2025.10.8
ambry, aumbry は「戸棚、物置」の語義で1225年以前に現れ、1440年から「(聖餐式用具などを入れる)戸棚」の語義が見られる。『英語語源辞典』には ambry と aumbry の2つの語形が見出しに並べられているが、『英語語源辞典』によると中英語期の語形は主に almerie で、現代の2つの語形のどちらとも異なっている。
ambry, aumbry は古フランス語の almarie, aumarie から借用したもので、中英語の almerie は古フランス語の almarie の語形を受け継いだものだと考えられる。また、現代英語の aumbry と同じく [l] が母音化した aumarie の語形が古フランス語にも見られるが、OED の語形欄によると英語における aum- の語形は16世紀から見られるようだ。
古フランス語の almarie, aumarie は中世ラテン語の almārium から借用したものであるが、この almārium が対応する古典ラテン語は armārium 「戸棚、武器の保管所」で、「武器」を意味する arm の語源である arma に遡る。OED は al- で始まる語形は子音の異化(dissimilation)による可能性があると述べており、単語内に2つ /r/ の発音があるのを避けるために1つ目の r を l にした可能性が考えられる。
また、中英語の almerie から現代英語の ambry, aumbry への変化には b の挿入が見られるが、『英語語源辞典』によるとこれは /m/ の調音から /r/ の調音に移行する際の音便上の挿入で、16世紀から見られる。
参考文献
「Ambry, Aumbry, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Aumbry, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/aumbry_n?tab=etymology#5422975. Accessed 8 October 2025.
キーワード:[dissimilation] [glide] [French] [Latin]