慶應義塾大学大学院 文学研究科 英米文学専攻所属の寺澤志帆のホームページです。
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2026.1.26
ascertain は15世紀前半に「†知らせる;保証する」の意味で初出し、この語義は17世紀後半までで廃義となった。「(事実などを)突き止める、確認する」の語義は18世紀末から用いられている。
ascertain はアングロ・フレンチの acerteiner、それに対応する古フランス語の acertener「保証する、確かめる」から借用された。古フランス語の acertener はラテン語の ad- に由来する接頭辞 a- と certain から派生した certener から成る。フランス語の語源をそのまま受け継げば英語でも <ac-> の語形になるはずだが、現代英語の語形は <asc-> となっている。OED によると中英語期から17世紀にかけて <ac->, <acc->, <as->, <ass->, <asc-> で始まる異形が見られ、更にはラテン語に基づいた <adc-> で始まる語形も用いられた。<s> を含む綴字について、OED は接頭辞 as- を ac- の代わりに用いるのは as-sertayne の綴字(中英語期から見られる)から始まったと述べている。また、Upward and Davidson は ascertain に含まれる <s> について、初期近代英語期の assertain から残存した可能性を示唆している (p. 99)。しかし、ascertain の語源にはない <s> の綴字が、英語史上用いられた <ass-> の語形の一部が残ったものだとして、そもそもなぜ <ass-> の語形が用いられたのか、また、なぜ <ass-> が標準になる訳でも、語源に沿って <ac-> の綴字になる訳でもなく、<asc-> の綴字が標準となったのかについては、これらの資料には言及がない。OED の語源説明に記載されている、後期のアングロ・ノルマン語の asser-, ascer- の語形から影響を受けた可能性や、前回取り上げた ascend のような <asc-> を持つ語からの影響を受けた可能性などが思い浮かぶが、真相を知るにはより詳細な調査が必要だ。
参考文献
「Ascertain, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Ascertain, V.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/ascertain_v?tab=etymology. Accessed 26 January 2026.
Upward, Christopher, and George Davidson. The History of English Spelling. Wiley-Blackwell, 2011.
キーワード:[ad-] [French] [etymological spelling]
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