2025.6.26
前回の記事で admiral について、ラテン語の中で admirable のラテン語語源からの類推によって <d> が挿入されたことを取り上げたが、今回は admirable の基体である admire について見てみよう。
admire は『英語語源辞典』によれば1500年以前、OED によれば1429年頃が初出で、「賞賛する」、「驚く」を意味する動詞である。中英語での語形は amire(n) で、(古)フランス語の admirer、古フランス語の amirer、あるいはラテン語の admīrārī から借用した。admīrārī は「…を不思議に思う」を意味し、接頭辞 ad- と mīrārī から成る。mīrārī は「驚くべき」を意味する mīrus から派生したもので、同根語には miracle、mirage、mirror などがある。したがって、<d> を持つ綴字はラテン語を参照した語源的綴字であり、OED の語形の項目によると後期中英語から <d> を持つ綴字が見られるとある。ただし、OED や Middle English Dictionary (MED) では、<d> を持たない綴字は1500年以前とされる用例における “emyred” の1例のみで、OED における15世紀の用例も2例(うち1例は <d> を持つ)しか記載されていない。今後更なる調査が必要であるが、早くから <d> を持つ綴字が用いられていた可能性、本格的に英語で使用されたのは16世紀で、その頃には <d> を持つ綴字が用いられていた可能性が考えられる。
参考文献
「Admire, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Admire, V.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/admire_v?tab=meaning_and_use#11019477. Accessed 26 June 2025.
“Amīren, V.” Middle English Dictionary, quod.lib.umich.edu/m/middle-english-dictionary/dictionary/MED1445/track?counter=1&search_id=1847378. Accessed 26 June 2025.
キーワード:[etymological spelling] [ad-] [Latin] [French]