2025.6.13
土地の面積の単位である acre は古英語から用いられているが、第1義は「耕地、(複数形で)地所」であり、第2義の「エーカー」は後期古英語に現れた。古英語での語形は æcer で、ゲルマン祖語の *akraz (英語と同じくゲルマン語に属するオランダ語では akker、ドイツ語では Acker、古ノルド語では akr、ゴート語では akrs )、印欧祖語の *agro- まで再建されている。
古英語の æcer、またオランダ語など他のゲルマン語族における語形を見ると、現代英語では aker など <er> の綴りになりそうなものだが、実際は acre と <re> の語形になっている。『英語語源辞典』によると今の語形は(古)フランス語の acre、中世ラテン語の acra(どちらも古英語からの借入語)の影響であるとのことで、古英語 æcer がラテン語やフランス語に借用され、acra、acre の語形となったものが、逆輸入のように英語での語形に反映されたということになる。OED の語形一覧を見ると、確かに古英語での語形は <er> や <yr> など母音字+<r>が中心で、主に中英語期に <re> の語形が見られるようになっている。古英語から用いられている英語本来語であるにもかかわらず、ラテン語やフランス語での語形に寄せてしまった点で、中英語期以降の書き言葉におけるラテン語やフランス語の優位性、権威の高さを感じてしまう。
参考文献
「Acre, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Acre, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/acre_n?tab=forms#23462110. Accessed 13 June 2025.