2025.6.21
adder は古英語期から存在する語で、第1義は「蛇」であるが、1513年で廃義となり、現在は第2義の後期古英語から用いられている「ヨーロッパクサリヘビ」の意味で使われている。ちなみに『英語語源辞典』によると、古英語で「蛇」を表す語は他に snaca (現代英語の snake )、wyrm (現代英語の worm ) があり、中英語期にはフランス語から借用した serpent が一般的な語であったが、今日では snake が serpent に代わって「蛇」を表す最も一般的な語になっている(「Snake, N.」)。
adder の語形は古英語では nǣd(d)re、中英語では naddere で、現代英語にはない <n> が語頭についている。古英語の nǣd(d)re はゲルマン祖語の *nēðrō から発達したもので、印欧祖語で「蛇」を意味する *nētr- に遡る。『英語語源辞典』によると nǣd(d)re、naddere から語頭の <n> が無くなったのは14世紀からで、不定冠詞 a + nadder が an + adder に異分析されたことによる。adder と同じように <n> + 母音字で始まっていた語で、語頭の <n> が冠詞 an の一部と異分析されたことで消失した語には apron「エプロン」や umpire「裁定者」がある。
参考文献
「Adder, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Snake, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
キーワード:[metanalysis]