2025.5.6
「短くする」を意味する動詞abbreviateは、中英語期にabbreviate(n)として後期ラテン語のabbreviātusから入った語である。abbreviātusはabbreviāreの過去分詞(完了受動分詞)で、ラテン語から英語への借用語にはラテン語の過去分詞の形で入ったものがよく見られる。
abbreviāreは接頭辞ab-とbreviāreから成るが、ab-は接頭辞ad-の[d]が後続する子音[b]の音に同化(assimilation)してab-となったものである。接頭辞ab-は今回のようにad-のdの発音・綴字がbに同化したものと、「~から離れて」の意味を持つラテン語接頭辞ab-の2つがあるので注意が必要だ。breviāreは「短くする」を意味し、「短い」を表すbrevis(Ars longa, vita brevis. (ギリシャの医学者ヒポクラテスの警句「芸術(原義は技術)は長く、人生は短し」)が有名)から発達したものと記述されている。brevisはbrief、brevityの語源でもある。
また、abbreviateはabridgeと二重語であると『英語語源辞典』に注記されている。abridgeは「短縮する、要約する、(人から)奪う」を意味し、中英語期にabreg(g)e(n)として(古)フランス語のabréger、古フランス語のabregierから借用されたが、これらのフランス語はabbreviateと同じくラテン語のabbreviāreを語源に持つ。このように語源は同一であるものの、借用元の言語や方言の違いなど様々な要因で形態が異なる2つの語を二重語(doublet)と呼ぶ。
参考文献
「Abbreviate, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Abridge, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Ab- (2), Pref.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
キーワード:[ad-] [assimilation] [Latin] [French] [doublet]