2025.5.2
『英語語源辞典』には語源によって分類された8種類の接頭辞a-が掲載されている。
a- (1)は'on'の意味を表し、古英語の前置詞anが後期古英語でa-となった。alive、asleepなどに含まれている。
a- (2)は動詞に付けられる接頭辞で、古英語のā-(マクロン(¯)は長音を表す)、ar-を語源に持つ。元は「…から(離れて)」の意味を表したが、後に動詞の意味を強める働きに変化した。abide、ariseなどに含まれている。
a- (3)は'of'の意味を表し、ofが弱化して中英語期にa-となった。akin (= of kin)などに含まれている。
a- (4)は'to, at'の意味を表し、ラテン語接頭辞ad-が(古)フランス語を経由して中英語期にa-として借用された。achieveなどに含まれている。この接頭辞はadventureやadministerなど、後に語源である接頭辞ad-を反映して<d>が挿入される語源的綴字(etymological spelling)にも関わっている。
a- (5)は'away, from, away from, off'の意味を表すラテン語接頭辞ab-から派生したā-が(古)フランス語を経由して中英語期にa-として借用された。avertなどに含まれている。
a- (6)は'out, utterly'の意味を表し、ラテン語接頭辞ex-がフランス語(Anglo-French, Old French)でa-, e-, es-となり、中英語期にa-として借用された。abash、amendなどに含まれている。
a- (7)は'not, without'の意味を表し、ギリシャ語のa-から借用されたが、'not'を表す印欧祖語*neから派生した再建形*n̥-が示されている(「*」は再建形であることを表す)。尚、母音およびhの前ではan-となることが注記されている。asymmetryなどに含まれている。
a- (8)はa- (4)と同様、ラテン語接頭辞ad-を語源に持ち、ascend (< L ascendere)、aspect (< L aspectus)などラテン語からa-の形で用いられていた。
これらの一覧から、様々な語や接頭辞から音変化を経て、複数の接頭辞a-が生まれたことが分かる。また、古英語由来のa- (1)、(2)、(3)、ラテン語由来のa- (4)、(5)、(6)、(8)、ギリシャ語由来のa- (7)があり、英語がこれまで複数の言語から借用してきたことにより、接頭辞の種類も増えていったことが見て取れる。
キーワード:[prefix] [etymological spelling] [ad-] [Latin] [French] [Greek]