2025.8.10
aim は動詞としては1303年頃に古フランス語の esmer と aesmer から借用された。 aim が表していた当初の意味は「数える、計算する、見積もる」、「推測する」で現在は廃義となっている。「ねらう、目指す」の語義は1338年以前に、「ねらいを定める」の語義は1380年頃に、「計画する、意図する」の語義はおそらく1400年以前に現れたとされている。
「数える、計算する、見積もる」、「推測する」の語義は語源に関係している。aim の借用元である古フランス語の esmer はラテン語で「見積もる、推定する」を意味する aestimāre から発達したもので、estimate は aestimāre の過去分詞 aestimātus から直接英語に借用した語である。また、aesmer は接頭辞 ad- とラテン語の aestimāre を組み合わせた俗ラテン語の *adaestimāre から発達したものである。
『英語語源辞典』では中英語期の綴字として ame(n) が挙げられており、古フランス語の esmer, aesmer から <s> が脱落しているが、これはフランス語での変化によるものである。Upward and Davidson によると古フランス語において s が他の子音の前で規則的に脱落した(p. 156)。この変化はフランス南部から始まり、1066年のノルマン征服の頃には英語に大きく影響を与えたフランス語北部方言では s は脱落していなかったが、12・13世紀には中央方言で広く s が脱落した。その後、15・16世紀のラテン語化によって書き言葉では <s> が復活したものの、18世紀には <s> が黙字の場合は再び脱落した。Upward and Davidson によると近代フランス語では <s> が脱落しているのに対し、近代英語では <s> が残っている語が多い(フランス語の arrêt と英語の arrest など)とのことだが、aim は英語でもフランス語の影響を受けて <s> が脱落している例として挙げられている(p. 156)。
参考文献
「Aim, V. & N. 」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
Upward, Christopher, and George Davidson. The History of English Spelling. Wiley-Blackwell, 2011.