わさった語で、ギリシャでは紫水晶に酔いを防ぐ力があると信じられたことにちなんでいる。
したがって、中英語や借用元である古フランス語、中世ラテン語では第3音節の初めの子音が <t> で綴られていたが、英語では語源を遡った古典ラテン語やギリシャ語の綴字を参照し、<th> に置き換えられたことになる(また、現代フランス語でも améthyste と綴られている)。『英語語源辞典』によると <th> の語源的綴字は16世紀末から見られ、中英語から用いられた <t> の異形は17世紀初めまで見られる。
参考文献
「Amethyst, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Mead (1), N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
キーワード:[etymological spelling] [French] [Latin] [Greek] [Indo-European]