慶應義塾大学大学院 文学研究科 英米文学専攻所属の寺澤志帆のホームページです。
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2025.12.1
apo(ph)thegm は名詞で「警句」を意味し、16世紀後半に初出した。現在は /ǽpəθèm/ と発音され、<ph> と<g> が黙字であることに加え、<ph> を含む apophthegm の綴字と <ph> を含まない apothegm の綴字の両方が用いられており、綴字的に奇妙な語である。
『英語語源辞典』によると、apophthegm はフランス語の apophthegme または元となるネオ・ラテン語の apophthegma から英語に借用された。これらはギリシャ語の apóphthegma「声に発せられたもの」に遡り、これは「(…から)離れて」を意味する接頭辞 apo- と「大声で話す」を意味する phthéggesthai から成る apophthéggesthai「自分の意見をはっきりと話す」から派生したものである。OED の用例を見ると16世紀に借用された当初から <ph> を含む綴字と含まない綴字の両方が見られ、語源の項目ではギリシャ語から中世ラテン語の *apothegma を経由して借用された可能性についても言及している。また、<ph> に関する綴字の揺れについて次のように述べている:
The spelling apothegm was the more usual till preference was expressed in Johnson’s Dictionary for apophthegm, which is now more frequent in England. Webster adopts apothegm, which Worcester also thinks ‘perhaps best supported by common usage.’ (“Apophthegm | Apothegm, N.”)
OED の説明によれば <ph> を含む apophthegm の綴字がイングランドで広まったのは Samuel Johnson が辞書において apophthegm の綴字を支持したことに端を発するという。一方でアメリカの辞書編纂者である Noah Webster や Joseph Emerson Worcester は <ph> を含まない apothegm を支持したようで、<ph> の有無に関してイギリス英語・アメリカ英語で違いが見られるのかどうかが気になるところである。
参考文献
「Apo(ph)thegm, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Apophthegm | Apothegm, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/apophthegm_n?tab=etymology. Accessed 1 December 2025.
キーワード:[spelling-pronunciation gap] [silent letter] [Johnson] [Webster] [Greek] [Latin] [French]
2025.12.1 『英語語源辞典』でたどる英語綴字史の更新履歴を「Update History」に移行しました。
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2025.5.1 新企画「『英語語源辞典』でたどる英語綴字史」を始めました。
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