2025.9.23
almandine は「ざくろ石」を意味し、初出は1658年とされている。ただし、『英語語源辞典』によると almandine は同義の alabandine(OED によると初出は1400年頃)から転訛したものであり、alabandine は中英語の alaba(u)ndine から発達したもので、後期ラテン語の (gemma) alabandīna「Alabanda の(宝石)」から借用された。Alabanda は Caria の都市で、この宝石の産地として知られていた。
なぜ alabandine から almandine に変化したのかが気になるところである。OED では almandine はラテン語の Alabandina から発達した古フランス語・中フランス語の alamandine、および中フランス語の almandine からの借用とされている。OED の説明に基づけば、まず中英語期にラテン語から alabandine が借用され、フランス語において発達した almandine が17世紀に借用されて、後者が前者を置き換えたということになる。さらに、OED では almond との連想が、alabandine の代わりとしての almandine の初期の使用を促した可能性が示唆されている。確かに almond と almandine は語形が似ているが、それぞれ「アーモンド」と「ざくろ石」を表すこれらの語の間でどれほど強く連想が働くのか疑問の余地がある。
また、almond の語形自体も英語に借用されるまでに変化を遂げている。『英語語源辞典』によると、almond の遡ることのできる最も古い語源はギリシャ語の amugdálē で、ギリシャ語からラテン語に借用されて amygdala となった。中世ラテン語になると amandus「愛すべき」の影響による転訛によって amandula に変化した。ここまでの語源では語頭が al- になっていないが、中世ラテン語から古フランス語に借用されると alemand(r)e となり、古フランス語から借用された中英語の語形も alma(u)nde, almo(u)nde であった。古フランス語や英語に見られる al- の語形は、『英語語源辞典』ではロマンス語の al- をもつ語との連想によって生まれたとされており、OED ではラテン語の amygdala の最後の音節との混交(contamination)の可能性があるとされている。比較的身近な単語 almond ひとつとっても、その語源における語形の変化は奥深い。
参考文献
「Almandine, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Almond, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Alabandine, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/alabandine_n?tab=etymology#7858921. Accessed 23 September 2025.
“Almandine, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/almandine_n?tab=etymology#6501713. Accessed 23 September 2025.
“Almond, N. & Adj.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/almond_n?tab=etymology#6283406. Accessed 23 September 2025.
キーワード:[analogy] [folk etymology] [contamination] [Latin] [French] [Greek]