2025.5.26
「ダニ」は英語でacarusと言うことを『英語語源辞典』を読んでいて初めて知った。acarusは1658年に初出し、ラテン語やギリシャ語の形態素をラテン語やギリシャ語の形態規則に則って派生・合成させるNeo-Latinのacarusに由来し、ギリシャ語のákariを起源に持つ。さらにákariは否定を表す接頭辞a-と「切る」を意味するkeireinから成るakarḗsに遡ることができ、「短すぎて切られることができない」の意味を表す。また、acarusから「ダニ」の意味の連結形のacar(o)-、acari-が作られ、acarophobia「ダニ恐怖症」やacaricide「ダニ駆除剤」などで用いられている。
acarusの語源の一部であるギリシャ語のkeireinは、異説もあるようだが印欧祖語で「切る」を表す*(s)ker-に遡り、『英語語源辞典』では印欧祖語についての記述の後にshearを参照するように書かれている。shearは「(大ばさみなどので毛を)つむ」、「(…を)奪い取る」、「刈り取る」などの意味を持ち、印欧祖語の*(s)ker-からゲルマン祖語の*skeranになり、古英語のsċ(i)eranに発達した(この<c>の上に点が付された<sċ>は、古英語において[sk]の発音から口蓋化と歯擦化(assibilation)によって[ʃ]の発音になっていたことを表す)。acarusとshearだけを見ても関連性は見えてこないが、語源を遡ることで「切る」を表す印欧祖語*(s)ker-を通じた意外な共通点が見つかった。
参考文献
「Acarus, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Acar(o)-, acari-, Combining Form」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Shear, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
キーワード:[Latin] [Greek] [Indo-European] [palatalisation] [assibilation] [combining form]