2025.7.2
admonish は14世紀初出の動詞で、「勧告する」、「警告する」を意味する。『英語語源辞典』によると中英語期の語形は amoneste(n) で、現代の語形とは語の初めと終わりの部分が異なっている。
中英語の amoneste(n) は古フランス語の amonester(「知らせる」の意味)から借用された(現代フランス語では admonester )。フランス語の amonester は俗ラテン語の *admonestāre から発達し、ラテン語の admonēre に相当する。admonēre は接頭辞 ad- と monēre で構成され、 monēre は「...を思い起こさせる」を意味する。したがって、中英語の amoneste(n) から現代英語の admonish への <d>の挿入は、ラテン語の語源に沿った語源的綴字で説明でき、『英語語源辞典』では15世紀から <d> が挿入されたと述べられている。
-ish の接尾辞は本来「6. abash、そして -ish」で取り上げたように、原形に-ir の語尾を持つフランス語の動詞の現在分詞や現在複数語幹として現れる、動詞語尾 -iss- に遡るが、admonish についてはフランス語に -iss- は見られない。『英語語源辞典』では admonish の -ish について次のように解説されている:
ME の語尾 -este(n) は -t- が過去分詞語尾と誤解され、さらに語幹と考えられた amoness- がフランス語借入動詞にみられる語末の /s/ の口蓋化により -ish となった。(p. 17)
つまり、中英語の amoneste(n) が語幹 amoness- と過去分詞語尾の -t- であると異分析された結果、 amoness- の -ss- がフランス語動詞の語尾と解釈(誤解)され、口蓋化を経て -ish の語尾になったということになる。
参考文献
「Admonish, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
キーワード:[etymological spelling] [ad-] [Latin] [French] [palatalisation] [metanalysis] [-ish]