2025.6.19
adamant は「堅硬石(堅く砕き得ないとされた想像上の石)」を意味する。名詞では他に「磁石」、「ダイヤモンド」の意味もあったがこれらは廃義となった一方で、形容詞として「磁石の」、「頑固な」の意味を持つ。「磁石」の意味は『英語語源辞典』によると、中世ラテン語において「強い結びつきを持つ」の意味の adamāre と連想されたために生まれたとされている。
adamant は古英語期に「硬い鋼鉄、ダイヤモンド」を意味するラテン語の adamantem、adamā(n)s から借用され、ギリシャ語で否定を表す接頭辞 a- と ‘tame’ 「…を制御する」の意味の damān を組み合わせた adámās に遡る。ちなみに diamond は後期ラテン語で adamas が変形した diamant-、diamas に由来しており、adamant と diamond は二重語である。OED によると後期ラテン語で adamas と diamas が生まれた背景には、adamas に「ダイヤモンド」と「磁石」の両方の意味があったことが関係している可能性がある。
古英語期の語形は aþamans (<þ> (thorn) は現代の <th> に相当する)であり、OED によると<d> の綴りもあったようだが、<þ> の使用については解釈が難しいとされている。
また、古英語の aþamans、ラテン語の adamā(n)s、ギリシャ語の adámās の語尾は <-s> になっているが、現代英語では <-t> である。『英語語源辞典』および OED によると、現在の語形は14世紀以降のもので、英語において再借用された、同じラテン語を語源に持つフランス語の adamaunt の影響によるものである。
adamant はフランス語の影響による語形である一方で、英語がフランス語に与えた影響もある。adamant の派生語 adamantine「堅硬石の」は、ラテン語から英語にはおそらく1200年頃に、フランス語には16世紀にそれぞれ借用された。『英語語源辞典』によるとフランス語では一時廃語になっていたが、1782年に英語の影響で復活したそうだ。一般的にフランス語が英語に与えた影響は大きいとされる一方で、英語がフランス語に与えた影響は小さいとされているが、adamantine は18世紀末に英語がフランス語に与えた影響の1つということになる。
参考文献
「Adamant, N. & Adj.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Adamantine, Adj.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Diamond, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Adamant, N. & Adj.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/adamant_n?tab=etymology#17411636. Accessed 19 June 2025.
“Diamond, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/diamond_n?tab=etymology#6929136. Accessed 19 June 2025.