2025.10.5
ambient は「まわりの」を意味する形容詞で、初出は1596年である。フランス語の ambiant またはラテン語の ambientem から借用され、ambientem は「ある物の周りをまわる」を意味する動詞 ambīre の現在分詞である。ambīre は「周(囲)に、両側に」などを意味する連結形 ambi- と「行く」を意味する īre から成る。
英語の ambient では語尾が -ent になっているが、借用元の一つであるフランス語では -ant である一方、ラテン語では -entem となっており、英語の語尾はフランス語ではなくラテン語寄りのものとなっている。ちなみに -ent の語源であるラテン語の -entem は -ē̆re を不定詞語尾とするラテン語第2、第3変化動詞、または今回の ambīre のように -īre で終わる第4変化動詞の現在分詞語尾である。一方、-ant は -āre を不定詞語尾とするラテン語第1変化動詞およびフランス語の現在分詞語尾に由来する。
しかし、ambient の派生語である ambience「環境;雰囲気」(1889年初出)では、ambience と ambiance の2つの語形が『英語語源辞典』には並置されている。OED によると、「環境;雰囲気」などの語義では ambiance は非標準的とされる一方で、語義2の “The contextual elements of a work of art, esp. as they support the main effect of a piece.” では ambiance が用いられるのが一般的とされている。芸術に関する語義ではフランス語に由来する語形 ambiance が好まれるようだ。
参考文献
「Ambient, Adj.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「-Ant, Suf.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「-Ent, Suf.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Ambience, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/ambience_n?tab=meaning_and_use#5528513. Accessed 5 October 2025.